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顎関節症という歯科医療被害 理学的診断法について 3-2

(38~39P)

 この項では「理学的診断法」として、顎関節症専門医が手指で患者の顎関節に触れたまま患者に顎運動をさせて手指に伝わる微細な変化を感知し、顎関節の状態と異常の有無を把握する旨が記されている。
 ここで先ず私がツッコミを入れずにいられないのは、触診検査を行う施術者自身が顎関節骨格や咀嚼筋等を3次元的に理解していて正常な動作を熟知していないのであれば、目に見えない顎関節の異常を触診で把握するなどとても不可能であるということだ。
 方法の限界も考えず顎関節面骨格を凸凹に削るほど不器用極まりない顎関節症専門医達であるが、まるで「足の裏でも診る教祖様」の如く神の様な専門医の手で触診が出来るというならば、元歯科技工士である私とは比較にならないほど繊細な手指の感覚を持っていて、自身らがこの歯学書に示す顎関節構造の矛盾だらけな様もよく自覚しているのだろう。理学的診断法の説明は次の文で始まる。

「担当医は患者の両側顎関節部を
      軽く示指で触れ、形態の左右差
     (特に下顎頭)や豊隆の有無を診たのち、 
          開閉口運動を促して両側下顎頭の
            可動性が同期しているか、
     協調的であるかを評価する(図1)。」

[図1]顎関節の触診と開口動作

 顎関節を触診するとしても術者が外から指で触れる事ができるのは下顎頭の側面である。だが、「形態の左右差(特に下顎頭)」を診るとしても、ヒトの下顎頭が変形するとしたら先ずは開閉口運動をした際に最も力が加わる下顎頭の中央部からであり([私図]参照)、触診出来る側方部から下顎頭が変形するという事はあり得ない。中央部分は蝶番動作の軸として摩擦が働くが、側方部分は運動の軸として働く箇所ではないし、側方運動でも両側の下顎頭は側頭骨関節面の形状に沿って動くだけである。 
 もし、下顎頭の側方部に術者が外から触って分かるほどの形態的な異常が出るとしたら、既に骨が潰れるように変形していて専門家たちが顎関節強直症と呼ぶとても重篤な状態であるし、そうなるまで放ったらかしにされる歯科医療環境の方が異常であろう。

[私図]円板軟骨の転位に伴う下顎頭の偏摩耗
本来は滑りの良い円板軟骨が摩擦を低減するが
円板軟骨が抜けると摩擦と圧迫が強くなり
咀嚼に伴う丁番動作で関節面の中央部分が
偏摩耗しながら潰れて下顎頭が平坦に変形する。
下顎頭の変形は中央部分から生じるので
顎関節を外側から触診しても指先が届くわけもなく
下顎頭の変化など判別出来るはずがない。
ヤブ医者の触診ごっこは全くの無駄である。

 先に私が解説した第Ⅰ章にある顎関節の解剖学的構造の説明として、「局所解剖の要点」の項で彼らは次のように記している。
「顎関節は皮膚面より比較的
  深部に位置する臓器であり、
   固有関節構造の内外側には重要な
     解剖構造が多く存在するため・・・」
  彼らが触診する下顎頭はせいぜい人差し指の第一関節程度の大きさしかない。それに加えて彼らの文言では顎関節は「比較的深部」にあり、周辺の解剖構造も複雑なようである。果たしてその顎関節を手加減の知らない不器用な顎関節症専門医達が[図1,2]の写真にもあるような男の太い指先で「軽く」触診出来るだろうか。彼らが行う触診の基準は客観性に乏しく、そもそも診断方法として無理がある。論理のない感覚論が医療として普及するはずも無い。専門医という権威に信憑性をもたせる為に誤魔化しているだけで、触診はただのやっているフリなのだろう。

[図2]下顎の前突と側方運動時の
下顎頭可動性の評価
いうまでもなく普通に生きていれば
ヒトはこんなに極端な動作をすることはない。
ヤブ医者の手指で外から押さえつけられた状態で
不自然な顎の動きを強いられた患者が
顎関節に違和感や痛みを覚えたところで
なんの不思議でもないだろう。

