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【映画】感想番外編! 仕掛人・藤枝梅安 早乙女太一(第一作ゲスト)の殺陣の凄さに、私の中のレジが鳴った

化粧品会社のマーケティング部で働いていた時、よくチームでディスカッションをした。
どんな商品、接点機会、体験を提供すれば、お客さまに喜んでいただけるだろうか。ひいては、売上げを拡大できるのか。
 
あらゆる手を尽くしたその先の、「さらなる打ち手」は簡単には出てこない。
ようやく、いくつかのオプションを書き出したホワイトボードを、肩で息をしながら眺めていたとき、上司が言った。
 
でも、これじゃレジは鳴らないよね。
 
これなら、体験者は楽しいかもしれないよ。喜ぶだろうね。
でも、そのあとお客さまがお財布を開いて、BA(美容部員)たちにお代を渡す姿が見えないんだよなぁ
 
まじか・・・
 
 
無くても生きていけるものにお金を払っていただくために必要なのは、ロジカルな説明ではないし、ノリや勢い、お得情報でもない。
「なんだかわかんないけど!抑えきれないのよ!」って湧き上がるような、衝動を起こせる何かが必要で、それさえあれば、あとの理由は本人が決めてくれる。
 
コロナ禍を経過して至った今、エンターテインメントを「不要不急」とするのは大きな間違いであると、多くの人が思うところだろう。
一方、数多くの動画配信・サブスクチャンネルやSNSなどによる供給が溢れ、「お金を払う」ことのハードルは益々高く、また、明暗が際立って来たように思う。
 
そんな中で、私は映画「仕掛人・藤枝梅安」の第一作を見て、早乙女太一にレジが鳴った。
正確に言うと、彼の殺陣にレジが鳴った。
鳴りまくった。
 
一太刀ごとにチーン!バン!チーン!バン!チーン!バン!
 
いや、いつのレジだよ!
チーンって打ったら釣り銭箱がバン!って開くやつ!!!
でも、令和のバーコード決済では物足りないのだ。

 
元は旗本家用人の家来であったが、訳あって職を失い、しかしなおも忠義に、そして愛する人を守ることに身を捧げて生きる、石川又五郎が早乙女の役だ。
 
私はこれまでに、『大和三銃士』(2013年10月新橋演舞場)と、『髑髏城の七人Season月』(2017年11月~2018年2月IHIステージアラウンド東京)で、彼の「生」の殺陣を見ている。
 
その時すでに確固たるキャリアがあり、熱狂的なファンを有し、私のような門外漢でもその凄さは事前に耳にしていた。そして実際、こんな一見(いちげん)の素人の目にも、『別格感』は充分に感じとれた。
 
きちんと稽古をしてきて、上手に殺陣を演じる大勢の役者たちの中で、ひとりだけ、刀で人を斬ることを生業にして生きて来た、侍がいるように見えた。
 
すごーい!やっぱり「生」で見ると迫力あるし、違いが分かるなぁ!
 
・・・そう思っていた。
 
しかし、
今回私に走った衝撃は、
 
「生」だとか「映像」だとかを超えたところで、ただただ、凄いものを見た
 
という感動だった。
 
刀の柄に手をかけて、ゆっくりと抜いて行く。
すると引き絞られた腕から、抜いていくほどにその刀へ徐々に、血液が流れて渡って行くように見える。
スクリーンの画角いっぱいに、緊張がみなぎる。
刺客は徒党を組んで襲ってくる。
石川又五郎は無頼者ではないので、ひとりで立ち向かう。(※映画後半の殺陣では多少の加勢もあるが)
めっぽう強いが、自分が強いことにまだ気づいていないほど、若くて孤独だ。
だから必死、ひたすら必死、必死に斬って斬り抜けて行く。
首の皮一枚違えば死ぬ運命の、ギリギリの命を積み重ねた人間のすべてが、そこにあった。
 
やばい、泣く。
 
一太刀振られるごとに、私の中で何かが聞こえた。
チーン!バン!
チーン!バン!

 

「価値のあるものって、こういうものだ」


 
この数分だか、数十秒だかが美しく輝くのは、演者だけでなく演出、カメラワーク、その他もろもろの総合力だ。
だが、その役者が人生をかけて積み重ねて来たもの、払ってきた犠牲、そのすべてが凝縮してこそ、美しい果実が結実する。
なんと重く、豊かな実りだろうか。
その果実に敬意と言う名の代償を払いたい、観客として報いたい、と思ってしまう。

なんだかわかんないけど!抑えきれないのよ!


私の中で、レジが鳴った。
 
「あぁ、凄いものを見た」
心からそう思えたとき、人はそれを「幸せ」と呼ぶ。
(なんか、歌みたいになった)
 
そしてオタクの習性として「あぁ、早乙女担の人は幸せだなぁ」と思ってしまう。
(勝手なエール)
 
殺陣の最後、
静止した背中、そして腕からひじの角度まで美しい。
まるで月岡芳年の絵のようだ。
もしその役者絵が売られていたら、きっとチーン!バン!チーン!バン!って・・・
いつの時代に生きてても、私は変わらなさそうだ(笑)
 
そんな感じでとっても長くなってしまったので、番外編としました。
つたない感想ですが、最後まで読んでいただきありがとうございました!
映画感想の本編は、こちらです。
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