【相続税対策】相続税が気になる方へ、教育資金一括贈与をご存じですか?
私は2023年5月に東京都で行政書士を開業しました。開業といっても副業行政書士としての開業です。今回は相続税が気になっている団塊ジュニア世代に向けて、1500万円が非課税となる教育資金一括贈与について記事にまとめたいと思います。
教育資金一括贈与って何?
祖父母などが2026年3月31日までに孫など(30歳未満)に対して、教育資金として、信託銀行等にお金を預けて、孫などがその信託されたお金を教育資金として使ったことを書面で申告することで1500万円まで非課税になる制度です(※)。つまり、利用用途を教育資金に限定すれば、贈与税が1500万円まで非課税となる制度です。当然のことながら、祖父母の相続財産を減らすことができますので、相続税対策にもなります。
(※)正しくは贈与者が直系尊属(父母または祖父母)であって、受贈者が30歳未満の子または孫である場合に、教育資金として贈与した1500万円まで非課税となる制度です。
「教育資金」に該当するものは?
以下のものが教育資金に該当します。
1.学校などに対して直接、支払うもの(1500万円まで非課税)
・入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費、受験料、学用品費、就学旅行費、学校給食費など
・「学校など」は幼稚園、保育所、小中学校、高等学校、大学、大学院、専門学校など学校教育法で定められた学校が対象
2.学校など以外の者に対して、直接支払うもの(500万円まで非課税)
・教育(学習塾や英会話学校など)、スポーツ(水泳、野球、サッカー)などの授業料、会費、月謝など
・家庭教師、ピアノ、絵画、ギター教室の講師やインストラクターに支払う指導料、その使用する物品の購入代金
3.その他で教育のために支払うもの
・制服や体操着、通学カバンなど学校費が必要と認めたものの購入代金
・通学定期券代金、留学の渡航費など
このように教育資金一括贈与の対象となる「教育資金」は幅広く認められます。子供を持つ世帯としては教育費は出費がかさみ、頭を悩ませるお金ですが、もし自分の親から我が子のために教育資金を非課税でもらえるのであれば大変ありがたい制度ですね。
手続きの方法、流れについて
【STEP1】贈与契約書の締結する
・祖父母(贈与者)と孫など(受贈者)とで贈与契約書(※)を締結します。
※贈与をするためには贈与者と受贈者の間で「あげる、もらう」の双方の合意が必要です。法律的な話をすれば、贈与とは「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによりその効力を生ずる」と定めているからです(民法第549条)
・教育資金を信託する金融機関からも贈与契約書の提出が求められる場合があります。
【STEP2】教育資金口座を開設する
孫などの名義(受贈者名義)で信託銀行等に「教育資金口座」を開設します。信託銀行ではなくても都市銀行、地方銀行でも開設できます。祖父母が入金したり、孫などが支払った教育資金を受け取る手続きが必要になりますので、最寄りの銀行が便利です。最寄りの銀行で教育資金口座が開設できるかどうかはネット等で簡単に調べることができます。
例)「〇〇銀行 教育資金口座」でGoogleで検索
【STEP3】教育資金非課税申告書を提出する
教育資金口座を開設したら、その開設した銀行に「教育資金非課税申告書」を提出します。税金なので税務署に提出するのが一般的なのですが、教育資金一括贈与の場合、その開設した銀行が税務署に提出します。言い換えると金融機関を経由して、税務署に「教育資金非課税申告書」を提出します。
【STEP4】祖父母(贈与者)が教育資金を入金する
祖父母(贈与者)が教育資金口座へ教育資金を入金します。先ほどのSTEP3でも書きましたが、祖父母に入金をしてもらわないといけないので、祖父母がいつも使っている銀行が便利ですし、振込み手数料など考えると最寄りで且つ預金のある銀行が良いですね。
【STEP5】学校等へ教育資金を支払う
孫(実際には親)が学校や塾へ授業料を支払って、領収書を受け取ります。なお、学校等へ支払ったお金で領収書等が出ない場合、その場合、学校等からの案内文書や支払った明細があれば領収書代わりにすることもできます。
【STEP6】銀行に領収書等を提出して、教育資金口座からお金を引き出す
孫等(実際には親)が教育資金口座を開設した銀行に行って、教育資金口座からお金を引き出します。いつまでに引き出しが必要か、については以下の2パターンがあります。
【パターン1】領収書等に記載されている支払年月日から1年以内
【パターン2】領収書等に支払年月日の翌年3月15日までに1年分をまとめて
・パターン1の場合、孫等が学校等に教育資金を支払った後に、「教育資金口座」から、その都度、引き出す形になります。
・パターン2の場合、孫等が学校等へ教育資金を支払う前、支払った後に「教育資金口座」からまとめて引き出す形になります。パターン2の場合、支払う前に引き出すことができるのが特徴です。
祖父母が途中で亡くなったときは?
