見出し画像

〈詩〉あとがき

この小説はもうまもなく終わるだろう
あとがきに触れながら思う
これを読んでいる私はせいぜいまだ2章目が始まったくらいだと
最終章のそのまた後の出来事から、明日からまたは読み終えた直後に何をするか考え始める
あれもこれも、新しいことややりかけのこと、諦めてしまったことまでランダムに思考と記憶の棚を行ったり来たりでさっきから文字が頭に入ってこない、物語が終わればまた世界へと引き摺り出されてしまう
焦るほど呼吸は浅くなり思考も鈍り精神が地下深く浄水槽の中に溶け出していく
このまま綺麗な1ミクロンだけ取り出して
傷んで汚れたその他全てを微生物のエサにしてやればいい
さようなら、いなくても変わらない自分
美しい何かの一部にでもなれたのならそれでいいや
ああ、最後の一文にかかってしまった
地下深く沈澱した意識が逆再生のように不自然な経路を辿り私の中へ戻ってゆく
この物語はもう終わる
だがその結晶のひとかけらは私の中に取り込まれている
顔も知らない文字の向こうにいるあなたの息づかいを私は今感じる事ができる
そうして本を閉じる私の息づかいと重なり、身体を動かし寝食を共にし人生へ繋がる
人生を分けてくれてありがとう
あなたの人生のうちの何ヶ月、何年か
これで私はまだもう少しだけ生きていける

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?