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ときどき日記(671)公選法違反はカネの多寡ではない

昨日、ラジオを聞いていたら、兵庫県知事選にかかる公選法違反について、某ジャーナリストが「70万円ぐらいじゃ逮捕されないよ」と宣っていた。

本当にそうだろうか。

私は地方公務員を30年以上勤め上げて定年を迎えた。厳密に言うと定年1ヶ月前に休職打ち切りとなった形だが。
それまで何10回も選挙事務に携わってきた。投票・開票連続で従事したことも数え切れない。

特に投票所は「投票所において投票行動に影響を与えてはならない」という法的思想があり、あらゆる事が厳格に行われていた。

一般的には小中学校の体育館で行われることが多いが、地域のセンターで行われることもある。小中学校であったとしても体育館ではないこともある。
図書室のこともあった。

この時は特に厄介だった。

見えた文字によってある特定の候補者を連想させてはいけないからだ。
だから、本棚をすべて白い布や模造紙で覆い隠さなければならなかったし、外があからさまに見えるような窓も外が見えないようにした。選挙ポスター以外に民家に政党のポスターが貼ってあったりすることもあるからだ。

ここまで厳格にやるには理由がある。

有権者数が多い選挙ではあまりないことだが、1票未満で当落を決することもあるからだ。

同じ苗字の者が立候補することなど枚挙にいとまが無い。このケースにおいて、苗字しか投票用紙に書かれていないものが相当数発生する。この場合、1票を按分する。2人いれば0.5票ずつ、3人いれば0.33・・・ずつ、4人いれば0.25ずつといったかたちだ。

だから選挙は厳格に行われる。

区役所に勤めていたときの区長が市長選のとき、そのときその区長はもう退職していたが、現職の市長の選挙に携わり、現職の市長に1票でも多く得票してもらいたいとの思いから、市外から実体がないのに住民票だけ移して投票して逮捕された。数百万人の政令市なのに対抗馬と拮抗していたから焦ったのだろう。1票で落選することを。

カネの多寡で逮捕されるかどうかが分かれるとすれば、有権者が多い選挙では公選法違反がまかり通ってしまうことになる。

違反は違反なんだよ。

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