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行政で働く基本的な考え方(正論と課題提示)

noteの使い方と自己紹介も終わり、本投稿からお仕事やまちづくりの話をちまちまと書いていきます。

あくまで個人的見解、だけどお仕事としてすっごく大切にしていることなので、暖かく読んでもらえたら嬉しいです。



行政で働く基本的な考え方

さて、自分が地方都市でのまちづくりを進めるために、行政で働く中で、基本としているスタンスがあります。

それは、正しい仕事から逃げないこと。
そしてそのために、課題の提示・解決を繰り返すことです。


行政の仕事の面白さ・醍醐味の一つは、社会課題の解決に向かって真っすぐ100%取り組めることです。
民間企業だったら、どんなに想いがあっても利益が出ないことは続かないですし、ある程度短期間に投資回収しないと会社が維持できません。

しかし、行政の場合は、税金で最低限の給料(生活)が担保されているので、利益にならない市民サービスに身を投じれるし、中長期的なスパンでどっしり腰を据えて政策や事業に取り組むことができます(コスト算定し効率的に取り組む努力は当然として)。

何より、ひとつのまちに対して、細やかなサービスから大きな計画まで、過去から未来まで、徹頭徹尾責任を持って関わり続けることができます。
民間は持ってる武器(コンテンツ)が響かなければ、もっと有効な別のまちに行くことができますが、行政はそういうわけにはいかないですからね。
逆に言えば、税金から給料を頂いている行政職員こそが、まち・社会を下支えする守りの業務や長期的な攻めの業務に向きあって大切にしなければなりません(責務)。

この、ひとつのまちで、民間の短中距離走と行政の中長距離走を並列で行い、補い合い、相乗効果を生むのが、いわゆる官民連携まちづくりです🤝

出典:Tarzan



俯瞰と言語化

そのために自分が大切にしているのが、常に全体俯瞰して、客観的な視点で業務や組織の課題を発見し、言語化・構造化して、周囲に提示・共有すること。

例えば・・・

  • 手続きが時代に合わないんじゃないか

  • 制度が古くて救えない市民がいるのではないか

  • 幹部や政治のための事業になってないか

  • 形骸化した前例踏襲イベントになってないか

  • 歳上の顔色を伺って歳下の育成を疎かにしてないか

などなど。

出典:アオアシ(作:小林有吾)


課題提示と悪口の違い

ここで非常に大事なのは、課題提示と悪口は異なるということです。

課題提示は、学校の宿題と同じ「課題」ですから、当人や組織が乗り越える=解決できるハードルを、相手や周囲、そして関連する市民やまちのために、伝えることを指します。
学校の先生が、自分の憂さ晴らしのために生徒に課題プリントを配ったり、生徒が解けない難問を出したりしないですよね。

一方で、悪口は、解決できないネガティブワードを相手にぶつける行為を指します。
最近、とある美容商品の会社が駅に「容姿に関するコンプレックス用語に×した広告」をいくつも掲載し、ただの悪口じゃないかと厳しく指摘される騒ぎになっていますが、これは「努力しても解決できない他人の容姿のネガティブ要素を言語化して提示したから」からだと言われています(反ルッキズム=気にするなという趣旨の取り組み自体は大切なことだと思います)。

つまり、解決することでよりプラスの展開に繋げる目的が課題提示で、ぶつけっぱなしでその先につながらないのが悪口ということですね。

出典:東洋経済オンライン
※企業名等が見えないよう加工しています


毎日都市を回す大変さ

この課題提示の難しさをお話する前に、行政のお仕事の一般論(前提条件)をお伝えしておきます。

世の中では行政の仕事って、なんか書類が多いとか手続きが固いとか融通が利かないとか色々言われますが、そもそも税金=みんなのお金を扱う以上、やむを得ないことが大半です。
みんなの大切なお金だから、一人の主観で使い道を決めるのではなく、色んな人の目で見て、不公平や過剰・過小がないか、可能な限り公共的に確認する。なので時間が掛かるし、書類も多くなる。

