柴犬との日々:それは抜け毛との戦い
「柴を飼うなら抜け毛も愛せよ」。
この名言(?)を聞いたことがある方、いらっしゃるでしょうか。私は以前、SNSで目にしました。同じ柴飼いとして共感を覚えつつ、本音は「柴は好きだけど抜け毛は愛せないよ……」でした。
柴はダブルコートなので(上毛[うわげ、オーバーコート]と下毛[したげ、アンダーコート]の2種類が生えている)、抜け毛の多い犬種です。長毛ではないため毛のたくさん抜けるイメージがあまりないかもしれませんが、抜けます。特に、春と秋の換毛期はボソッとかたまりでも抜けます(このかたまりを指でごっそり抜くのがなぜか癖になる)。こんなに発生するなら何かに活用できないかなとブラッシングの度に思うほど、大量に抜けます。
換毛期というだけに、全身が生え替わるにはある程度時間がかかります。抜け毛が増え始め、ピークを迎え、落ち着くまで1か月ほどかかるでしょうか。全身一度に抜けるのではなく、小町の場合はまず前脚から始まり、そのあと背中、太もも、と特に抜ける箇所が移り変わっていきます。頭の毛が抜け始めると「そろそろ完成かな」と感じます。頭はほかの部分と毛の質感が違い、短めの細い上毛がとりわけ密に生えていて、下毛ではなくその上毛自体が生え替わっている印象です。最後の最後に体の上毛が少し抜けて、蓑毛(背中の逆立つ部分の毛)がパラパラと落ちると換毛期終了です。
毎日のブラッシングでごっそり抜けるのは下毛です。上毛は硬く張りのある直毛で、若干重みがあるので舞いにくいのですが、下毛はずっと細くてふわふわしています。そのためあらゆる布製品に絡みつき、家中に舞っていきます。どういうわけか、冷蔵庫のなかにも紛れ込むことがあります。服にももちろんつくので、外出着では長く部屋にいられません。子どもがあかんぼうだったころは、這っている床に犬の毛があるのに抵抗があり、床掃除にかなり気を使いました。
小町はブラッシングには慣れているものの、長い時間されるのは苦手。我慢の限界が来て鼻にしわが寄るまえに切り上げるようにしています。当たりのやさしいスリッカーブラシをメインで使っていますが、それでも敏感な場所は嫌なようです。特に、腰から下に当たる感じが気持ち悪いのか、とかす度にぞわぞわっと皮膚が動く日もあります。
上毛に3色が混じっている黒柴の下毛はどのようにカラーリングされているかというと、それぞれ上毛と一致しています。上毛が黒いところの下毛は淡いグレー(上記の写真参照)、白いところは白。茶色いところは……とあらためて考えると、茶色い部分はごくわずかなので、下毛が何色か今まで見たことがありませんでした。ちなみに、地肌の色も上毛と呼応していて、黒い部分はグレー、白いところはピンクです。
数年前、公園で犬と散歩していたとき、すれ違ったおばさまから話しかけられ、「柴って抜け毛がすごいんでしょ。私だったら耐えられないわ〜〜」と言われてちょっとむっとしたことがあります(初対面で唐突にそういうことを言う人も世の中にはいる)。
抜け毛の量で犬を冒涜してもらっちゃあ困ります。いきものなら大なり小なり毛は生え替わるもの。冒頭で「抜け毛は愛せない…」とは言いましたが、そう思うくらいには柴犬が愛おしいのです。