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わたしの母
小さい頃はおませさんで、綺麗なリボンに
アイロンをかけて並べるのが好きだったという。
整った顔をしていて、きっとモテたと思うのだけれど、一方で男勝りではっきりした性格でもあった。
とにかく人に興味があり、友だちが沢山いる。
皆に開襟を開き、意地悪をされても気づかないような天然さも持ち合わせている。
料理上手で、味噌や梅干し、漬物も自分で作った。パンもよく一緒に作った。
コロッケもミートソースも、母に作り方を教わった。
働き者で真面目。仕事に関しては非常にクールで着実に努力し、感情的になったり浮足立ったところは見たことがない。
洋服が好き。鮮やかな色や斬新なデザインを好む。都会的で垢抜けた、マニッシュな感じを好む。
芸術を解する。宝塚が好き。
わたしにバレエを習わせてくれたのも、母だ。
バレエをやっていなかったら、わたしは舞台俳優には間違いなくなっていなかった。
大量の絵本、児童文学、詩集。
わたしが本好きになる前、選んでくれていたのは母だった。
美術館に行くと、わたしはゴッホが好き。
母はゴーギャンが好きだった。
娘のわたしには、ワガママを言ったり
気分屋の猫みたいなところもあった。
自分のことがあまり好きじゃない
そう言って、マイペースに暮らすのは
苦手そうだった。
母の様々な場面に、ずっと一緒にいた。
相棒のように。
ホームズとワトソンなら
間違いなく
母がホームズで、わたしがワトソンだ。
打てば響くように
呼応するように
いつも当たり前にそこにあったもの。
母もわたしもきっと
もうじきそれを失う。
その先に何があるのかなんて
考えられない。
ホームズなしのワトソンは
どうやって物語を進めていけばいいのだろう。
考えてもわからない。
わかりたくない。
だからただ、時の出すカードを見つめていよう。
深く呼吸をして
心の波を穏やかに保つ。
そして、この目に
見えてくる波に体をゆだねよう。