鰻屋の今昔(いまむかし)
木挽町のビルの狭間にその鰻屋は今でもある。
私が知っている限り店主は三回変わり、
初代と今の店主が縁戚関係にあるのか、
徒弟関係にあるかは知らぬ。
銀座の外れにあるこの店は、
そこそこの値段で鰻重を出す。
鰻重を頼むと奥で職人が炭で焼いてくれる。
椅子に深く腰掛け、濃いめの茶をすする。
見渡すと、年配の夫婦、
仕事先の取り引き相手か数人の紳士たちのテーブル、若い女性を連れてきた初老の男のテーブルなどがある。
おばさんのひとり客は珍しいのか、店主の妻は時折物陰からちらりと見て