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クラシック音楽の名曲を打楽器の視点から聴く⑤ラフマニノフ交響曲第2番 — ティンパニ奏者の視点から見た魅力

ラフマニノフの交響曲第2番は、ロマンティックで情熱的な旋律が特徴の名曲です。アマチュアオケを10年やれば1回はやる曲、といってもいいのでしょうか。私自身は昨年初めてティンパニを演奏しました。アマチュアオケがこぞって取り上げるだけはある、本当に素晴らしい曲ですし、ティンパニ奏者の視点から見ても非常に魅力的な作品です。

1楽章の繰り返しやるのか、という問題も話題になります。私の昨年の演奏ではやりましたが、繰り返さないパターンの方が多いように思います。先日聴いた東大オケはやってませんでしたね。ブラームス交響曲第1番の1楽章も同じ論点があります。1楽章繰り返しやるのは、演奏するほうも、聴く方も、ちょっと長いな、というのが本音でしょうか・・・。中盤近くまできてまた最初に戻るんですから。

それはさておき、この曲には「叩いて楽しい!」と感じる瞬間もあれば、「ここは難しい…!」と感じる場面もあります。今回は、ティンパニ奏者の目線でそのポイントを紹介します。

叩いて楽しい! ティンパニが活躍する場面

1. 第1楽章:迫力あるクレッシェンドとトレモロ

序奏では控えめですが、テンポが速まるとティンパニが曲を引っ張るようになります。
また、低音弦と一緒にズシンと響くアクセントの連打も、ティンパニの存在感を発揮できるポイントです。
そして、一番最後。スコアではチェロ・コントラバスで、低いEの音を演奏しますが、指揮者によっては、ティンパニがその最後の一打をコントラバスと一緒に行う場合もあります。私の演奏ではティンパニがたたきましたが、チェロ・コントラバスの方にとっては、どうなんでしょうか。大きな見せ場をティンパニにほぼ持って行かれるんですから・・・。

2. 第2楽章:跳ねるリズムとドライブ感

軽快なスケルツォでは、ティンパニがリズムの推進力を担います。
木管楽器と掛け合いながら、短い音をリズミカルに刻む場面は、まるで音楽と対話しているようで楽しい!

3. 第4楽章:エネルギー全開のフィナーレ

この楽章こそ、ティンパニの本領発揮!
冒頭から力強く刻むリズムは、オーケストラ全体を前に進める推進力になります。
クライマックスでは、クレッシェンドでのロールでオケ全体を盛り上げます。オーケストラの熱気と一体になれる瞬間です。
最後の最後までティンパニが鳴り響くので、全力を出し切る気持ちで演奏できるのが最高に楽しいポイントです。

ここが難しい! ティンパニ奏者の腕が試される場面

1. 第1楽章:速いテンポでのトレモロとダイナミクスの変化

私は1楽章がティンパニは一番難しいと思いました。
第1楽章の後半では、速いテンポの中でトレモロを駆使しながら、急激なダイナミクスの変化に対応する必要があります。
ここでは、次のフレーズにつながるような流れを意識しなければなりません。ppで結構激しい動きをしてますが、やっている大変さの割に、ほとんど聴衆には聞こえず、正直費用対効果が悪い・・・。
また、ティンパニの音がオーケストラの響きに埋もれず、かつ主張しすぎないバランスを取るのが難しいポイントです。

3. 第4楽章:連打の正確さと体力勝負

速いテンポの中で、正確に連打を刻み続けるには、腕の力だけでなく、リラックスした演奏が求められます。
特に終盤では、全力で打ち込む場面が続くので、最後まで集中力を切らさず、テンポが乱れないようにするのが大変です。

そういえば、一番有名な3楽章に触れてませんでした。ティンパニはほぼ出番なし。この素晴らしい旋律を舞台上で聴ける幸せを感じながら、出番を忘れないようにすることがティンパニストにとって一番大切な??役割です。

まとめ


ラフマニノフの交響曲第2番のティンパニは、
・第1楽章では、ドラマチックなクレッシェンドやトレモロが楽しい
・第2楽章では、跳ねるリズムとオーケストラとの掛け合いが魅力
・第3楽章では、旋律に聴き惚れて出番を忘れない!
・第4楽章では、全力で叩ける爽快感がある一方、体力勝負な部分も


演奏するたびに新しい発見があり、ティンパニの魅力が存分に味わえる作品です。
聴くときも、ティンパニの音の動きや役割に注目すると、より一層この曲の面白さが感じられるかもしれません!

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