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顎関節症という歯科医療被害 2-9 下顎頭整形術について

(31P)

下顎頭整形術の説明が次のようにある。

「術前の画像診断で下顎頭に
       骨棘などの異常所見があり、
            その整形が必要とされる場合
               (変形性顎関節症例や
                         習慣性顎関節脱臼症例など)
                                     が適応となる(図11)。」

 そもそも彼らの称する顎関節症の定義自体があやふやであるが、それに加えて変形性という言葉が付いている。顎関節の痛みや動作に伴う違和感や異音を症状とするものを総称して顎関節症という病名を作ったのだとすればそもそも症状が発生する原理は全く考慮されていないのだ。はたして病理が異なる顎関節の不調に対し顎関節症という言葉で無理やり一括にする必要が何処にあるのだろうか。  
 彼らは患者の異常原因が全く分からないからこそ顎関節症を診断の逃げ口上に利用しているに過ぎないのではないか。原因の特定も病態の理解もできない患者の病状に対して、ヤブ医者達は共通する患者達の主観的な症状をひとまとめにして顎関節症というレッテルを貼っているだけなのであろう。とりあえず病名さえ先に与えてしまえさえすれば、あとは他に救いもなく専門外来を訪れてすがる思いの患者達に高額な検査や処置を施す医療行為の大儀が出来るわけであり、そこからヤブ医者のヤブ医者によるヤブ医者のための外科ごっこ遊びと金稼ぎが始まるのだ。

[図11]下顎頭形成の手順

 下顎頭整形術の手順[図11]では習慣性顎関節脱臼症と診断された患者の手術写真[a、c]と術前検査のMRI画像[b]が矢状断で掲載されている。MRIは開口・閉口の2つの状態が示されており、患者の下顎頭にお決まりの矢印を振り、「下顎頭の骨棘」と表記されている。だが、その続きを見ても、
「(前略)下顎頭の整形を行う(C)。
    整形には、小さなダイヤモンド
       ラウンドバーが使いやすい。」
としか説明文には書かれてはおらず、どのような形状へ下顎頭を整形したのか肝心な外科処置の最終目標が全く示されていない。(C)の手術写真も切創部をワイヤーで牽引する様子を示しているだけのものであり、下顎頭を削る処置の様子は何処にも見えない。MRI画像も術前のものしかなく、外科処置によって患者の顎関節が実際にはどのような状態になったのか、術後の状況も患者の症状も分からないままである。下顎頭の骨棘が何故生じたのか説明も無ければ、読み手にはそれが習慣性顎関節脱臼の症状に対してどのように関係しているのかも分からない。

[私図]脱臼状態で下顎頭に加わる外力
脱臼状態では正常な状態よりも
側頭筋の付着する筋突起の位置が離れるので
引っ張られた側頭筋の収縮力が強くなり、
顎関節脱臼時に噛む力を働かせてしまうと
強度の低い下顎頭の後部分が潰れやすい。

 顎関節脱臼の発生原理を考えながらMRI画像[図11b]を観察すれば、患者の下顎頭が変形した理由が見えてくる。下顎頭の関節面頂点から後面にかけて丸い窪みが出来ている。これは習慣性顎関節脱臼とあるように日常的に脱臼を繰り返したことにより、本来では顎運動で接する事の無い下顎頭後面が丸い関節隆起に押し付けられて、関節隆起が押し付けられた圧痕として丸く窪むように潰れて変形したものであると十分に推察出来る。

[私図]脱臼状態で噛む力を
働かせることによる下顎頭の変形
関節隆起は正常な状態でも
力が加わる関節面なので骨格強度が強く、
脱臼時に下顎頭が押し付けられると
普段力が加わらない下顎頭の後部分が潰れてしまい
下顎頭の後半分が丸く陥没して変形する。
骨棘は脱臼時の外力で変形した結果に過ぎない。

 関節隆起はその斜面から頂点までの間では大きな開口動作により少なからず押し付けられる力が加わる箇所であり、ある程度の骨格的強度はあるだろう。しかし、関節隆起に対して下顎頭後面(関節突起後面)は通常であれば顎運動で接触する部分ではなく、軟骨の様に滑沢でもなければ、潰れる力に対して特別に強度があるような造りの骨でもない。その為、患者が顎関節を脱臼する度に下顎頭の後方がえぐられるようにして損傷が蓄積し、その先が骨棘のように見えるのだ。
 また、脱臼状態では側頭筋の下顎骨側付着箇所である筋突起が大きく前進した状態となるので、側頭筋はストレッチされた状態となる。ストレッチされた状態では筋収縮の負荷が増すので筋突起から下顎骨が引き寄せられる力はとても強くなり、下顎頭後部が関節隆起に押し付けられる力も強くなる。そのため脱臼が習慣化しておらず一度の脱臼するだけでも、顎が元に戻らずパニックに陥った患者が噛む力を働かせてしまうと強度の弱い下顎頭後部が陥没して変形してしまうことも十分に有り得ることなのだ。
 いずれにせよ意味も無く原因不明に骨棘が形成されるわけではないのだが、咬合高径(上下の歯列が噛み合う高さ)が保たれていて正常に円板軟骨が下顎頭と下顎窩の間に介在していれば脱臼防止の機構が働くので、この患者のように下顎頭後部が関節隆起の形状に合わせ丸く陥没して変形することなど無いのである。患者は円板軟骨が正常に機能していれば脱臼は生じないし、脱臼が生じなければ下顎頭後部が陥没することもなかったのだ。

[図11]に私が解説を入れた場合(下段)
私が[図11]のMR像から
下顎骨を切り抜いて状態を示したもの

 ここで考えて頂きたい。「○○性✕✕症」という名前の病があるとして、その病名が意味するところは何であるか。「○○性」とは、エリート達の単なる形容詞なのだろうか。
・○○によって✕✕の状態になるのか。
・✕✕状態だから○○が起こるのか。

変形性顎関節症と習慣性顎関節脱臼症とされるこの症例において、
・患者の下顎頭が変形したのは脱臼時に
 下顎頭後部へ加わった外力が原因である。
・初めにも増して軽い動作で顎関節が
 脱臼するようになっているのであれば、
 それは下顎頭関節面の後方部が
     度重なる脱臼によって陥没ひ、
       変形してしまった為である。 ・骨が変形したことで初めて
 顎関節に異常が出るのではなく、
 それ以前に顎関節脱臼の防止機構に
 欠陥が生じた結果として脱臼を繰り返し、  
     骨が大きく変形したものである。

 病理も分からないまま「変形性○○症」やら「習慣性○○症」と名前を増やす前に、変形した骨の形状から患者がどのような状態にあるのかを把握できなければ、顎関節の専門医たる口腔外科医師として失格である。巧妙な顎関節の仕組みを全く理解していないヤブ医者達がデタラメに患者の骨を削ったところで、まぐれにも症状が改善することなどあり得ないことなのだ。
 この歯学書では病の発生原理について何一つ解説されることもなく、終始にわたって凄惨な外科ごっこ写真が示されるばかりであり、医師になれなかった歯科医師免許持ちの口腔外科医達が見栄を張るための自己満足アルバムでしかない。プライドだけ一人前の知ったかぶりエリートがいじればいじるほど患者の身体は不可逆的に破壊されてしまう。日本顎関節学会が牛耳る大学病院専門外来を訪れた患者には残酷な結末しか待っていない。














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