物価高の本当の理由について理解しよう
① 2022年からの物価高
『物の値段が高くなった』と言われ始めたのは、2022年頃からです。
これは、数値として、はっきり出ています。
↑上のグラフを見ての通り、2022年以降、日本の消費者物価指数(CPI)は急激に上昇しました。
インフレ2%。
物価が2%ずつ上がっていく経済が、安定していると世界的に言われています。
ここからは、なぜ2022年頃から急激に物価が上がって来たのかについて取り上げます。
② 供給制約による物価高
少子高齢化による人口減少は、物価が上がる最大の原因です。
”供給制約”とは、何らかの原因で供給を満たせない状態を言います。
よく人手不足というのが、それに該当します。
人手不足は完全な供給サイド側の問題で発生します。
人が足りないと物を作る、サービスを提供するが出来なくなります。
いくらAiが発達して機械が働く世界が来るとして、それはまだ先の話です。
人手不足は、労働市場の供給制約を引き起こし、結果として賃金上昇圧力に繋がってます。
サービスや商品を提供していくには、人材確保が必須です。
企業は人材確保のために賃金を上げる事を迫られます。
人手不足の賃金の原資を、商品やサービスの価格に転嫁していく為、物価上昇を引き起こします。
これは、労働力不足が根本的な問題として日本経済に影響を与えています。
③ 地政学リスクによる物価高
2022年にロシア・ウクライナ戦争が始まりました。
丁度、日本の物価高が始まった時期が一致してきます。
中東ではイスラエルパレスチナ紛争も悪化しています。
ロシア・ウクライナ戦争や中東情勢の悪化は、地政学上の物流リスクに大きく影響を与えています。
特に、ヨーロッパとアジアを結ぶスエズ運河は、世界貿易の最重要ルートですが、ここが思いっきり地政学リスクを抱えています。
また、中米のパナマ運河は水不足でタンカーが通れないという問題も発生しています。
スエズ運河、パナマ運河という世界各国の重要な貿易ルートが航行困難になっています。
北半球の国に貿易で物資を供給するには、南アフリカより下の喜望峰を迂回するしかありません。
重要な貿易ルートにおける治安リスクや気候変動による航行制約が、物流コストUPを招き、輸入コスト上昇の原因になっています。
単純に、日米の金利差による円安ドル高が、輸入品の価格上昇を引き起こして物価高の原因でない事は、しっかり理解しておく必要があります。←ここは【超重要】
④ 世界的に物価高の傾向
物価高は、グローバルな現象として広がっています。
日本に限ると、人手不足による供給制約が物価高を引き起こし、スエズ運河、パナマ運河の重要貿易ルートがリスクを抱えて供給バランスを崩しており物価高に繋がっています。
物価高のもう一つの原因は、”米中貿易摩擦”です。
旧ソ連崩壊後は、グローバル経済で世界各国で自由に貿易や商取引が行われて来ましたが、中国が急激に経済成長を遂げ、アメリカの脅威になります。
人件費が安い国で物を作る動きがグローバリゼーションで急速に起こりますが、アメリカを始めとする先進国の経済力を低下させる原因にもなりました。
グローバリゼーションの副作用で出て来たのが、ドナルド・トランプ氏のようなナショナリズム、保護主義者を主張する権力者です。
自国を優先する保護主義の思想が世界的に強まり、G7と中国ロシア側の対立が強まりました。
米中対立→地政学リスク→貿易ルートのリスク→資源の供給制約→物価高というサイクルが近年の物価高の本質だという事は、絶対に理解した方がよいでしょう。
そして、物価高のもう一つの理由は、東南アジアの人口増加です。
日本は人口減少を辿っていますが、世界全体では人口は増加傾向です。
この人口増加も、購買力(旺盛な消費欲)と直結します。
人口が増える=消費が増える事なので、それは物の取合いが発生しやすくなり、つまり値段が上がる要因です。
⑤ 結論:物価高は止まらない
日本国内で発生している物価高は、複雑な要因が絡み合って発生しています。
1.国内の人口減少、労働者不足による供給制約
2.スエズ運河、パナマ運河の最重要ルートの航行リスク
3.米中対立による、世界経済の分断による資源調達のコストUP
4.東南アジアの急速な人口増加による購買力の拡大
現在の物価高は、単発の原因ではなく、複雑に絡み合って起きています。
だから、単発の物価高対策をしたからといって、それは時間稼ぎに過ぎません。
政府がお金をバラ撒くから、物価が安くなる事はありません。
長期的に物価は、上がっていく構造になっている事は抑えておきましょう。
2022年を分岐点に、国際社会の構造変化が起きている事は理解しましょう。
「値上げするな!」「物が高くて困る!」といった感情で判断せず、物価高についてロジカルに理解できると、次の行動に繋がります。
デフレ脳で物が安くなるのを待つのと、
インフレ脳で持続的に物の値段は上がっていくのでは、対策が全く真逆になります。
強いては、個人の人生設計にも影響してきます。
まだ、デフレ脳の人は目を覚まして下さい。