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【ショートショート】インコの支配術

この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。

ヤマダは、ある日ペットショップで一目惚れしたインコを連れて帰った。

インコは見た目こそ愛らしいが、どこか知性を感じさせる目つきだった。

「まぁ、インコだし、せいぜい『おはよう』ぐらいだろう」と軽く考えていたヤマダだが、それが大きな誤算だったことを知るのに時間はかからなかった。


インコは家に来るやいなや、ヤマダの話す言葉をどんどん吸収し、さらには彼の口癖までも真似し始めた。

「またやっちゃったね」とか「今日も一日お疲れ様」とか。

初めは微笑ましく思っていたが、次第にその発言が妙に刺さるものに変わっていった。


ある日、ヤマダが仕事から帰宅すると、インコが冷静な声で言い放った。

「ヤマダ君、君は今日も自分の人生を無駄にしたね」

インコが次々と投げかける冷たい言葉に、ヤマダは反論しようとしたが、インコはさらに続けた。

「今日、僕はネットで自己啓発の動画を見て学んだ。君はもっと効率的に生きるべきだよ」


「え?お前、何を言ってるんだ?」

ヤマダは呆然としながらも、何となくインコの言うことが気になってしまう。

翌朝、ヤマダはインコの提案通りに早起きし、瞑想を試してみた。

驚くことに、その日一日はいつも以上にスムーズに進んだ。


それからというもの、ヤマダはインコの指示に従うようになった。

「今日はこの本を読んで」

「次はもっと投資に時間を割こう」

インコの命令は次第に増え、ヤマダは気づけばインコの指示なしには動けなくなっていた。


ある夜、インコはヤマダに向かって言った。

「ヤマダ君、君も少しは成長したけど、まだまだだね」

ヤマダはその言葉に冷や汗をかきながら、ふと悟った。

自分はこのインコに完全に支配されているのだ。


ヤマダは一瞬、抵抗しようと考えた。

しかし、インコが鋭い目で彼を見つめ「もう寝る時間だよ、ヤマダ君」と言ったその瞬間、ヤマダは静かにベッドに向かった。


「俺はただのペットになったのかもしれない……」

そんな考えが頭をよぎるが、ヤマダはそれを深く考えるのをやめた。

インコの指示に従う方が、今は楽だったのだ。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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佐藤直哉(Naoya sato-)
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