 「両側下顎頭の可動性が同期しているか、協調的であるかを評価する・・・」とあるのだが、「可動性が同期」とはいったい何を言っているのか、エリートの日本が不自由過ぎて私にはどうにも解せない文言である。左右「両側下顎頭」も同じ一塊の下顎骨という骨の両端である。硬い骨で1つにつながっている両側の下顎頭は、右も左も必ず同時に動くものである。何の説明も無ければ「可動性」という曖昧な言葉が一体ここで何を示しているのか読み手には分からないし、そもそも左右の下顎頭がバラバラに動くことなど下顎骨が開放骨折でもして左右の下顎頭が切り離されない限りはあり得ない状況である。
 「○○性」とか「○○的」という言葉を使えば、文字面だけではそれっぽく見えるが、専門用語を知っていて内容を精査出来る人間にからすれば、稚拙な彼らの文章はどれも説明として中身の無い駄文ばかりである。「協調的であるか」と、ここでも説明を省いているのだが、逆に「協調的ではない」状態との違いが何によるものかを一度でもこの著者らには解説して頂きたいものだ。

 決して私がただヤブ医者に難癖をつけているわけでは無いことを証明する意味でも、開口動作時に下顎頭の動きで差が生じる原理を3枚の図で解説しておく。

[私図]円板軟骨が右側片側だけ
転位した際の開口動作①
原位置の状態

 片側の円板軟骨が抜けると下顎骨が咀嚼筋に引き上げられて軟骨の抜けた側では下顎頭が下顎窩に接するまで引き上げられる。その過程では軟骨の抜けた側で歯列に過剰な力が加わり続け、歯が沈み込むように移動する。
円板軟骨が抜けた後では下顎全体が軟骨の抜けた側へ傾いた状態で上下の歯列が噛み合うように変化するので、下顎が傾いた状態が原位置となり、開口動作が始まることになる。

[私図]円板軟骨が右側片側だけ
転位した際の開口動作②
左側下顎頭が関節隆起頂点に達した
最大開口動作途中の状態

 開口動作に伴って左右の下顎頭がS字状の側頭骨関節面上を前進すると、軟骨の抜けていない側(この場合左側)では円板軟骨の厚み分だけ下顎窩から下顎頭が浮いた状態で下顎頭の滑走運動が始まるので、軟骨が抜けた側よりも先に下顎頭が関節隆起の頂点に達する。すると頂点に達した下顎頭と関節隆起の間で円板軟骨の後方肥厚部が挟まれ、圧縮された軟骨からの反発力で下顎頭と関節隆起が押し返されることで歯止めとして作用し、軟骨の抜けていない側ではそれ以上に下顎頭が動けなくなる。
 それに対して軟骨が抜けた側では抜けた円板軟骨の厚み分だけ動作の原位置で下顎窩に対して下顎頭が深く位置するので、軟骨が抜けていない側の下顎頭が関節隆起の頂点に達したときに同じ分だけ滑走運動で動いていても軟骨が抜けた側の下顎頭は関節隆起の頂点に達することなく下顎頭がまだ関節隆起斜面上にあり、さらに前方へ動ける余裕がある。

[私図]円板軟骨が右側片側だけ
転位した際の開口動作③
最大開口動作時の状態

 更に大きく開口動作を続けると、関節隆起の頂点で先に動きが止まった軟骨の抜けていない側の下顎頭を支点にして軟骨の抜けた側の下顎頭が回転するように前進し、下顎全体が軟骨の抜けていない側(この場合左側)へ偏りながら斜めに開口します。軟骨が抜けた側の下顎頭も遅れて関節隆起の頂点に達したところで靭帯の支えと反対側の円板軟骨によって動きが止まり、最大開口状態となります。
片側の円板軟骨が抜けている状態だと左右で下顎頭の滑走距離に差が生じるため、開口動作の途中から下顎が横にズレながら開くので、最大開口動作時には斜めに開口しているように見えるのです。
 この単純な機械仕掛けの原理を理解していればわざわざ触診するまでもなく、円板軟骨の片側転位の状況を判断することが可能ですし、専門医でなくても患者自身で自己診断することも出来るのです。不必要に専門用語や横文字を並べて意味ありげに振る舞うこの著者ら日本顎関節学会のヤブ医者は顎関節動作について何も理解していないことでしょう。誇張無く大学病院の顎関節症専門外来はもれなくヤブ医者達の巣窟なのです。

