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【ショートショート】眠る間もない!

この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。

「昼寝こそ、会社の未来を救うカギです!」

タナカはプロジェクターのスライドを指しながら熱弁を振るった。
スライドにはこう書かれている。


昼寝に関する研究結果
・昼寝後の作業効率:34%アップ
・注意力の向上率:54%
睡眠不足による年間経済損失
・約5兆円に相当(推定データ)


「たった20分の昼寝が、こんなにも効果を生むんです!しかも、企業全体での導入効果は計り知れません!」

だが、上司は腕を組み、冷めた目でタナカを見つめるだけだった。

「会社は仕事をする場所だ。昼寝なんて言い訳をするな」

その言葉に場内が静まり返る中、タナカは小声でつぶやいた。
「だったら、俺一人で証明してやる…」


翌日、タナカは会社の物置部屋に忍び込んだ。
古い机をどかし、段ボールを積み上げ、手作りの「昼寝ルーム」を完成させた。


昼寝ルームのご案内
効果
・20分の昼寝で午後の集中力が劇的にアップ!
・誰でも自由に使えます!
使い方
1.携帯を静音モードに設定。
2.短いアラームをセット。
新しい自分にリセット!


タナカは壁にポスターを貼り、社員たちを集めて呼びかけた。

「昼寝で午後が変わる。ぜひ試してみてください!」

最初は誰も信じなかったが、一人がポツリとつぶやく。
「まぁ、タダなら試してみるか…」

昼寝ルームの利用者は次第に増え、社員たちは次々と口を揃えた。

「午後の資料作りが驚くほど捗る!」
「集中力が戻ってきた感じがする!」


数日後、ついに上司が昼寝ルームを訪れる。
タナカは緊張しながら説明した。

「上司もぜひ試してみてください!たった20分で体が軽くなります!」
上司は部屋を見渡し、一言こう言った。
「思った以上にまともに作られてるな…」

タナカは心の中でガッツポーズを決めた。
「これで、俺の革命が成功する!」

しかし、上司の次の言葉が空気を一変させた。
「タナカ、この昼寝ルームは確かに素晴らしい。だからお前を専任管理者に任命する」


タナカは頭を抱えた。

「管理者ですか…?」

上司は満足げに微笑んで言った。
「お前が一番昼寝の効用を理解してるだろう。だから社員が快適に昼寝できる環境を維持しろ!」

社員たちは昼寝ルームでリラックスし、楽しげな声が漏れ聞こえる。
タナカは机に突っ伏し、心の中で叫んだ。

「昼寝したいのは俺だあっ!」


最後まで読んで頂きありがとうございました。


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佐藤直哉(Naoya sato-)
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