埼玉県営の水上公園での水着撮影会中止騒動について。その3「指定管理者と自治体の責任の所在などについて整理。」

県営プールの水着撮影会の件についての続きです。

県営施設の指定管理の場合、基本的に施設の占有に基づく管理運営権は地方自治体(県など)から指定管理者へと移行し、施設の所有権に基づく管理権は地方自治体となります。

しかしながら自治体あるいは長に専属的に付与されている行政処分の権限である「公物警察権である不正使用者を強制的に排除する権限」「使用料の強制徴収権(地方自治法第231条の3)」「不服申し立てに対する決定権(地方自治法第244条の4)」「行政財産の目的外使用許可権(地方自治法第238条の4第4項)」については指定管理者ができないこととなっています。

こちらは地方自治法第二百四十四条の四「公の施設を利用する権利に関する処分についての審査請求」の条文です。
県営プールの使用許可という「行政処分」に関する不服については、当該指定管理者が「処分庁」ということになります。そして指定管理者は管理を委託された者であり、県知事の補助機関でも下級庁でもありません
なので本来であれば指定管理者が「行政庁」として審査請求をされるべきではありますが、上の地方自治法第244条の4第1項に拠って審査請求は県知事に対して行う事となっているのです。
これによって「民間団体が行政不服審査の請求を受ける」という事態は
避けられているのだ、と思われます。

なので県営プールの使用許可取消の「処分」の不服申し立ては埼玉県知事へと行う事となります

こちらが審査請求を行う根拠となる行政不服審査法です。
第二条で「行政庁の処分に不服がある者」とありますが、これは要するに「処分」に対しては当事者ではない一般県民などの第三者でも請求できるという事です。
「処分」ではなく「不作為」(役所が何もしない)に対する不服請求は第三条で「処分についての申請をした者」とあり第三者は請求できません。

要は、たとえは水着撮影会のニュースを見ていた私とかの第三者でも
県民として「プールの使用許可取消に納得がいかないので審査請求」はできるという事です。

そしてこちらは行政事件訴訟法です。
指定管理者の処分に対して、行政不服審査の審査請求は県知事に対して行う事は先ほど述べました。その審査の結果に納得がいかず、法定で争う為に願って出る場合、この行政事件訴訟法の出番となる訳です。

行政訴訟になる場合、被告になるのは県知事ではなく「当該行政庁」、つまり指定管理者になるという点に注意が必要です。行政不服審査と行政訴訟では相手が異なるという事です。

 処分庁・裁決庁が国または公共団体に所属しない場合(11条2項)とは、処分権限を委任された指定機関(指定法人等)が処分をした場合に、当該指定法人等が行政庁として被告適格を有する場合が典型として想定される。すなわち、民間法人(法人の設立根拠上、行政主体ではなく、通常の民事法上の法人と解釈されるもの)が、行政上の事務を行う局面で処分権限を有する場合に、当該法人を被告とすることになる。指定法人が行う事務が帰属する行政主体は何かという詮索は必要ない。
「解説 改正行政事件訴訟法」(弘文堂)108ページ


まあ個人が行政訴訟までやるのは労力や能力はもちろん費用も無理なので、あくまで知識として、の話ですが。コラーボと戦ってる人以外無理無理

こちらは、公務員が不法により損害を与えた場合にする賠償について定めた国家賠償法です。ここで言う公務員とは公務員法上の公務員に限定されず、法令により公権力の行使の権限を付与されていれば身分上は私人であっても公務員に含まれます

県営プールの指定管理者は地方自治法第二百四十四条の二第3項で「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより」「当該公の施設の管理を行わせることができる。」と定められ使用許可の行政処分権限を付与されています。ですので指定管理者は「公の施設の管理のために行為を行った場合」には「国家賠償法1条に規定する公務員に該当」するとされています。