 下顎頭の滑走運動に左右差が生じるのは円板軟骨の状態によるものであるが、もとより専門医達が協調的な下顎頭の動作の条件を十分に理解しているならば、彼らがデタラメな外科処置を行う訳が無い。彼らは異常を見極める以前に正常な顎の動きについて全く理解していないのである。更に説明が続く。
「側頭筋の筋突起への停止部と
  咬筋前縁部の触診は口腔内から行い、
      肥厚や圧痛の有無を評価する。」
  後にも触れる恐ろしい話だが、顎関節症専門医達は患者の筋肉や腱、筋膜が普通よりも厚くなっているなどと画像診断で言いがかりをつけ、患者の身体を食肉の様にさばいてその切れ端をゴミに捨ててしまう。そもそも肥厚していない専門医にとっての理想的な状態が「お化け」の様に存在しないというのに、患者固有の身体を誰の何と比較して肥厚しているなどと彼らは主張するのだろうか。日本顎関節学会の顎関節症専門医はもれなくとんでもないヤブ医者達である。

 また、日常生活でまず触れる事のない箇所を術者の指先で押されたことでそれまで意識したことも無い不自然な「圧痛」を患者が感じたとして何の不思議があるのだろうか。彼らはそれをどう「評価」するのだろうか。まだまだデタラメな説明が続く。

「開口制限をともなう症例では、開口動作に際して術者の手指を用いてアシストし、自発的開口動作から他動的開口動作に至る際の抵抗感の違い(ソフトエンドフィールかハードエンドフィールか)またその際の痛みの有無と程度を評価する(図3)。」

[図3]他動的開口テスト
全くもって客観性に乏しいデタラメな触診である。

 単純に「柔らかいか硬いか(カナで10文字)」と読みやすい日本語で記せば良いものをわざわざ横文字で長ったらしく「ソフトエンドフィールかハードエンドフィールか(カナで22文字)」と記すところがいかにも欧米かぶれのエリート感丸出しであるが、無駄に横文字を並べても馬鹿を露呈するだけで解説に説得力が増すわけではない。
 彼らの理学的診断法では、異常があってそれ以上に大きく自分の力で開口できない患者に対し、それが何を意味しているかも考えず開かない顎を無理矢理にでも専門医の手で「補助」して大きく開口させるようだ。その時に患者の顎を動かす術者の力が強いか弱いかはとても客観性に乏しい術者の主観的な評価であるが、それに長ったらしいカタカナ言葉を名付ける必要性が何処にあるだろうか。 ソフトやらハードやら、わざわざ新しく専門用語を作る必要もなさそうな、馬鹿らしくもエリートなネーミングである。「痛みの有無と程度」も歪んだ観察眼を持つ術者の力加減次第でどうにでもなることだろう。人を騙そうとするやましい人間はとにかくカタカナ言葉やデタラメな数字を無駄に羅列してよく説明を誤魔化すものである。まだまだまだ、彼らの説明は続く。

「顎関節のジョイントプレイ(joint play、関節の“あそび”)の評価については、術者は患者の下顎骨の左右いずれかの下顎骨体を保持(中略)し、垂直的な圧下(離開)の可否、さらに水平的な他動的可動(滑走)性が得られるかどうか(図4)と、その際の痛みの有無を評価する。」

[図4]顎関節のジョイントプレイの評価
下顎骨全体は咬筋と内側翼突筋の張力で
常に前上方へ引き寄せられながら開口動作するので開口動作に際してこの触診検査(b)のように
下顎頭が垂直的に圧下させられるような状況は
日常生活ではまずあり得ない。
 また、円板軟骨が下顎頭の前方へずれて
急に大きく口を開けなくなった場合には
外力を加えて顎を前に引っ張るこの検査(a)によって
円板軟骨が完全に下顎頭の前へ押し出されてしまい後方靭帯が引き伸ばされて張力が弱まり
円板軟骨が自力で後に戻れなくなってしまう。

 彼ら顎関節症専門医は自分の手指を患者の口腔内に突っ込んでヒトの顎運動から外れた動作をさせ、悪趣味にも生身の患者の顎で遊ぶようである。[図4]には頭蓋骨の標本を用いてその評価方法が写真で示してある。患者上下の歯の間に術者の親指が挟まるような状態にして術者が患者の下顎を片手で把持し、「ジョイントプレイ」という彼らの悪ふざけが始まる。ヤブ医者の親指一本分よけいに顎が開いたその状態から、更に患者の下顎を真下に押し下げて「垂直的な圧下(離開)」を得られるかどうか確認する様子が[図4 a]にある。また、同様に親指一本分開いたまま、患者の顎を前に引き出すようにして「水平的な他動的可動性(滑走)」を確認するようすが[図4 b]にある。

