地方都市を巡る旅@広島市
【2023.11.26の投稿を修正して掲載しています】
このnoteは、まちづくりがテーマなので、ちょくちょく地方都市のお話を投稿します。
まちづくりは、政策知識や法的資格も大切ですが、やっぱり答えは現場にあります。
特に、日本社会全体は有機的につながっているので、色んな地方都市を、この目で見て、歩いて、感じて、人と話して、それで初めて、自分のまちの姿や未来に向けたヒントが見えてきたりします。
というわけで、これまで10年間くらい、地方都市を巡る旅と題して、行ける範囲で各地を見て回り、その特性や空間分析をSNSに投稿してきました。
せっかくなので、アーカイブ化も兼ねて、ときおりこちらに再編集・投稿していきます。
今回は去年訪れた広島市から。
最初に
お仕事の会議で広島市を訪れる機会があったので、時間を見つけて中心部を巡ってみました。
やっぱり知らないまちを、都市構造や空間レイヤーをイメージしながら歩くのはとても楽しいと実感。
スケジュールの許す限り、二時間程度さっくり回ってきました。
結論からいうと、広島市って思った以上にバランスの取れた都会で、いいまちだなと!
人口110万人以上、さすが中国地方の中心都市だなと思いました。やっぱ地区No1は強いですね。
広島市の都心づくり
広島市は、楕円形の都心づくりを目指していて、元々の市街地の中心である「紙屋町・八丁堀地区」と、現在開発中の「広島駅周辺地区」の二大拠点でまちづくりが進んでいます。
この二拠点が2kmちょいで、ちょうど博多と天神のような距離感。よくある、新幹線駅と中心市街地が少し離れている都市構造ですね。
この解決、つまり楕円の中心である二拠点のすみ分けが、なかなか面白そうだと感じました。
地方都市の5つの要素
さて、ケヴィンリンチの都市のイメージではないですが、自分なりに地方都市を歩くときに分解して考える5つの要素があります。
主要駅(新幹線含む)
線:商店街(アーケード)
点:百貨店(老舗)
点:ショッピングセンター(新しめ)
面:オープンスペース(公園・広場・河川)
これに派生して、行政庁舎や観光資源、飲み屋街、風俗街、城郭、バスターミナル、ペデストリアンデッキ、地下街などを肉付けしていきます。
行政庁舎からは舵取りの中心地、飲み屋街からはまちの活力、風俗街や城郭からは歴史的空間配置などが読み取れます(場所の転換が実質上不可なので)。
1 紙屋町・八丁堀地区
まずは、中心市街地である「紙屋町・八丁堀地区」を見て回りました。
1-① 紙屋町交差点
とてもわかりやすいことに紙屋町の交差点が中心。
その北西に隣接してバスセンターやそごう、北東に県庁、南側に大アーケード街が東西並走。
南西に広島お膝元のEDIONビルがあるのも特徴的。
1-② 紙屋町地下街
この交差点、道路上には広島電鉄の路面電車が走り、地下にはシンプルな正方十字形の地下街。
地上は車専用(横断歩道なし)となっており、公共交通・自動車・徒歩の3レイヤーがきれいに整理・共存しています。
1-③ アーケードと路地と広島PARCO
交差点南側のアーケードを東側に進んでいくと、それなりの飲食店や服飾店が立ち並び、脇に伸びる路地はちょいちょい飲み屋街っぽい雰囲気。
突き当りの広島PARCOは、アイストップになると共に、周辺が少し街区や路地がかぎ状や広場風になっていて、風景が少しおしゃれでゆったりとした吉祥寺(言い過ぎ?)のような雰囲気。若者の中心はここかな。
そこを越えると、大通り沿いには三越などの老舗百貨店があり、その裏側の市街地一体は流川の風俗街。
1-④ 平和記念公園と原爆ドーム
一方で、今度は紙屋町交差点から西側に進むと、景色が開けて、川の中州に位置する平和記念公園や資料館と、対岸の原爆ドーム。
先ほどまでいた地元に人たちが集まるゾーンと対比するように、こちらは修学旅行の小学生や外国人観光客がたくさん。