祖父母(贈与者)が贈与契約期間中に亡くなった場合、教育資金一括贈与の終了が終了します。また、教育資金口座を開設している銀行等へ祖父母(贈与者)が亡くなった旨の届出が必要です。なお、祖父母(贈与者)が亡くなった時に教育資金口座に残っている金額(管理残額といいます)は受贈者が子供の場合、相続等によって取得したものと見なされます。つまり、受贈者が自分の親である場合、相続税相当額に持ち戻しされ、管理残額に相続税が加算されます。ただ、受贈者(子ども)が23歳未満である場合、学校等に在学している場合、教育訓練給付金を受けている場合は、相続等によって取得したものとは見なされません。
また、祖父母が贈与者で孫が受贈者の場合、孫は相続人ではありませんので、管理残額のうち、2022年4月1日以後に贈与により取得した金銭の2割に相当する金額を加算する規定(相続税額の2割加算) が適用されます。
詳しくは、下記をご覧ください。
教育資金一括贈与契約の終了について
前述の通り、贈与者(祖父母)が亡くなった場合、教育資金一括贈与が終了しますが、その他、以下の場合も教育資金一括贈与契約は終了します。
【教育資金一括贈与契約が終了する場合】
・贈与者(祖父母等)が亡くなった場合
・受贈者(孫等)が30歳(または40歳)に達した場合
・受贈者(孫等)が亡くなった場合
・教育資金口座がゼロ円(0円)になり、且つ、その口座の契約を終了させる合意があった場合
なお、教育資金一括贈与契約は上記理由に合致しない場合、例えば、贈与者と受贈者が教育資金資金一括贈与契約を止めることを合意しても、途中で止めることはできませんので注意が必要です。
暦年贈与と併用すれば更なる相続税対策に
この教育資金一括贈与の制度と暦年贈与の制度(1年間で110万円までの贈与は非課税となる制度)は併用することができます。この制度を併用すれば、毎年110万円の贈与(利用用途は制限なし)を受けながら、教育資金一括贈与も受けることができますので、有効な相続税対策になりますね。また、教育資金一括贈与の制度は相続時精算課税の制度とも併用することができます。
教育資金一括贈与のデメリット
これまで教育資金一括贈与のメリットをお伝えしましたが、デメリットも考慮した上で、教育資金一括贈与の制度を利用しましょう。
【デメリット1】教育資金口座から引き出す際に領収書や請求書が必要なため、手続きが面倒である
【デメリット2】制度利用開始後は贈与を取り消すことができない
【デメリット3】贈与者が亡くなった場合に、教育資金口座に残額(管理残額)がある場合、相続税や贈与税の課税対象となる
【デメリット4】孫が贈与者の場合、30歳になるまでに教育資金一括贈与された教育資金口座の金額を使い切る必要がある
最後にひとつ
最後にこの制度は2026年3月31日までの時限措置となっていることにも注意が必要です(ただし、適用期間が延長される可能性もあります)。また、この制度は受贈者に所得制限(1000万円以下)があることにも注意が必要です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
(ご参考)暦年贈与の贈与を受けた財産を相続財産に加算する期間を「相続開始前3年間」から「7年間」に延長されます。
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