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『外道の歌』シリーズ

「加害者には”後悔”も”反省”も望んじゃあいない。
ただ消えてほしいだけだ。この世からね」

今読み終わりました。
もともと、『善悪の屑』が始まって何話目かに、たまたまヤングチャンピオンを立ち読みして見つけました。

自覚はしているのですが、たぶん人より正義感が強いのでしょうか、いわゆる『悪』が断罪される復讐話は好きでした。
ただ、ある時までは身近になかったものが、自らが憎悪に焼かれて、身も心も家族もボロボロにされた親友がいて、騙されて逮捕された友人もいて、身近になってきた今は、復讐話から安心を得ることができるようになってしまいました。

実際に復讐などすれば、それは連鎖となって止まらなくなるのは火を見るよりあきらかです。それがわかるからこそ、空想の産物だけでも晴れる部分は欲しい。

もともと立ち読みで読んでいたのですが、話が飛び飛びになってから読まなくなりました。そして、忘れていたのですが、最近ドラマになったのを見て、ドラマが終わるまでに原作を終えようとして、読み終わりました

この話は、実際の凄惨な事件をもとにしたストーリーがほとんどです。
・女子高生コンクリート殺人事件
・北九州の洗脳事件
・尼崎の洗脳事件
等々。
とすれば、これはもしかしたら事件の被害者へのレクイエムもあるのでしょうか、と思ってしまいます。

一般的に、復讐なんてなにも生まない、むなしいだけだ、と言われますが、そんなことはない。憎悪や復讐心にすがるからこそ、生きていけている。まあ、これは経験者にしかわからないことで、かつ経験者には未経験者に分かるように説明できないので、仕方のないことですが。
言っても無駄だとわかっているので、反論もせずにあなたの前から離れていきます。うんざりなんですよ。問いたい。
「じゃあ、親が、子どもが、恋人が殺され、辱められても、お前は憎悪にまみれないのか?」
と。あり得ない。想像力が無さすぎる。
かりに、染まらないという人がいれば、それは聖人君子でもなんでもない。
人ではないナニカ。

私はそうやって、周りから離れていって、二人の親友以外とはすべてフェードアウトしました。
その中で、どうしても、自然と縁の切れなかった友人が一人いたのには閉口しましたが(笑)
『縁』というのは本当にあるのを実感したときでした。
ですので、私の周りにいてくれている、家族と親友以外の人は、すべてがここ4年くらいで新たに出来上がった人間関係です。0から出来上がったかと思うと、不思議な感覚に襲われます。

この漫画は、家族を惨殺された主人公が、被害者の復讐代行をしていく話。
共感したセリフや、心に残ったセリフがあります。

「経験して初めて知った。本当の絶望を感じると人間は、涙が出てくるんじゃない。息ができなくなるんだと」

「被害者や遺族に対して、周囲の人間はただの一つも何かを要求するべきじゃない。
”許せ”という事すらもとめるべきじゃないんだ。
許せば人生が前向きになるだなんて、一括りにするものじゃない。
人の心の在り方と同じ様にそれぞれの答えがあるのだから。」

「加害者には”後悔”も”反省”も望んじゃあいない。
ただ消えてほしいだけだ。この世からね」

この漫画の最後の方で、
「この恨みあいの輪から、オレは抜けるよ」
というセリフがあるのですが、衝撃を受けました。
このセリフ自体が、理性を意識して考えないと出てこないセリフ。

そうして、数々の復讐の行きつく先は、「やはりそうなるか」というものでした。が、最後まで読めば、”ただの復讐話”ではなくなります。
想像以上の最後でした。ありきたりかもしれませんが、経験者や、このドロドロした感情に深く共感できる人は読んでみても良いのかもしれません。
ただし、読むのなら最後まで。。。

PS.
ドラマを見て、主人公役が窪塚洋介なのは、舌を巻きました。
納得ですね。


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