![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/166277125/rectangle_large_type_2_df6ab94442f8c647771de1e480d6104e.png?width=1200)
Photo by
akane_umecyan
月夜の晩に
今宵は月が綺麗だ。
度重なる不幸と、
逃れられない因果な現実が
この一年ずっと私を苦しめている。
今日は殊更苦しみが大きく、
何か思い詰めるように息苦しく、
押さえ込んだ怒りの塊が
ゆっくりと内臓をぬめり上がるような感覚が喉元まで届き、
行き場のない感情を抱えてふと空を見上げると、
丸い美しい月があった。
師走の風は冷たく、
手立てのない八方塞がりな私に、
月は静かに光を与えてくれる。
静かすぎる街のアスファルトは冷たく、
通る人もなく、
道の真ん中に誰かが残した
発泡スチロールのゴミが乾いた音を立てて私の足に当たる。
人生に数回だけ
逃れない絶望を味わう時、そこには見上げるといつも月がいて、
「前にもそんなことがあったじゃないか」とまるでなんでもないかのように微笑みかけてくれる。
月はいつもそこにいて、
いつも同じように
静かに微笑みながら
私を見下ろしている。
ちっぽけな私の悩みは
月の光に吸い上げられてパッと闇夜に消えてパラパラと無数の星になる。
いつの夜から空に輝く星になって
素知らぬ顔で
人々の頭の上で光り続けるのだ。
人間の苦悩がもし星になるなら、
つかえていた怒りの塊は
柔らかく微細な粒と化し、
忘れてはならぬ印として
空で輝き人を戒めているのかもしれぬ。
月の輝く晩に
そうあったらいいのにと願う思いが
私の気持ちを少しだけ軽くしてくれる。