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ダナンの女王

卒業旅行でダナンに行った際、
BBQのお店で働く女の子とInstagramのアカウントを交換した。thaoさん。

僕は旅立ちの前、並々ならぬ緊張を抱えていた。

後半89分、0-0。
味方のスライディングタックルで与えてしまったPK。それを止めるGKの気持ちを請け負っているくらいに緊張していた。

thaoさんにこれからベトナムに行く。
ダナンにも必ず行くと伝えると、Welcome!
ダナンに来たらcall me.
どれだけ心が救われたか。

主審がVAR確認を行いにいったように心が軽くなった。
その言葉だけでありがたかった。

いざ本当にダナンに着いて連絡すると、
私のPubに来て。と言われる。

Instagramにてthaoさんの動向は何となく見ていたのでやはりそうか、と思いつつ、せっかく招待してくれたのだから行かない訳にもいかない。

KARAOKE Barに誘われるトラウマがあったものの、ベトナムのPubを見てみよう。
そう決心した。

彼女と出会ったのはちょうど4年前。
当時、僕は22歳で彼女は20歳。

ハウマッチ?すらも分かってもらえず
Google翻訳もそこまで優れていなかった頃なのでろくにコミュニケーションをとることができなかった事を覚えている。

新人のアルバイト店員。
アラレちゃんのような眼鏡をかけていた。
若々しさがあり愛らしいキャラだった。
ツーショットを撮った。

Pubはダナンのほぼほぼ中心地。
22時に僕は到着した。

彼女に会う。驚いた。
圧倒的、女王感。垢抜け。強女子。
真顔がこわかったが、僕に会うと笑顔で挨拶してくれる。久しぶり〜!

ピチピチの黒タンクトップにオヘソを出す洋服。ハーフパンツ。スポーツジムで見るような服。二の腕に入れたお洒落なタトゥー。

アラレちゃん眼鏡はなくなり
代わりにカラーコンタクト。
そして、お子さんがいる。
これはInstagram情報。

その全てが似合っており、自然であった。

僕はTシャツと短パンサンダル。
彼女は24歳だが、僕より遥か多くのものを経験している。そんなことを感じた。

開口1番、英語で話しかけられる。
そうよね。

ベトナムの若い世代の英語力に度々驚いていたが、彼女もやはり。

4年間でここまで差が開いたのか。
僕は英語に関して、別に話せなくても生きていけるしょ。そんな感じで考えていた。

英語が話せる事で、人間の何かが決まる訳ではない。必要なタイミングも特になかった。
旅に出るなんて考えてもいなかった。

しかし彼女は、ハウマッチすら分からない状況から、必死に勉強し英語をモノにした。

彼女の向上心と僕の楽観視、
大陸と島国、ベトナムの教育と日本の教育。
外に矢印を向けるのは良くない。
向き合うべくは僕の楽観視。

4年越しのツーショットを撮り、
彼女と欧米式のハグをして、店内に入る。

Pubは日本でいうクラブと同じ意味を持つような場所だった。音楽はガンガン、洋楽とベトナム音楽?と韓国音楽?それらが場を満たしていた。

中心に踊り場があり、囲うようにして座席が設けられている。

DJの盛り上げによって良きタイミングで男女が踊り合う。盛り上がりに欠ける23時などは踊り子達が、アメリカハイスクール女子(バスケユニ)言い方が適切か分からないが、それらを纏った女の子が踊る。
盛り上がっている時も、ビキニを着たお姉さんが単独で踊る時間帯があった。

彼女は、踊り場付近に座っていたお客を追い払い、代わりに僕をそこに座らせてくれた。

働きぶりを見ていると、もうこのお店の2番手、3番手の地位についている事を感じる。

真剣な眼差しでレジを眺め、タイミングでお客さんと乾杯をかわしてお酒を飲ませる。

二言三言、英語で話しかけられたが、アワアワしている僕を見かねて乾杯!のみのコミュニケーションに。

彼女は、それでも乾杯でコミュニケーションをとってくれる。楽しんでる?てな感じで笑顔を向けてくれ、乾杯をする。

あぁこの子が日本にやって来たら、最大限のオモテナシをしてあげよう。
朝昼晩全てを食べさせてあげよう。
高級店は無理だけど、
すこぶる美味しいラーメン屋、おでん屋、魚屋、焼き鳥屋、餃子屋。

その為にお金を稼がなくちゃ。

日曜日だったが、お客は満員。
僕の隣には韓国人の男の子2人。
店内は喫煙、シャーシャ。
何やら風船を口咥えて吸っては吐いてを繰り返している人々もいる。
一酸化炭素中毒でどうにかなってしまうのではないかと思われるほど、煙が舞う。

僕から見て左手奥に、タイプのベトナム女性が参上。2人組。
ここではビール1本しか飲まない。
そんな自分との契りは即終了、ビールを飲む。
あの子に話しかけたい。でも、英語が。

急に男の子が隣に。
ベトナム若人。
僕はいつもの如くGoogle翻訳でコミュ。
よくここに来ているみたい。

ユーアーソーナイスガイ。
自信がつく。ありがとう。
気になる子はいる?
と聞かれ、あの子。と言えず、、

根本が童貞な僕+して英語劣等感。

若人は去り、爆音で流れる音楽に身を任せていると、
隣の韓国人があの子に話しかける。
風船を咥えて、仲良さそうに話す。

結局、彼らは4人で店を出てしまった。
W杯に出た事はないけれど、負けた時は
きっとこのタイプの悔しさを何倍にも膨らませたものだろう。と思った。
僕もかなり悔しかったので相当なものだと思う。

今後の日韓戦応援には、
並々ならぬ熱が籠る事が予想される。

彼らを見ていると、最初対面でコミュニケーションを取った後、ケータイで画面を見せ合う。

おそらくGoogle翻訳。
僕に足りなかったのは勇気だけだった。

あの時、ナイスガイと言ってくれた若人の力を借りていればよかった。

この旅で何度も感じる。

さっきの店で食べれば良かった、
あのバイクに乗れば良かった、
あの子に話しかければよかった、
あのバスに、あの宿に、あの値段で、

その時その時で、逃してしまったものはもう永遠に戻ってこない。それをたった数日だが、強く痛感している。



悲しみの果て、爆音で流れる音楽にフラつきながら、1人酒を飲む。

乾杯をくれるthaoさん
他の従業員に指示を出すthaoさん。
レジを見つめるthaoさん。

この姿、忘れちゃダメだな。

結局、このPubでノートライ。
体内でざわめく感情を抱え
アイムゴーイングホーム。と伝える。

thaoさんは少し寂しそうな表情。
僕の意思を尊重してくれ、バイバイを交わす。

ありがとう。ありがとう。


いつか、
JR新宿駅の東口を出た所で、待ち合わせしましょう。

きっと、あなたに似合います。
大遊戯場 歌舞伎町という街です。

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