違う立場に立ったらあの頃の自分を肯定できた
私は前職、車屋で受付嬢をしていた。
華やかな世界だし、基本的に印象は良い職業であると思う。
だけど私はあの頃の自分が嫌いだった。
なんで嫌いなのかと言われると、理由がたくさんありすぎて出てこないぐらいだ。
あの頃の自分はもちろん嫌いだし、その嫌いな自分になった原因の環境も憎いし、すべてが嫌になってしまう。
楽しいことだってたくさんあったはずだった。
お客様が素敵な言葉をかけてくれたこともちゃんとあった。
だけど思い出すことは嫌な事と苦しかった記憶ばかりで、私はあの頃の自分を否定し続けていた。
完全に自分を肯定はできないけど、全否定からは救われた出来事が先日起きた。
車を車検に出したのだ。
それも他社に。
最近のディーラー、行ったことがある人は分かるだろうがおもてなしがすごい。
車社会で競争が激しくなっている今、ディーラーはいかにお店に来てもらうかを考え日々進化している。
私が働いていた場所ももちろんそうだった。
正直ディーラーに行ったら嫌なことをたくさん思い出すのではないか、と思いディーラー車検をすることに悩んだが、お客様として行ってみたいという好奇心が勝った。
自分が運転手として、そしてお客様として行く初めてのディーラーだった。
簡潔に言うと、おもてなしをされる側というのはとても良い気持ちだった。
店に入り駆け寄ってくれた店員さんにほっとした。
お茶を出してもらうのも席を案内してもらうのも、今まで自分がしていたことを誰かにしてもらう経験ができた。
あの頃の自分が嫌いだった。
なんのためにその場所にいるのかが分からなかった。
おもてなしだってここまでしなくていいんじゃないかとか私じゃない方がいいんじゃないかとか毎日考えていた。
空回りすることもあった。
だけど私がしていたことは誰かを喜ばせ、安心させることだった。
私はなんて素敵な仕事をさせてもらっていたのだろう。
自分がしていたときは気づけなかった。
日を重ねるごとに自分を、その仕事自体を嫌いになっていた。
ディーラーに行って良かった。
少しだけあの頃の自分を肯定できた。
今の仕事も、検討はつかないけれどきっと誰かの役に立っている。
そう思える。
あの頃の私、つらいだろうけどあなたの笑顔とおもてなしで喜んでくれた人は必ずいるよ。