そして、そこから大通り挟んで北側に行くと、広島ゲートパークやグリーンアリーナ。子連れや学生の憩いの場になっていました。
1-⑤ 感想
これらのエリアを一通り歩いて、すこし感動したのが、都市の大切な要素がいい位置・いい距離に集まっているなと。
地方都市というのは、概ね、①交通の結節点に商業要素である②商店街と③百貨店が並ぶところが商業的な中心地となり、そこからさまざまな要素が栄えていくんですが、教科書のように綺麗にそれが成り立っている。
サラリーマンや学生はアーケードや周辺の飲食店で日々友人や同僚と集まり、若者は商店街やPARCOなどで、年配の方々なんかは百貨店で買い物を楽しむ。
買い物帰りの学生や、子連れの家族なんかは、近くの広場や公園でゆっくりし、やわらかく外から来た観光客や修学旅行生と交わる。
そんな観光客らは、平和への祈りを捧げたあと、逆に市街地側に入り名物のお好み焼きや買い物を楽しむ。流川に行く人もいるかも。
市民と観光客、日常と非日常、商業と観光、若者と年配など、色々な要素が隣接する距離で、きちんとゾーニングされていて、素敵だなと。
例えば、服飾系だけ見ても、アーケードやPARCOなんかに、BEAMSやSHIPS、URBAN RESEARCH、UNITED ARROWS、GUなど、全国展開している押さえどころはそこそこ揃っているわけで、中国地方の中心だなというのを、こういうところに感じます。
もっと小さい都市になると、若者は買い物する場所がない=服買う場所がないと、週末市外に出ていかざるを得ない(そしてそちらでお金を落とす)ので。
2 広島駅周辺地区
さらに特徴的なのが、楕円のもう一つの中心である、広島駅周辺。
紙屋町から路面電車で数分。220円で行ける距離です。約2,3km。
もともとは、玄関口としての機能がほとんどだったと思われるこの駅周辺が、今大開発を迎えています。
2-① 再開発と三層構造
駅の周辺では、複数の再開発計画が進み、いくつもの再開発ビル(+タワーマンション)が出来ていました。
ビル内には飲食店や電気店、行政施設などが入り、利便性は向上。その他、元の地権者である市場やパチンコ屋なども共存。
駅周辺の人の流動性は、概ね地下街(例:福岡)かペデストリアンデッキ(例:小倉)が主流。
元々広島は福岡と同じで地下街の文化で、広島駅も地下街や地下広場がありますが、今後はさらにデッキに主軸を置いた三層構造に。
デッキが、駅や周辺の再開発ビルを繋ぎ、市街地やスタジアム方向に緩やかに人を流していく予定。
2-② 駅と路面電車
そして、行政やJR、広島電鉄の協力により、広島駅内に路面電車の駅を作り、よりJRからのアクセスを容易に。
小倉駅のモノレールのように、広島駅のど真ん中空中から路面電車が飛びだします。
そのために、駅周辺の既存路線を廃止して、駅前通りに振り返るという徹底ぶり。そのための土木施設は行政が支援。
駅ビルはより大きくなり、商業施設もがっつり入り、周辺にもホテルがちらほら。
市民はこれから、買い物に行くのに、紙屋町と駅周辺の両方を選べるわけです。そしてそれらを路線振替により所要時間を短縮した路面電車でつなぐ。
また、再開発ビルにタワーマンションが入っているので、居住機能も大幅に追加。郊外に住むか、超都心に住むか、という選択肢ができます。
基本的に自分は再開発もタワマンも賛成派じゃないんですが、きちんと採算が取れ、居住選択肢が増えユーザー属性による住み分けができるなら、ありなんじゃないかと思っています。広島がそうだったらいいな。
まとめ
そういえば、まともに広島市内に来るのは、小6の修学旅行・新採職員時の職場旅行に次いで、3回目。
他に、スノボの帰りに泊まったことはありますが、ほとんど市内で過ごしてないのでノーカウント。
時間が足りなくて新スタジアム周辺回れなかったのがやや心残り。
ちょうど13年ごとに訪れてるので、次来るのは50歳くらいのときかもしれません。
そのときに、広島がどんなまちになってるか、楽しみです。