だから、世間(メディア)で言われているほど、行政はサボってないし、大半が地道な仕事を真面目に頑張ってます。根っからの悪人はそうそういません。
そもそも、数十万や百万人以上の生活が毎日毎日成り立つようにまちを回すというのは、めちゃめちゃ大変なことなので、そんなサボってたら都市なんて成り立たないですよね。

出典:daiwahouse

行政内に潜むモンスター

さて、そうやって日々皆さんの生活のために奮闘している行政ですが、個人的に、唯一言い逃れができないもの、市民の皆さんに申し訳ないもの、行政におけるだと思うBOSSモンスターがいます。

それは、思考停止です👾

基本的に悪い人はいないけど、悪い行為はある、罪を憎んで人を憎まずですね。
おそらくどの行政にも、次のような理由があると思います。

  • 社会課題増と人員減により、目先の責任重大な仕事を回すだけで精一杯

  • 考えると疲れるし、何かを変えようとすると抵抗にあって損する

  • 頑張って変えたところで給料は変わらない

さらに始末が悪いことに、このモンスターが進化すると馴れ合いという毒沼を生み出しがちです🍄
狭く閉じられた身内だけの世界で思考停止をマジョリティ化し、見るべきものから目を逸らし続ける世界。いちばんやっちゃダメなやつですね。
イーブイ→ブラッキーみたいにかわいい悪進化ではありません🐾

出典:リーガル・ハイ


課題提示の難しさ

本投稿の趣旨である課題提示の難しさは、ここにあります。

もし集団が思考停止してしまうと、考えたくない=変わりたくないという思いから、改善=変化に対し、猛烈なアレルギー反応を起こします。一発目から激反応するので蜂より強い🐝
そして、本来自身や組織、市民のために向き合うべき課題提示を、表面上のネガティブワードのみ拾って悪口扱いにすり替え、言動そのものを糾弾し撤回させようとします。

その上、悪口を言う=組織の和を乱す人間として、組織的なレッテルを貼ることすらあります。
そうすることで、思考停止=波風立てない=組織の和を守る優秀な人間にすり替え、自己弁護するわけです。

そもそも前述したように、社会課題の解決が行政の本懐なので、課題=ネガティブワードと向き合うことが、行政職員の本来スタンスのはずです。
なので、自分の場合は、乗り越えるべき課題を明確化してくれたら、ありがとうと思うように心掛けています🐜
(こんなこと言ってるから日々後輩にズバズバ言われるんですが)

出典:進撃の巨人(作:諫山創)


尊敬する先輩の言葉

さて、以前、自分の尊敬する建築設計の最前線で働いている先輩が、こちらの東京出張に合わせて一杯付き合ってくれたときに、こんなことを言ってました。

ねぇ、なんで行政ってすぐ「落としどころ」って言うの?

2017.5@新橋

そのときは、それは行政には柵がたくさんあるから〜、と伝えたのですが、帰りの飛行機で振り返ってみれば、先輩が伝えたかったのはそういうことじゃないんだろうなと。

つまり、最初から全力での仕事を諦めて、早々に楽な落としどころに逃げるな、そう言いたかったんじゃないかと思います。

出典:yahoo地図

正論の大切さ

それを踏まえて、行政で働くなかで、もう一つ、心掛けていることがあります。
それは、正論を大切にすること。


先ほど言ったように、行政というのは、みんなのお金で動く、公平性が重要なお仕事です。
なので、考えること、配慮すること、確認することなど、何かやるための柵(ハードル)がめちゃめちゃ多いです。
どんなに最善手で進めたとしても、お金がないとか、人が足りないとか、企業が断ったとか、政治方針が変わったとか、いち職員いち部署ではどうしようもない事情でひっくり返ることがよくあります。

その結果、目標の6割程度のクオリティに落ち着くことが珍しくありません。
いいんです。これは誰が悪いわけでもなく、社会の仕組み上仕方がないことなので、それを踏まえてまたチャレンジするだけです。


