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阪神・淡路大震災の避難所(3)「高速長田は停車しますか」

最近、局内で公私にわたり被災地への調査出張や物見遊山が横行しているが、人の心を傷つけてまで行うこれらのものの価値をもう1回考えてほしい。あくまでも私見ではあるが価値はないと思う。よしんば差し引きでメリットがあったにしても傷つけた彼らの心を癒やす手段は誰もここでは持ち得ていないはずだ。最低、写真撮影はやめたいものだ。
 
5分程度歩くとシャトルバス乗り場へ到着する。時間が早かったせいか、待ち時間は全くなくバスの方で口を開けて待っていた。かなりのバスが動員されているようで、乗ったのは観光バスでそれも2階建てのバスだ。ユニフォームを着た可愛げなバスガールも乗っている。天国と地獄を行ったり来たりで気持ちが追いつかない。
 
走り始めると、直ぐに国道に出る。倒壊した高速道路の跡地の横を通り過ぎる。ビルも倒壊していたりする。やっぱりテレビで見ていたのと同じだ。
 
15分ほどで岩屋に到着する。自動改札もこういう事態なので解放にしてある。
 
再び阪神電車に乗って三ノ宮へととりあえず向かう。
 
三ノ宮で一度プラットホームへ降り立ちここからのルートをどうするか検討する。行き先は兵庫県立兵庫高校で最寄りの駅は「高速長田」だ。「高速長田」ならこのまま乗って行けば到着するはずで、次の電車が来るのを待つ。念のため近くに座っていた婦人に「高速長田は停車しますか」と聞いてみたら「止まりまへん」との回答。うろたえつつルートを再検討する。JRに乗り換え「兵庫駅」へ向かうしかないということが判明した。
 
駅の表(地上)に出てみて三ノ宮の惨状に愕然とした。そして困ったことに、自分の知っている三ノ宮と全く違っているので、頭の中のナビゲーションシステムが全く動かないのだ。駅でウロウロしてしまった。
 
JRに乗って兵庫駅へ。兵庫駅までは高架になっていて、相変わらず惨状を一望できる。
 
兵庫駅で下車。駅広に出るといきなりテント生活者が目に飛び込んできた。そこに暮らしている人たちは決して浮浪者ではない普通の人達なのだ。日々ぬるま湯に浸かっているような生活をしている自分が情けない。
 
地図を頼りに兵庫高校へ歩き始める。倒壊した家屋が歩道をふさいでいたり、いまだ片付けられていない木っ端や様々な破片が散乱しているので神経を使う。途中階が潰された「市立西市民病院」もあった。解体工事が開始される気配もなく廃墟となっている。
 
(つづく)

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