顎関節症という歯科医療被害 3-6 復位性顎関節円板転位など存在しない理由
(46〜47P)
円板軟骨の前方転位に復位性も非復位性もないということを裏付けるため、46〜47Pに示された専門医によるMR像の誤診について私がMR像の構図を一枚ずつ示す形で解説していくことにする。
顎関節症専門医が復位性顎関節円板転位であると主張する1症例のMR像が[図7]と[図8]に示されている。
[図7]aでこの著者は(iz)を円板軟骨の中央狭窄部、(pb)を円板軟骨の後方肥厚部であるとしている。いずれも矢印の先は黒い部分を指し示しており、円板軟骨は黒く映るものだと考えているようだ。だが、それこそが大きな間違いであり、顎関節症専門医がMRの原理を全く理解していないことを証明している。
MRは水素原子を基準にして得た信号から画像を作るものなので、基本的に水分量が多い組織ほど高信号で白っぽく明るい像として映る。ただし、MRは強い磁場を作って水素原子が磁力に従って整列するまでの時間差を元に身体の各部位から信号を得て像として反映する仕組みなので、水分量が多くても血管内の血液や関節包内の関節液、頭蓋内を満たす脳脊髄液のように流動するものだと強い磁場を作っても水素原子がいつまでも整列せず、液で満たされた空間や何もない空洞はMR装置へ信号が返らないので暗く黒っぽい像として映る。
そのため、柔らかい軟骨は硬い骨よりも水分量が多いのでMR像では骨の部分よりも白っぽく明るい像として映ることになる。逆に言えばMR像で骨よりも暗く黒っぽく軟骨が映るということはあり得ないのである。
それを踏まえて[図7]aの顎関節を私が拡大したものを見れば分かるがこの著者は下顎頭の上に見える(pb)を円板軟骨の後方肥厚部であるとしているが円板軟骨がMR像で真っ黒に映ることなどあり得ず、(pb)で示す矢印の先は軟骨ではなく下顎窩という硬い骨である。また、関節隆起と外側翼突筋上縁の間に映る暗い像(iz)を円板軟骨の中央狭窄部であると指し示しているが、矢印の先に映る像は顎関節包内を満たす関節液が低信号で暗く映っているだけのことである。つまり、顎関節症専門医であるこの著者が[図7]aのMR像で円板軟骨の一部であるとして矢印の先で示す(pb)も(iz)も円板軟骨などではなく、決定的な画像診断の誤診なのである。
次に[図7]bのMR像の誤診について解説する。bは先のaよりも観察断面を下顎頭の外側へ少しずらした修正矢状断のMR像である。
[図7]bの顎関節を私が拡大したものをみれば分かるように、この著者が円板軟骨の後方肥厚部であると示す(pb)も円板軟骨の中央狭窄部であると示す(iz)も、矢印の先は真っ黒な像を指し示して円板軟骨の一部であるとしている。
先にも説明したように水分量の多く柔軟な円板軟骨がMR像で真っ黒に映るということはあり得ない。このMR像では側頭骨関節面のS字形状が綺麗に表れていて、この著者が示す黒い像こそが側頭骨の顎関節面である下顎窩から関節隆起までの軟骨下骨である。
仮に矢印で指し示す真っ暗な像を円板軟骨だとして側頭骨関節面の境目はどこなのか、顎関節症専門医であるこの著者に聞きたいものである。水分量を基準として像の明暗を作るMRにおいて、関節の土台となる硬い軟骨下骨と柔らかい円板軟骨が同じレベルで境目もなく真っ黒に映るなどありえないことであり、このMR像[図7]bにも[図7]aと同じように円板軟骨などどこにも映っていないのである。
次に[図8]a中央部開口位の誤診について解説する。[図7]は噛んで顎を閉じた状態だったが、[図8]は大きく口を開いた状態である。
このMR像では下顎頭と関節隆起の骨髄がとても白く明るい像として映っているが、その周囲には骨の外形を作る緻密質が黒く映っており、下顎頭と関節隆起の輪郭(構図内赤線)がはっきりと確認できる。
