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キウイフルーツが日本に来た頃のこと。
スーパーに行けば必ず出会えるアイツ、
キウイフルーツ。
その昔
親が料理関係の仕事をしていた時のことである。
ある晩遅く、父が片手に
見知らぬ鳥の置物と
紙袋に入ったなにやら
舶来(らしき)の果物を持って帰ってきた。
寝ていたわたしは起こされ、
我が家では
初のキウイフルーツ試食会が
開催されることとなった。
キウイフルーツが日本に初めて上陸したのは
昭和40年代。
当時は高級フルーツで、
なかなかメジャーにはならなかった。
幼い頃、食卓にのぼった記憶はない。
焦ったニュージーランドは
日本のお料理雑誌に
その食べ方や
そもそもどんな果物かを掲載してもらうことで、
一般的な普及を考えた(たぶん)
(当時の記憶ではそんな感じだったが、より詳しい方がいれば教えて下さい)。
当時こういった「持ち込み」企画的な事は多く、
我が家では比較的早い段階で
いろんな食品が家庭に持ち込まれた。
中にはかなり❓の物もあり、
普及せずに
消えていった物たちも多い。
我が家は食の仕事をしていた関係上、
ほかの類は臆病なくせに、
とりわけ食べ物には「挑戦的」であった。
さて、
それはさておき、
夜中に食べる「初めて」はなかなかスリルがある。
まだ冷えていない
キウイの皮をむいていくのだが、
なにしろ、果物なのに毛が生えている。
ビビる母の気持ちをおすように、
父がここで
例の怪しい鳥の置物を持ち出す。
「これはキウイフルーツと言って、ニュージーランドの果物なのだ。
ニュージーランドにはキーウィという
こうした毛のフサフサしたかわいい鳥がいて、このフルーツによく似ていて、ウンヌン」
とウンチクを話し始めるが
冷静に考えて
鳥に似た果物と説明されて
どれだけの人が食欲をそそるだろうか。
しかも鳥の「感触」似た食べ物だよ。
だいぶ怖い。
「味」じゃないだけ、いいけど、
その言葉で決心がつく母は
意外に猛者である。
とりあえず母が恐る恐るキウイフルーツを剥いている間、
失敬して鳥を撫でる。
むむむ、
確かにこれはこの果物と同じ手触りだ。
それから家族全員で
新しい味覚 キウイフルーツを食したはずだが、
正直あまり記憶がない。
なにしろ鳥のインパクトが強過ぎて、
味まで脳みそが回らなかった気がする。
その後、うちへ来る客人は
半強制的にこのキーウィ鳥の「感触」を
体験させられ羽目になった。
客人にキーウィ鳥の披露が行われなくなった頃、
キウイフルーツは市場に一般的に出回り、
時には給食でも見るようになった。
我が家のニュージーランドからやってきた
キーウィ鳥の置物は
だいぶ色が褪せ、
本棚の西陽の当たる場所でホコリをかぶったまま
放置されていた。
その後、
そいつがどこにいったかは
どうしても思い出せない。
日本でキウイフルーツがたくさん食べられるようになって、
すっかりお役御免となって
安心して
本国に戻って行ったのかもしれないと
思いながら、
さて、本当のキーウィ鳥を
撫でてみたいと
新しい願望が時を超えて頭をもたげた。