記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【新たな運命へと】映画『モアナと伝説の海2』感想レビュー【期待の続編】

 12/6に劇場公開された話題のディズニー新作映画『モアナと伝説の海2』を観てきましたのでレビューしてみようと思います。普段は公開直後なんてなかなか観に行かないため、珍しく旬な作品を取り上げることになりました。

 今作はタイトルに2とある通り、2017年に日本で公開された映画『モアナと伝説の海』の続編となっている今作。離島に住む一族の娘・モアナが島の異変を食い止めるべく海へ旅立つ…といったストーリーで、内容に加え歌や映像表現でも高い評価を得た第一作。そんな作品の続編ということで、公開前から高い期待をかけられていましたように思います。

 ただ不安材料が全く無いかと言われればそんなことはなく、人気を受けて作られる続編というものにまず良いイメージが持てないこと、わりと急ピッチで製作されたという話が出ていること、そして前作の『ウィッシュ』がまあ酷かったことの3点。これが実に私の不安感を煽りました。一体どのような作品になったのか、私の感想を以下文章にしてみようと思います。

公開間もない作品ではありますが、ネタバレ注意です。未視聴の方はお気をつけください。

『モアナと伝説の海』日本語版ポスター


ストーリー展開について

 先程軽く触れた通り、前作は離島に住むモアナが海へ冒険に出るストーリー。それまで島の外に出ることが禁じられていたモアナは海に選ばれた使命感を背に、島の危機を救うべく単身海へ繰り出します。初めての出来事だらけで幾つもの壁が立ち塞がりますが、持ち前の度胸や前向きさ、そして半人半神の荒くれ者マウイの力を借りながら奮闘する、といったものでした。井の中の蛙だったモアナが大海を知って、与えられた使命に食らいつく勇気を見せたり、伝説的な存在ながら傍若無人に動き回るマウイと心を通わせたりと、観てる人をワクワクさせるストレートな冒険譚を描いていました。ラストでのテ・カァ戦で見られるマウイとの共闘など迫力のあるシーンが多く、物語の着地も綺麗でかなり観やすい映画かなと思います。

 では2作目ではどうだったのか。今度も危機から皆を守るため海へと繰り出し大冒険を行う根本的な部分は変わらずですが、今度対峙するのは嵐の神ナロ。前作のテ・カァは心をマウイに盗まれたという理由があったのに対し、今回は海を支配したいという欲望まみれの暴力的な神が相手ということで理不尽さを感じる際立ったヴィランに仕上がっていると思います。

 また、以前はモアナ+マウイの二人旅でしたが、今作はさらに3人の仲間が加わります。気分屋でノリの良い船大工・ロト、染め物が得意でマウイ推しのモニ、そして農夫の爺ちゃん・ケレです。それぞれ個性のある3人をパーティーに加えたことで、今回はモアナのリーダーシップを発揮せざるを得ない場面が多く見られ、そんなところも前作にはない新要素かと思います。明確なヴィランの存在や新しい仲間を複数加えたことで、前作よりも冒険が本格化したように感じましたし、本作が”続編”というより”本編”というような位置づけに近いのかなといった印象を受けました。そして第一作目であった前作はあくまで序章で、モアナが主人公足りうる存在へとなる話だった、そんな路線に舵をきったのかなと感じます。

続編と前作

 続編映画で失敗するパターンの1つに、「前作の内容がどこかへ失われてしまっている」ものがあるかと思います。私は直近ですと『インサイド・ヘッド』で少しそれを感じたのですが、1作目でネガティブな感情であるカナシミを排そうとしたヨロコビは終盤で必要の無い感情なんてないと気付きますが、続編の2では思春期で新たに加わるシンパイらをいきなり遠ざけようとしてしまいます。急な展開で混乱があっただろうとはいえ、前作は何だったんだ…?と思ってしまいました。

 では『モアナと伝説の海2』はどうだったのかというと全然そんなことはなくて、モアナは前作で学んだものごとを失っておらず、航海技術なんかでそういったところが見られましたが、特にマウイとの関係性でそれが顕著でした。前作で育んだ絆は健在で、軽口を叩きつつ大切に思う気持ちは変わらず互いに信頼しあっていますし、なにより仲間を率いるという責任を感じ落ち込んでいたモアナをマウイの方から励ましにかかるという展開は王道ながら真っすぐで熱いシーンだったのではないかと思います。前作の対比となる印象的なシーンの1つであり、1作目から作品の中で続いている、まさに続編なんだなと思わされるものでした。

