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圧巻のショスタコーヴィチ!読響×尾高忠明@サントリーホール

読響によるショスタコーヴィチの交響曲第5番は、心を揺さぶる名演でした。辻井伸行さんのピアノ協奏曲も印象的。名曲ぞろいのプログラムを振り返ります。

1. 芥川也寸志《交響管弦楽のための音楽》~日本のオーケストラ作品の傑作~

芥川也寸志の《交響管弦楽のための音楽》は、シャープなリズムと勢いのある旋律が特徴的な作品です。初めて聴きましたが、大変魅力的な曲で、この曲に出会えた事が大きな収穫でした。
尾高忠明さんの指揮は緻密で、楽曲のエネルギーを最大限に引き出していました。

金管セクションが活躍する場面では、音がホールいっぱいに広がり、圧倒的な迫力を生み出していました。打楽器も大活躍でした!

2. ショスタコーヴィチ《ピアノ協奏曲第1番》~辻井伸行さんの鮮やかなタッチ~

ショスタコーヴィチの《ピアノ協奏曲第1番》は、ユーモラスで皮肉を交えた独特な作品です。ピアノと弦楽器に加えて、トランペットが大きな役割を果たす点が特徴的でした。
辻井伸行さんの演奏は、ショスタコーヴィチ特有の表情の変化を見事に表現していました。

トランペットとのアンサンブルは、絶妙な掛け合いが際立ち、音楽のスリルを存分に引き出していました。

終盤のピアノの速いパッセージも、辻井さんは軽やかに、かつ確実に弾きこなし、音楽を最後まで鮮やかにまとめ上げました。演奏後の会場には、大きな拍手が響いていました。何度も何度もカーテンコール。さすが日本を代表する音楽家、素晴らしい演奏でした!

3. ショスタコーヴィチ《交響曲第5番》~第三楽章がもたらした深い感動~

この作品は、当時のソビエト政府の厳しい検閲を乗り越えながらも、作曲家自身の内面の葛藤を音楽に込めた名作です。尾高忠明さんの指揮は、作品の持つドラマ性を的確にとらえ、緊張感あふれる音楽を作り上げていました。

第一楽章:張り詰めた空気感と重厚な響き

静かな導入部から始まり、次第に緊張が高まっていく第一楽章。低弦のうねるような響きが、楽曲の持つ不穏な空気を際立たせていました。金管の咆哮や弦楽器の鋭い旋律が交錯し、壮大な音楽が展開されていきます。

第二楽章:皮肉に満ちた軽妙なワルツ

短いながらも特徴的な第二楽章は、軽妙なワルツのような音楽ですが、その裏にはどこか風刺的な響きが感じられます。木管楽器の表情豊かな演奏が印象的でした。

第三楽章:息をのむような美しさと静けさ

この演奏会で最も感動的だったのが、第三楽章のアダージョでした。弦楽器による深い旋律が心に沁みわたり、ホール全体が静寂に包まれる瞬間が何度も訪れました。

● 弦楽器の柔らかい響きが心を揺さぶる
● クライマックスに向けた音の高まりが圧巻
● 静寂と音楽が織りなす緊張感

尾高さんの指揮は、決して感情的になりすぎず、それでいて内なる熱量をしっかりと伝えるものでした。音楽が次第に高まり、頂点で壮大な響きを奏でた瞬間、会場の空気が一変したように感じました。3楽章こそショスタコーヴィッチが一番言いたかった事が詰まっているのではないか、と私は聴いていて思いました。

この楽章を聴きながら、ショスタコーヴィチが当時どのような想いを込めて作曲したのかを考えずにはいられませんでした。

終楽章:怒涛のクライマックス

そして終楽章。冒頭から炸裂する金管と打楽器が、圧倒的なエネルギーを放ちます。尾高さんはテンポを慎重に設定し、じっくりと音楽を構築していました。

最後のクライマックスでは、読響のアンサンブルが極限まで緊張感を高め、壮大なフィナーレを迎えました。打楽器の強烈な打音が鳴り響いた瞬間、会場は大きな拍手に包まれました。

まとめ

今回の読響の演奏会は、どの曲も素晴らしく、特にショスタコーヴィチの交響曲第5番は圧巻の演奏でした。

● 芥川也寸志《交響管弦楽のための音楽》:シャープなリズムとエネルギーが際立つ名演
● ショスタコーヴィチ《ピアノ協奏曲第1番》:辻井伸行さんの卓越した技術と表現力が光る
● ショスタコーヴィチ《交響曲第5番》:第三楽章の美しさと終楽章のカタルシスが印象的

特に第三楽章の静寂と深い情感には、胸を打たれました。ショスタコーヴィチの音楽は、単なる華やかさではなく、人間の感情の奥深さを映し出します。今回の読響の演奏は、その本質を見事に表現していました。

次回の読響名曲シリーズも、ぜひ楽しみにしたいと思います。

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