結局何がしたいんだっけなあ
またまた人生を振り返って鬱状態になってしまった。いつでも思い出すのは思春期の15歳〜20歳辺りである。あの頃は悩みも多かったけど、人生が漠然と光り輝いていたように思えていた。現在は暗くても、未来は明るいはず。そう信じて疑わなかった。それを青年期っていうのだろうか。
将来のことなど何も考えなかったと思うけど、それでも自分なりに明るい未来を感じ取っていたはずだ。あの頃はきっとエリートになれると思っていた。日本を動かす何者かになれると思っていた。歴史の舞台を傍観者ではなく、当事者として見ることができると信じていた。いまでもそうかも知れないが、自分が欲しかったのは金や権力じゃない。そうしたものではなく、きっと名誉ある立場を占めて、世界を知りたかったんだと思う。
社会はきっと面白いところに違いないと純粋に思い込んでいたと思う。高校に上がって、高校数学を勉強した時に、中学数学ってほんの一部で、暗記していたあの公式は実はこうした意味があったんだと腑に落ちた。その瞬間、世界がもっと鮮やかに見えるようになった。数学だけじゃなくて、他の教科だって同じだった。だから、社会に出たら面白いものがたくさん待っていると思っていた。小学校、中学校、高校、大学とずっとそうだったんだから。
さて、あれから結構な年月が経過した。結論から言うと、期待していたものは何一つ手に入らなかった。自分は仕事の才能がからっきしで、到底エリートなどにはなれなかった。歴史を見るなんてもっての外だ。きっと自分なら月次じゃないビッグな何かになれるだろうと意気込んでいたが、タダのサラリーマンとして終わることになった。それでもきっと今までのように新しい出会いと発見があるに違いないとワクワクしていたが、会社にそんなものはどこにも無かった。
まあ、それでも仕方ないとも思う。周りを見ていても、自分が望んだものを手に入れた人間はほんの一部だ。多くの人間は現実と折り合いを付け、ブルシット・ジョブに疲弊し、日々の生活を送るのに精一杯だ。日本を変えたいとか、何か新しいものを突き止めたいといった願望は絵空事で、みんなが会社に行くのは金と世間体のためだと知った。それなら人生を楽しもうと考え方を変えようとも思ったが、社会に出ても友達は1人も増えなかった。
誰かに相談したこともあったが、「社会に出ることの期待感が強すぎたんじゃないか」と返された。確かにそうだったと思う。期待感と実際の社会、それに自分の能力値への予想のギャップが大きすぎたのだ。それでも足掻こうとはしたが、だめだった。いつしか最後の希望も折れ、もう何もかもどうでも良くなった。後は余生を心穏やかに過ごしたい。それしか考えなくなった。
ちょっと不思議なのは、世の人は社会に期待などしていないのに、自分よりも遥かに一生懸命に頑張っているということだ。一体何を目指して頑張っているのだろうか。確かに目先の生活は大事だけど、それだけで頑張れるのだろうか。自分が頑張れた時は、きっとその先に明るい未来が広がっていて、自分の能力がメキメキと伸びていると感じている時だけだった。そういう人間は社会では通用しないらしかった。中学校のブラック部活が意味もなく激しいように、普通の人は意味もなく頑張れる生き物のようなのだ。なんで社会はそんなに頑張り屋さんばかりなんだろうか。小学校の時はみんなで宿題サボってたのになあ。
人が生きていくとは結局どういうことだったのだろうか。青年期の達成感と期待感があまりに大きかったため、その後の人生は何事も空虚に感じられるようになった。高校に入って、勉強が難しくなって、もっと高いところから物事を眺められるようになった喜び、あれはウソだったのだろうか。人が生きるのは、生きるためであり、そのために必要なのは金・金・金だ。とにかく金が欲しいし、びた一文も使いたくはない。金の切れ目は命の切れ目だからだ。
今眼の前に見える未来は暗い。何もかも下り坂で、先に待ち構えるのは死だ。少しずつではあっても、人生が衰弱していくのが分かるし、一歩また一歩、死が近づいてくるのが分かる。いや、もう既に人生は終わっているのかもしれないとも思った。就職し、レールに乗った時点で人生はゴールなのだ。描き終えた絵に絵筆は訪れてくれない。自分はもう完成してしまい、終わってしまった絵なのだ。
いい年して何を言っているんだと自分でも思うが、自分が何のために生きているのかわからなくなる人は結構多いのかもしれないと考えている。人間は意味を考える生き物なので、苦難に突き当たった場合は必ずきっと何かの意味があるはずだと解釈する。自分の眼の前の苦難は一体何のための苦難なのだろうか。病気に意味がないように、眼の前の苦難にも意味はないのだろうが、それでも考えてしまうのだ。
また鬱々としてしまった。こういう時は「昔は良かったなあ!」と三度唱えることにしている。自分は老人なので、考え込むとすぐ「ガンになるんじゃないか」とか「大動脈解離で死ぬんじゃないか」と頭をよぎってしまう。世の中恐ろしいことだらけだ。これ以上考えると立ち眩みがしそうだ。だからさっさと寝てしまおう。
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