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2.ロンドン・カナダで初めて過ごす夜

2.前回の続きであります。カナダに到着し迎える初夜について書きました。

幾つの駅で停まったのだろうか、今自分はどこにいるのだろうか
窓の外の景色を幾度と見ても違いが全く分からない。バス自分が降りるのはロンドンで終点だからまだ大丈夫だろうか。フライトでの疲れがどっと出てきていた。私はまるで一個の荷物の様に抵抗する事なくバスの振動に揺られていた。本来ならば日本では一睡して朝9時頃だから無理も無い。
辺りはもう真っ暗だった。気がつけば目的地に着いた。叔父さんと落ち合う。
私はカナダに居る間、母親の中国人の親戚の家にホームステイするのだ。
家に向かう車の道中に叔父さんはTim Hortonsのコーヒーをドライブスルーしてくれた。「入郷随俗だ。こっちのコーヒーは皆ダブルダブルを注文する」ダブルダブルとはミルクが普通の2倍で砂糖も2倍だ。なんならトリプルトリプルを好んで頼む人も多いと言う。普通のコーヒーではしっくりこない様だ。流石はメイプルシロップ大国。「日本では佐藤さんが多いですけど、カナダでは砂糖が多いんですね」なんてボケは通じない。道中見慣れない街並みを叔父さんが解説してくれながら家に向かう。

カナダみんな大好き。1日に一杯は飲むだろう、国民的コーヒーショップ。


遠くに一際明るく見える高層階のビルが並ぶのがダウンタウンだった。それ以外街をどう走ろうとも違いがない様に思える。低層の住宅がまとまって広がっている。その近くで商業圏を作る様に、スーパー、コーヒーショップとそのドライブスルー、銀行、ドラッグストア、ホームセンターが並ぶのだ。どこに行っても大抵はこの組み合わせを見る事ができるだろう。市内には緑が点在する。緑豊かな森林の様な公園が多いからだろうか。

高層ビルはダウンタウンでしかお目にかかれない。

ステイ先はロンドンの北側にある。市内でも比較的新しく開発された住宅街の様だ。さらに北に走れば市外の農地が続く様だ。家に着いた。車が2台入るガレージ付きの斜面に立つ三階建の家であった。家に入ると吹き抜けになっていて天井が高い。当時は4月だったがカナダの4月は零下近くの事が多く、その日も外は寒かった。緊張していた私を家に入ると暖かなスープと親切な叔母さん夫婦が迎えてくれた。2階のリビングには暖炉、ピアノ、ギターがあり、落ちついた雰囲気だった。後に私のお気に入りになるのは1階と2階それぞれにあるデッキだ。2階のデッキでは日焼けとお茶会ができ、一階ではハンモックとジャグジーが楽しめる。家の後庭には大きな柳の木、外には小さな池がある。柳の木の上にはリス一家が住んでいる。

雪が積もっていたデッキ。後にここでお茶会は頻繁に開催される。

キッチン、食器棚はアメリカンサイズ、大きい。冷蔵庫も映画ET でしかみた事のない物だった。私の部屋は一階。お向かいの部屋には叔母さんの知り合いで私の一個上の中国からの留学生が住んでいる。彼女は彼氏がいると言う。残念だ。到着したこの日はシャワーを浴びすぐに寝床に就いた。北米のダブルサイズ以上の大くて、腰から沈む柔らかいベッドだった。カナダで初めて過ごす夜、就くやいなや瞼が落ち、夢のない、重い鉛の扉の様な眠りがやってきた。
私は到着から1週間近く時差ぼけに悩まされる。人生で初めての時差ぼけだった。日本とロンドン・カナダは13時間の時差があり、昼夜逆転だ。日本で本来深い眠りについているであろう、4・5時はカナダでは15・16時だ。その時間になると身体中にダンベルを背負った様な疲労感が襲い、息苦しくなる。これからやらなければならない事は沢山。口座開設・携帯の手続き・生活への順応が待ち構えるのだ。


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