顎関節症という歯科医療被害 2-8 関節隆起切除術について(2)
(31P)
(1)に引き続き
「(前略)関節隆起の切除・整形を行う。
その目安としては、
術中に助手の助けを借りながら
下顎頭を関節隆起に圧着させるようにして
開閉口運動させるとスムーズな動きに
障害となる部分がわかりやすくなるため、
該当部分を追加切除・整形する。」
習慣性顎関節脱臼の外科処置として自分が見やすいように患者の関節結節を切り割った後、関節隆起の切除量や切除箇所を口腔外科医師ひとりの目見当や感覚で独断するのかと思いきや、この解説文では違うようだ。
「助手の手を借りながら」とあるが、この助手は自分の親玉が知らないヒトの正常な顎運動を知っているわけも無い。助手も知ったかぶりの○○上司と同じく、知ったかぶりしている○○部下に違いない。悲惨なのは連中に当ても無く大事な身体を削られる患者達である。
「下顎頭を関節隆起に圧着させる
ようにして開閉口運動させると・・・」 顎関節に違和感を覚えて脱臼の症状が日常的であることを踏まえれば、その患者の関節円板は転位していることはほぼ間違いないだろう。だが、そうであれば関節円板が骨の間から抜けた分、下顎頭は安静時に下顎窩から浮き上がっていることになり、○○医師が外科処置を施したとしても、麻酔から覚めた患者自身の顎運動はその位置からスタートすることになる。
健常な状態であれば下顎頭に合わせて凹んだ関節円板後方肥厚帯の形状に誘導され、下顎頭は下顎窩から関節隆起斜面へと段差無く前方に移動するのだが、関節円板が元の位置からズレてしまっていたのならばそうはいかない。 きっと○○助手は上下の歯を噛ませた状態に初めの位置を定め、そこから大きく開口していく状態まで終始にわたり患者の下顎を上に押し上げるよう関節隆起に圧着していることだろう。
噛むという動作だけを想像すれば上下の顎を閉じて下顎を上方向に引き上げることばかりを考えてしまう。だが、雑食であるヒトの顎はワニとは違って単純にカパカパ閉じるものではない。ヒトが顎関節脱臼を生じるのは単純な蝶番運動時ではなく、大きく開口するに伴って下顎頭が前方に移動する滑走運動においてである。そして、滑走運動に必要不可欠な関節円板と下顎骨を前方へ引き寄せる外側翼突筋の作用方向は垂直方向ではなく、むしろ水平方向に近い。
外側翼突筋下頭は下顎骨の関節突起に付着して下顎骨全体を、外側翼突筋上頭が下顎骨の下顎頭を、上頭の更に上にある名称不明な外側翼突筋は関節円板をそれぞれ内側前方に引き寄せる。外側翼突筋の上頭と下頭はもう片側を蝶形骨の翼状突起外側板に付着し、第3の外側翼突筋は側頭下稜に付着し、外側翼突筋はお互いほぼ並行に走行・作用する。
だが、関節円板が骨の間から抜け、下顎頭が側頭窩の深くに位置するとなれば、それに伴い骨に付着する筋肉も位置関係が変わってきてしまう。下顎頭関節面の直下に付着する外側翼突筋(上頭)が筋の走行通り水平方向に作用しても、円板が抜けた分だけ間に位置する関節隆起の山は高くなり、それが縁石のように干渉して動作を邪魔してしまうのだ。関節円板が転位すれば滑りの良い軟骨が抜けて摩擦抵抗が増すことに加えて筋の作用が骨格的に妨げられてしまい、滑走運動時の摩擦抵抗がさらに増す事となる。
開口動作に伴う滑走運動時、筋肉が下顎骨に作用する力の方向は大まかに前上方と後上方であるが、単純にその2方向の合力として○○助手が関節隆起斜面に押し付けるよう前上方1方向へ力を掛ければいいというものではない。咀嚼筋の付着位置はそれぞれ大きく離れており作用する方向も全く別である。それに加えて、滑走運動により下顎頭が関節隆起斜面を移動することで、開口動作の途中にも側頭筋が付着する骨の位置関係が大きく変わってしまう。
勿論、それだけで脱臼が生じるような状況は、支点が真っ平に近い人口顎関節を使用して関節円板や外側翼突筋まで切り取られるような顎関節全置換術でもしなければ普通には考えられない。しかし、そこに下顎骨全体を前方へ引き寄せる力が外側翼突筋によって加われば顎関節脱臼は簡単に生じ得る現象である。