この著者は白い下顎頭と関節隆起の間に映る暗い像を矢印で指し示し、それが円板軟骨の一部であるとして中央狭窄部(iz)と後方肥厚部(pb)で示しているが、水分量の多い柔軟な円板軟骨が骨である下顎頭と下顎窩の骨髄よりも暗く黒っぽく映るということはあり得ないことである。
先にも説明したが水分量が多くても関節液のように流動するものは水素原子が自由に動き回るのでMR装置で強い磁場を作っても水素原子がいつまでも整列せず低信号で像が暗くなる。解剖学構造でも解説したように顎関節は顎関節包靱帯で囲まれた部屋になっていて
その中を関節液が満たしている。当然だが関節液は黒っぽく暗い像としてMR像に反映されることになる。[図8]aのMR像で下顎頭と関節隆起の間に隙間なく映る暗い像はくびれた形状の円板軟骨などではなく、顎関節包内を満たすただの関節液である。
開口動作の途中で円板軟骨が下顎頭の上に被さり下顎頭と円板軟骨の位置関係が戻る(復位する)というのが専門家たちの主張する復位性顎関節円板転位である。そして、この歯学書で復位性顎関節円板転位の1症例として[図7]と[図8]を紹介している訳だが、実のところ復位性顎関節円板転位の存在する論拠として開口状態で復位した円板軟骨だと信じて止まない暗い像の正体はただの関節液なのである。
原理を理解せず知ったかぶりがデタラメな画像診断を行って専門医を気取り、MR像の誤診に基づいて復位性顎関節円板転位というありもしない病を作り上げたのだ。霊能力者や超常現象専門家が金稼ぎで心霊写真や怪奇現象を作り上げるように、日本顎関節学会所属の顎関節症専門医達が病をでっち上げているのである。
もうひとつダメ押しで次は[図8]bの誤診について解説する。先に同じく[図8]aよりも観察断面を下顎頭の外側へずらし、大開口動作の状態で撮影されたMR像である。
前方転位が生じて片側一方の顎関節で円板軟骨が抜けると、下顎頭は関節動作の摩擦増大で擦り減ることに加えて円板軟骨の反発が働かないことで押し潰れ、円板軟骨の抜けた側の下顎頭は下顎全体が傾いたまま外側が片減りした状態で平坦に変形する。
下顎頭が下顎窩内に収まった丁番動作では下顎全体が傾いた状態でも、滑走運動で下顎全体が真正面に動くと下顎全体の傾きは大開口動作の瞬間だけ元に戻るが、円板軟骨の抜けた側の下顎頭は外側が片減りして変形しているので、最大開口動作で下顎頭が関節隆起の頂点に達した状態では下顎頭と関節隆起の関節面外側で上下に大きく隙間が生じることになる。 [図8]aで示された暗い像が[図8]bで上下に厚みを増しているのは円板軟骨の転位によって下顎頭が片減りして外側が擦り減ったことで関節隆起との隙間が広くなったからである。つまり、下顎頭中央部分に近いaの断面像よりも外側の断面像bで厚みを増して下顎頭と関節隆起の間に暗く映る像は下顎頭と関節隆起の隙間を満たす関節液なのである。 顎関節症専門医であるこの著者は暗く映るものを円板軟骨だと信じ込み、[図8]bのMR像でもただの関節液を円板軟骨であると見間違えて誤診しているのだ。
ここまで復位性顎関節円板転位の症例として46Pに提示されたMR画像診断の誤診について解説してきたが、[図7]abと[図8]abのMR像4枚の構図を詳しく解析すると、いずれのMR像にも復位したものはおろか円板軟骨など何処にも映っていないことが分かる。
この著者に限らず日本顎関節学会所属の顎関節症専門医はMRの原理を理解せず常識を無視して円板軟骨を暗く映るものと決めつけ、下顎頭と関節隆起の隙間を満たしているただの関節液を復位した円板軟骨だと都合よく信じ込み、復位性顎関節円板転位という怪奇現象を顎関節症専門家として妄想しているだけなのだ。
復位性顎関節円板転位は日本顎関節学会所属の顎関節症専門医によるMR画像診断の誤診に基づく架空の病であり現実には存在せず、円板軟骨の前方転位には「復位性」もなければそれと区別する「非復位性」もないのである。
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