雄弁
―理解者はいませんよ。僕は自分を正当化する気はありませんから。
死刑でもなんでも受け入れます。
は?心神耗弱で減刑⋯?
―失礼しました⋯あんまりおかしかったもんで、あぁ、涙が⋯
―僕は至って、正常ですよ?神に誓ってもいい⋯もっとも無神論者ですが。
―動機?それは警察の方にも何度も言いましたよ?
⋯濃い紅紫の花びらみたいだったからね。
美しかったですよ。
今でも目を瞑ると思い浮かびます。
あの可憐な花びらめいた、無数の⋯
十代の少女ばかりを殺め、その舌を切り取っていた犯人は、終始、「美しかった」を繰り返し、心神耗弱で無罪を勝ち取ろうとした弁護側を否定し続けた。
判決は死刑。
彼の最期の言葉は「僕が死んでも、彼女達の美しさは少しも損なわれません」だった。
折しも初夏。彼が少女達を見立てた花が咲き誇っていた。
まるで彼に手をかけられた少女達へのレクイエムのように⋯。