「ここにいう『公権力の行使』とは,国又は公共団体の作用のうち,純粋な私経済作 用と同法二条によって救済される営造物の設置又は管理作用を除くすべての作用を意 味するものと解するのが相当である。」横浜地判平成 11 年 6 月 23 日判例自治 201 号 54 頁。

ご覧の通り国賠法での「公権力」は「広義」の解釈を取っているので、役所の行う行政作用ほぼ全部が対象となります。同法第二条については、今回のプールの使用許可の話とは基本絡まないと思われるのではしょります。

国家賠償法においてはそもそも、民間事業者等の責任に関する位置付けが明確ではありません。その為総務省では「地方公共団体が指定管理者に 対して求償権を有することを協定において定めておく」事を推奨しています。
協定を結んでおくことで、第三者に損害を発生させた指定管理者に対して地方公共団体が協定に基づく債務 不履行責任を追及する事が可能となります。

このあたりについては県と指定管理者との協定の内容を確認しないとなりませんが、概ね各自治体が指定管理者と結ぶ協定に大きな差異はないであろう、と考えられる事からおそらく指定管理者が損害賠償を負担する公算が大きいでしょう。

そしてこの国家賠償についても、請求の為には「国家賠償請求訴訟」という裁判を願って出なければなりません。行政訴訟と同じく、個人がやるには物理的なハードルの高いものなので現実的ではありません。(コラーボと戦ってる人を除く)


こちらは指定管理者に対しての監査について定めた地方自治法第百九十九条です。他の行政に対する監査でも同じですが、指定管理者に対しては「お金の出し入れの監査」を行うことはできますが「業務そのもの」については監査の対象にはなっていません
今やすっかり有名になった「住民監査請求」によって監査を求める事は可能ですが、「県営プールの使用許可取消」という事象に対して「お金の出し入れ」の監査を仕掛けても無意味ですので、参考知識としてのみの話となります。


以下これまで並べた事項をまとめて整理します。

■行政不服審査法
 →「使用許可」の「処分」に対する不服は県知事に対して行う
  (地方自治法244条の4第1項)
  →「処分」への不服は第三者が請求することが可能。
■行政事件訴訟法
 →「使用許可」の「処分」という公権力の行使への不服に対する
   訴訟提起では被告は当該行政庁(指定管理者)となる。
  →行政訴訟の提起が必要であるため、個人では
   費用等のハードルが高い。
■国家賠償法
 →「広義」の「公権力の行使」に対しての賠償責任を規定した法なので、
  「行政処分」の権限が付与されている指定管理者の「使用許可」も
  「公権力の行使」にあたる。
  →国賠に拠って、県営プールであれば地方自治体(県)も
   賠償の対象となるか。
  →※地方自治体と指定管理者間の「協定」などで賠償については
    規定されているのが普通。県が国賠で賠償を負担したとしても
   「求償権」によって指定管理者が「債務」を負う事となって
   「指定管理者の管理上の瑕疵による損害」は指定管理者の負担
    となる可能性大(要・協定等の確認)
  
  →国家賠償請求訴訟の提起が必要なので、
   個人では費用等のハードルが高い
■監査請求
 →指定管理者に対しても監査請求は可能(地方自治法199条) 
  →お金の出し入れに関してしか監査できないので、
   使用許可についての監査はできない。

コラーボと戦っているあの方レベルであれば、住民訴訟なり国賠請求訴訟なりをできるのでしょうが、私はクソザコなんで物理的にその力は無く、
「行政不服審査」を目指すこととなりそうです。審査請求資格はあるのはご覧の通りです。

件の指定管理者の県公園緑地協会は「弁護士と相談の上賠償」をする方向である旨をコメントしている状態です。なので別に私が何もしなくても、水着撮影会の主催者に対して幾ばくかの賠償は行われるだろうと思います。

なのに何で私がメンドクサイ事をしてるのか。
まあ考えがあってやってる最中ですので、追ってお話します。
雑魚なんで失敗したらごめんなさい。


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