新キャラクターの役割

 本作では新キャラクターが多く登場しました。まずは先ほども触れた新たな旅の仲間3人です。この3人、冒頭で突然現れかなり強引に仲間に加わります。そんな雑に選んで大丈夫なのか、といった不安材料は無視することができず後に苦労しますが。本当に突然現れるので前作を見ていてもやや混乱がありました。我が強く個性的な3人のうち、ロトは船の修理、モニは解読と命の危機を煽るというところでそれぞれそこそこの役割がありましたが、ケレに関しては特に活躍の場面が無かったというところが少し残念でした。一応泳げなかったケニが海に沈みそうなマウイを意を決して助けに行く、といった場面があるのですが、農夫として加わったのだから何かしらその分野で活きてほしかったなと思います。高齢者という設定もあまり描写されず、なぜいるんだろうかと疑問を感じました。

 また怒れる嵐の神ナロやコウモリのような姿をしながらナロに仕えているマタンギというキャラクターが新しく登場しますが、マタンギはモアナやマウイと少しだけ接触し歌唱、ナロに至っては本体が出るのがエンディングのみと出番がかなり限られています。よって未だ腹の中が探れずキャラクターとして確立されていないような印象を受けます。マタンギは当初敵対側のような言動を取りつつも「ナロに無理やりこき使われている」といった趣旨の発言をしていたり、当のナロもただの荒くれ者なのか、何か理由があっての暴挙なのかは確定しなかったため、前回のような万事解決のハッピーエンドではなかったです

 ただむしろさらなる続編を匂わせる終わり方にはなっているため新たな仲間含めこれからキャラクターとしての掘り下げが見られる可能性もあり、そちらを楽しみにしたいと思います。ですがあくまで本作内では全体的に新キャラクターの掘り下げが薄いかなと思います。

 掘り下げが薄い原因として、続編で明らかにしていくというプランができているからとも考えられますが、もう1つあげるなら、やや忙しないストーリー進行かなと思いました。特に序盤なのですが、いきなり別の島を訪れているモアナから始まり、他の部族を探していたり新キャラクターが一気に出てきたと思ったらタウタイ、ナロなどの新語が飛び交い、いきなり命懸けの冒険に行く使命を受け強引に仲間を作って船に乗って…と畳み掛けるような展開へとなります。

 ディズニー作品によく見られる傾向として、あくまでファンタジーという前置きからか事象を流れで押し切ってしまうことが多いです。そして今作も例に漏れず「使命だから」「海でつながっているから」といったふわっとした理由で物事が解決しがちで、そこをそういったものだと割り切って観る必要があるかと思います。なにせ作品のモチーフはオリンポス神話らしく、何か超常的な力が巻き起こるのも珍しくないものかと思いますので、今作はあまり真剣に物事の理由を考えず、本筋であるモアナとマウイの熱い冒険譚を楽しめばいいのではないかと思います。

タウタイという存在

 今回からタウタイという言葉が登場します。意味としては”導く者”らしく、これは本作のキーワードにしてテーマにもなっている言葉でしょう。前作で島や一族の危機を救いヒーローとなったモアナですが、先述した通りさらに背負うものが増えました。島はもちろんついてきてくれた仲間や新しくできた妹、そして海に住む人々すらその対象に含まれます。これはモアナが本当のリーダーになるための物語であり、命の責任をより身近に感じてしまう葛藤や苦悩を抱えたときに今度はモアナが導かれていく。そんなシーンがいくつも登場していく今作は前作からまた1つリーダーとしてのステップを登らせようという理念を軸にはっきり据えた作品になっていると思います。

まとめ

 これまで長々と書いてきましたが、総合的な感想としては危惧していたものではなく正当な続編となっており面白かったなと思いました。ところどころテンポの速いところがありつつも前作と差別化を図ろうという狙いがはっきりと表れていたところに好感を持てました。昨今こういったシンプルな冒険成長活劇が珍しくなってきたためか素直な気持ちになってワクワクできた、そんな作品になっていると思います。

 本文中ではあまり触れていませんが映像表現や音楽シーンのクオリティは依然として突出しており、映画館の大スクリーンでとても映えるものなので、ぜひとも映画館で観ていただきたい作品かなと思います。

 長々と読んでいただきありがとうございました。皆様の感想もぜひお待ちしております。


 


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集