ただ、ひとつだけ注意してほしいのは、仕方がないと言えるのは、あくまで、100点の目標に向けて全力で取り組んだ場合のみ、ということです。

行政で働いていると、最初から6割目標な取り組み方をどうしても目にします。
一生懸命やったところで、どうせ外的要因で6割に削られるなら、最初からそこを目指した方が無駄なくコスパいい、そんな感じなんだと思います。

こういう働き方は、得てして効率よく、抵抗せず、従順に仕事を進めるので、できる人と評価されることもたぶん多い。

しかし、本当にそうでしょうか。
最初から諦めて落としどころを目指すということは、最初から100点の成功例の可能性を捨てるということです。
つまり、コンビニに入ってすぐにゴミ箱に財布を突っ込むようなもの。めちゃめちゃかっこよくスマートに金を溝に捨ててるだけ
実はいちばんコスパ悪い無駄をやっていることにならないでしょうか。

出典:キナリノ

100%のダンスをしよう!

というわけで、日々、めちゃめちゃカッコ悪く、全力で市民のために、100点を目指して働いているわけですが、そうなると、ときに内部で闘う(※ケンカではなくディスカッション)必要がどうしても生じます。

その際、決まって言われる台詞が、正論を言うな、です。

しかし、いつも思うんです。
いやいやいや、何を言ってるのか、社会課題に真っ直ぐ取り組める行政こそが、最も正論を言える組織じゃないのか、と。

もちろん、結果的に中止や妥協案になることもとてもよくあります。でもそれは、全力で100点を目指した結果、たまたま60点になっただけです。
最初から60点を目指してたら、往々にしてできるのは50点だったりします。

逆に、常に100点を見据えていたら、しょっちゅう60点だったとしても、稀に色んな要素が噛み合って120点とか150点のウルトラCが出たりします🎯
出した人が、運が良かっただけとか揶揄されることもありますが、それは間違いなく、それまでの名もなき100点にチャレンジしてきた仕事の積み重ねの上に、きまぐれ神様がちょこんと座っただけのことなのです。


なので、自分は常に、100点を目指して100%全力で取り組んでいます。
正論と言われようが、かっこわるいと言われようが、結構。
それが、税金を払って頂いている市民の方々、そして一緒に取り組んでいる民間企業の方々に失礼がない働き方だからです。民間企業の皆さんだって、せっかく一生懸命取り組んでたのに、実は最初から60点しか目指してませんでした〜とか言われたら、いやになっちゃいますよね。

ありがたいのは、自分のその下手くそなスタンスを諌めてくれる、同じく全力でいい仕事に向かって取り組んでいる先輩方がいること。
こんなこと言われるまでもなくわかった上で、もっと上手く、もっとスマートに、ときに強かに、ときに自分を抑えながら、1点でも高いゴールを目指して取り組んでいる方々です。
そういう先輩や上司が行政にはごろごろいらっしゃるので、なんだかんだでお仕事は面白いのです。

なお、小見出しは、週刊少年マガジンで連載していたアイドルグループの漫画で、お客さん相手に何度チャレンジしても上手くいかない研究生たちに、主人公が言った台詞を引用。
大学生のときに読んで、今でも自分のひとつの指針にしています。

出典:AKB49~恋愛禁止条例(作:宮島礼吏)


まとめ

ということで、今後もこんな基本スタンスでお仕事していきます。

お気づきの方も多いと思いますが、この働き方、めちゃめちゃしんどいです。
全く給料に見合っていません。

でも、仕事というのは、お金を稼ぐと同時に、生涯をかけて何かを成し遂げるためにあります。
責任と実行力はコインの裏表なので、やっぱり行政を選んだ以上、その責務と本懐を全うすることが、ひとりの人間としての矜持なんじゃないかな、と思います。

そしてたまに、そのしんどさコインが裏返って、普通に公務員してたら得られないような、先輩や、後輩や、市民や、民間からの強い信頼関係をもらえたりするので、やっぱりお仕事は面白いなって思います。ぜんぜん給料に反映されないけど。

同じく挑戦する方々は、努々お身体だけをお気をつけ頂くよう、ご注意ください。

出典:銀の匙(作:荒川弘)

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