阪神・淡路大震災の避難所(4)『ボケ』『アホ』と罵られながらも
大きな通りがあったので歩道橋を渡ろうとしたが、ひとつは階段が壊れていて使えない。もうひとつの歩道橋で渡ることにしたが、電線が低くたれていて、渡れたもののかなり危険だった。
兵庫高校に到着する。緊張していたせいか異様な雰囲気を感じた。グランドに林立する仮設トイレ、クレゾールの匂い・・・。急に5日間やって行く自信がなくなった。
おどおどしつつ本部の職員(神戸市職員)をたずねた。
「兵庫高校避難所の人的構成」
神戸市職員は都市計画局の職員が配属されている。因果なもので、庁舎の途中階が崩落して出勤する場所がなくなったので避難所(兵庫高校)があてがわれ、それが既成事実化し抜き差しならない状況となっているのだ。何日かに1回交代で24時間勤務をする。またここの避難所長は区画整理課長だというから困窮の度合いがいかに大きいかがうかがえる。緊急課題の区画整理が山積する一方、避難所も維持していかなければならない。そしてこの課長さんはこの3月で定年を迎える。運命とはいえ・・・。本庁へ戻ることは・・・。(最敬礼)
収容されている人々は1400名程度で様々な問題を抱えた人も多い。そのため、なかなか自治組織が確立せず、つい半月ほど前にやっとできあがったという。つまらないことでの小さないざこざも絶えず、なかには流血事件になったものや刑事事件に発展しそうなものもあったという。事実、自分たちの滞在中にもケンカがあり、みそ汁の入ったナベや草履を投げていたのを目撃した。
普通、小学校や中学校の避難所は子どもを通じてかなり顔見知りが多く、学校の先生が先頭に立てば父母を中心に避難所が運営できるらしいが、ここは本来避難所としては想定していなかったところで、そういう避難所からあふれた人々が収容されており、それが通用しなかったのだ。
そこで、所長さんが「ボケ」「アホ」と罵られながらも一人一人に接して説得し、自治組織を築き上げたのだ。僕はすっかりこの人に惚れた。男が男に惚れたのだ。
一般ボランティアにも一部屋があてがわれ、そこを拠点にして、避難所の運営をサポートしている。活動内容としては、避難民個々人の要望に応じることや子どもの世話、外部から炊き出しが来ないときの炊き出しなどが主な仕事のようで、行政で対応しきれない部分の穴(※)埋めに大きく貢献しているようだ。
※行政側の弁護をするつもりはないが、行政には完全平等(あるいはオールorナッシング)が求められるから仕方がなく、ボランティアは避難民に対してきめ細かな(不平等な)対応が可能(不平等にしても誰も文句を言わない)というところでそれぞれが補完し合っているようだ。と換言しておこう。
蛇足だか、Kさんという女の子が可愛い。
自治体からの応援は、○○市(通常1泊2日で2~3名の職員を連日送り込んでくる。男女問わず)、○○県教員(多数いたが3月2日に全員引き上げた)、○○県教員(多数いたが人足程度)、そして我が○○市が入っていた。自分で言うのもなんだが、○○市が最も戦力が充実していたと思う。
(つづく)