 また、ここでも「○○的✕✕的△△性」などと、何ともインテリぶった間抜けな文言でそれっぽく示してはいるが、これら一連の確認動作はヒトという動物としてとてもあり得ない顎の動作である。
 口の中で1ミリという数値はとても侮れない大きさであると私は先の解説でも述べたが、専門医の親指の厚みは一体何ミリであろうか。顎関節をなす側頭骨と下顎頭の間に垂直的な遊びがあるとすれば、既に関節円板が2つの骨の間から抜けてしまったことで顎関節を支える関節包靭帯や外側靭帯がたわんでしまっている事によるものである。
 ちなみに知ったかっぶりの専門医がわざわざ触診などしなくても、顎関節構造を理解していれば顎関節で左右の円板軟骨が転位しているかどうかは鏡一枚あれば患者自身でも自己診断可能である。

 自動車事故や転倒などで急で大きな外力が下顎骨全体に加わらない限り、円板軟骨の転位は左右両側で同時に起こる訳ではなく転位は片側から始まるものであり、両側で転位する場合でもある程度は時間差が生じる。
 先に片側の関節円板が前方転位してしまうと、大開口動作で下顎頭が滑走運動する際に左右下顎頭の動きに差異が生じる。何故ならば顎関節を成す上下の骨の間から関節円板が抜けた分、転位した側の顎関節では下顎頭が関節隆起斜面を滑走する距離が増える為である。
 ヒトは何の意識も意味も無く斜めに顎を開かないが、円板軟骨が片側だけ抜けたその状態では下顎が途中から斜めに曲がった状態で開口動作することになる。何故ならばある程度大きく開口した段階で転位していない側の下顎頭の位置は脱臼防止の機構が作用して関節隆起頂点に定まるが、その時にはまだ転位した側の下顎頭が関節隆起斜面の途中に位置しているからである。それ以上に口を大きく開こうとすれば、転位した側の下顎頭が限界まで下がる過程で患者の口は開口動作の途中から斜めに開くように見えるのである。

[私図]右側円板軟骨が片側だけ抜けた状態での
最大開口動作に伴う下顎の動き

模型なので歯の沈み込みまでは再現できないが
片側の円板軟骨が抜けると見かけ上はこのように
下顎が斜めに動きながら口が開くことになる。

「両側下顎頭の可動性が同期しているか、協調的であるかを評価する…」と、この著者のあやふやな説明が先にはあったわけだが、この現象を明確な言葉にして説明が出来ないほど、顎関節症専門医は顎関節動作に対して理解が無いのである。そんなヤブ医者達が科学的探究心を欠いた欲にまみれた手で患者の大事な顔をイタズラにいじったところで、患者の状態など何も分かるはずがない。そもそもその現象を術者が理解していれば患者の顔に触れる必要もないのである。
 どのみち彼らは理学的診断法の後にインチキでたらめな画像診断を仕掛けるのだし、患者の前で知ったかぶりをしてもバレることはないという訳である。

 関節円板が両側で前方転位していない患者に対して、○○医師が垂直的に顎を押し下げて顎関節を「離開」させれば、転位していない側の関節円板までも、両側揃って前方転位してしまうことにもなり兼ねない。靭帯が支えるのは自力の動作内であり、他人が顎をこじ開ける力に抵抗するものではない。一体、何を目的に彼らが「関節のあそび」を確認するのかも不明であり、楽しそうなネーミングとは裏腹に「ジョイントプレイの評価」は危険な行為でしかない。
 また、同じ条件で患者の下顎を前に引き出し、水平方向のあそびを○○医師らは楽しむわけであるが、「噛まないでくださいね」と、勝手な指示をする術者の母指の厚みが10ミリだとして、患者は硬くてそれ以上に閉じられない奥歯に物が挟まったような状況から、10ミリ下顎が押し下げらたままの状態で滑走運動することになる。だが、側頭骨に下顎頭が沿って動くのが本来の「滑走運動」である。真面目に考えるほど馬鹿らしい様であるが、ヒトという動物が生活の中でそのような動作をする訳が無い。下顎を動作する時は、必ず「支点」が安定していなければならない。
 ここに記されている「ジョイントプレイの評価」は顎関節の構造から逸脱した医学的妥当性の無い動作評価方法であるだけでなく、円板軟骨の転位を誘発させるとともに後方靭帯を不可逆的に引き伸ばしてしまう本末転倒で最悪な処置である。

    

















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