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#おむすびの本棚 『むらさきのスカートの女』
おむすびの本棚では私が読んだ本を紹介します。
お気に入りの本とあなたがむすばれますように。
どうも、おむすびです。
『むらさきのスカートの女』 (今村夏子)
を紹介します。
第161回芥川賞受賞作です。
あらすじ
うちの近所に「むらさきのスカートの女」と呼ばれている人がいる。
わたし、自称「黄色いカーディガンの女」は彼女のことが気になっていて、“ともだち”になろうとする。
どうにか関わりを持とうと、まずは同じ職場で働くように誘導し始めるーー。
感想
なんだか不思議な物語でした。
裏に何かがひそんでそうで、背筋がゾクゾクしてくるような。
はっきりとした答えがないからどうとでも捉えられる、奥行きのある小説だなと感じました。
語り手である「黄色いカーディガンの女」はほぼ「むらさきのスカートの女」のストーカーで、1日の行動を監視しています。
語り手の精神や置かれている環境が不安定なせいか、読んでいる方からすると実際とは若干ずれている、歪んだ情景が浮かんできて。
そこにはどこか掴みどころのない世界があります。
思ったのは、私たちは同じ世界にいるようだけど別々の世界を生きているんじゃないかなってこと。
それぞれにその人だけに見える、感じる世界があって、1つとして同じものはない。
だから人のことを完全にはわからないし、自分のことを完全に理解してもらうことはできないんだと思います。
ラストが特に印象的な作品でした。
※ここからは物語の内容に深く関わることが書かれています。見たくない方は目次から「むすびのひと言」にとぶことをオススメします。
結局、2人の「女」は何者だったのでしょうか。
同一人物とも捉えられるし、「むらさきのスカートの女」は全て「黄色いカーディガンの女」が自分を重ねて創り出した幻覚のようなものだとも捉えられるかもしれない。
私は2人は別人で、あのラストから町に「黄色いカーディガンの女」の噂が流れ出し、また別の女、「青いワンピースの女」とかが出てきて......。
ずーっと物語が繰り返され続けるのではないかと考えました。
他の人の考察も見てみたいですね。
いろんな回答が出てきて面白そう。
むすびのひと言
ゲームは楽しいものだ。ゲームをするには、ルールを守りながら、参加者全員が協力し
合わなければならない、だが、ゲームはすなわち競争であり、危険を冒し、時にはーー敢えて言ってしまうがーー非常な選択をし、人生と同じように勝者がいれば敗者もいるという事実を受け入れなくてはならない。ゲームにも人生にも、途中から参加する者がいれば抜ける者もいて、捕まるものもいれば逃げ出す者もいる。ゲームが興味深いのは、敗者が勝者になることも、その逆になることもあるからだろう。
ひと言どころではないですが(笑)。
解説にあった一節です。
世界は決して平等ではない。
気楽に生きている人もいれば苦労してなんとか生きている人もいる。
幸福な人もいれば不幸な人もいる。
格差があることは変えられないから、受け入れるしかないんだと思います。
ここまで読んでくれてありがとう!
それでは〜。