「スムーズな動きに障害となる部分が
わかりやすくなるため、
該当部分を追加切除・整形する」 と本文は続くが、ヒトの正常な顎運動に際して顎骨にどのような力が作用しているのか術者達が理解していない限り、いくら骨を削れどもスムーズに下顎が動作する訳も無く、図工の下手くそなヤブ医者の手によって関節隆起は切除され続けてしまう。そして、顎関節骨格の必要形態が○○医師により崩されてしまい、患者の顎関節は平坦なものに近づいていく。
表面が滑沢な軟骨であっても逃げ場なく他人の手で無理やり真上から押さえつけられたならば、押し潰れて動作の抵抗が増してしまう。○○医師に削除されて関節隆起の山が低くなっても術後に患者の筋肉が同じように作用すれば、下顎頭は易々と関節隆起斜面を駆け上がり勢い余って関節隆起を乗り越えてしまうことだろう。本当に馬鹿げた話であるが患者は術前よりも顎関節脱臼を生じやすい状態になってしまうのである。
関節円板の転位によって脱臼防止のストッパーが無くなっているという顎関節の状況把握と、外科処置で身体を整形しても顎関節動作が健康な元の状態には回復できないという機械原理を理解していることが顎関節症専門家として当然であり、患者に対し不可逆的な治療行為を行う口腔外科医師に問われる資質である。
顎関節脱臼は決して偶然に起こるものではなく、何度でも条件がそろえば必ず起こる機械的不具合である。逆にいえば脱臼の条件が揃わないよう患者が生活動作に気をつければ脱臼を減らすことは十分可能なのだ。患者が専門医から適切な診察を受け自分の身体の状況を正しく知ることが出来たならば、患者自身の脱臼に対する不安もいくらか和らぐはずだ。患者自身で顎関節症状の理由が分かればこそ生活状況を改めることも可能なのである。
顎関節症専門を自称する歯科医師や口腔外科医師にそれが出来ないのは医療における自分の役回りを理解せず、無謀な歯科治療や外科処置をすることで自分の手柄を立てたいという利己的な成功願望が根深くあるからだ。彼らは自己顕示欲旺盛な学歴エリートのまま自分の欲の為に歯科医師免許を悪用して立場の弱い患者達の健康を搾取しているのである。その為とても自分の手に負えないはずの重篤な患者に対しても後先を考えず簡単に手をつけて外科ごっこのオモチャとするのだ。
ここまでの事を考慮して○○助手が手術中に患者の下顎を動作しているならば、それを指導・指示出来るほどのまともな口腔外科医師がいたとしても、初めからこの様に的外れな外科処置を侵襲の少ない合理的な治療行為などとして行わないはずである。
ここで先述した(1)の冒頭を思い出して頂きたい。「習慣性顎関節脱臼手術(関節隆起切除術)」として、この項の説明が始まったわけであるが、彼らが行う外科処置の前提が既に崩れていると分かるはずだ。関節隆起を切除・整形したところで顎関節脱臼症状の改善は見込めない。それどころかこの外科処置によって患者の脱臼症状は術前よりも悪化してしまうことだろう。
これから続く手術手技の説明は、彼ら○○医師達がどのように患者の身体を無意味に傷つけたのか、その犯行の自供である。正しく馬鹿の傷害罪としか言いようがない。
「なお関節隆起部の骨蜂巣の
有無のチェックをするために、
術前のCT画像撮影は必須である。
(第Ⅴ章参照)」と、この項の前書きを終えているのだが、先にあった関節結節のくだりで耳鼻科医師に顎関節外科処置の責任を擦り付けるような口腔外科医師だ。誰に指図したところで彼ら自身にはCT画像を診断できる能がないことは明白である。骨蜂巣があろうが無かろうが、結局のところは彼らが患者に対して行う外科処置には何も変わらないだろう。患者は無駄な撮影・診断料金を支払い、意味も無く多量の放射線を被曝することになる。とんでもない話だが、それが事実であることはこの先に理解頂けることだろう。
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