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咳の原因 急性鼻副鼻腔炎の診断と治療

Randomised, double blind, placebo controlled trial of penicillin V
and amoxycillin in treatment of acute sinus infections in adults

bmj00554-0019.pdf (nih.gov)

BMJ. 1996 Aug 10; 313(7053): 325–329.

咳が主訴で受診される方の原因のひとつに急性鼻副鼻腔炎があります。
抗生剤治療についての古い論文を読んでみました。

<目的>
成人の急性副鼻腔炎の治療において、ペニシリンVおよびアモキシシリンとプラセボの有効性を比較する。

<デザイン>
無作為化二重盲検プラセボ比較試験。

<対象>
CTで診断された急性副鼻腔炎130人。

<主要評価項目>
①治療開始3日目および10日目の症状
②ベースラインと10日目の重症度スコアの差
③ベースラインと10日目のCTによるスコアの差
④副鼻腔炎の持続期間

<結果>
・抗生剤(アモキシシリン、ペニシリンV)群は、プラセボ群よりも有意に早く改善した。
・10日目の時点で、抗生剤治療を受けた71人(86%)は、プラセボ群の25人(57%)と比較して、改善したと主観的に評価した。
・10日目の時点で臨床的重症度スコアの平均の低下は、ペニシリンV群で5.4(95%CI;5.0〜5.8)、アモキシシリン群で5.5(95%CI;4.9〜6.0)、プラセボ群で3.4(95%CI;2.8〜4.0)であった。
・CTで最も改善した患者数(割合)は、プラセボ群が10/44人(23%)に対し、抗生剤群では31/83人(37%)であった。
・副鼻腔炎の持続期間中央値はアモキシシリン群で9日、ペニシリンV群で11日、プラセボ群で17日であった。

<結語>
急性副鼻腔炎の治療において、抗生剤(ペニシリンVとアモキシシリン)はプラセボよりも有意に有効である。


<感想>
急性鼻副鼻腔炎の診療は、鼻炎や咳がなかなか改善せず長期化する”10 days mark"、あるいは症状が増悪する”double sickening”といわれる経過があれば、ウイルス性ではなく細菌性を考慮し抗生剤を検討します。
さらに重症度評価を行い、中等度以上は抗生剤を処方します。
重症度評価というのは、①鼻漏、②顔面痛・圧迫感、③鼻腔所見からスコアリングするのですが、簡単に言うと中等度~重症は程度がひどいということです。当院は鼻腔の観察ができないため、程度がひどいと判断した場合はCTで代用することがあります。

細菌性の場合、原因菌はS. pneumoniaとH. influenzaeがそれぞれ30%、Moraxella catarrhalisが20%です。
教科書的にはAMPC1500mg/日、5日間で治療し、改善がない場合はニューキノロン等のほかの選択肢を検討します。S. pneumoniaにはPRSPがいるとのことですが、肺炎球菌髄膜炎と異なり、CAP治療のようにAMPCで治療できるのではないでしょうか。
AMPCの反応性が不良の場合、ペニシリン系が無効なBLNAR、β-lactamaseを持つBLPARやMoraxella catarrhalisが原因かもしれません。
AMPC無効に備えセファロスポリン(セファレキシン)、フルオロキノロンなど他の選択肢を用意しておくとよいでしょう。

個人的には、初回からCVA/AMPCで加療をすれば改善率があがるのではないかと考えましたが、いかがでしょうか。
クリニックを開業してすぐの時期に、自分が急性鼻副鼻腔炎になり保存治療→改善せず、AMPC内服→すぐに治癒、を経験した身としては、抗生剤の濫用・過剰投与にならないように気を付けながら、速く治すことも大事だなと思いました。

今回の論文は1996年と古いものですが、広く引用されていたので読んでみました。AMPC単独治療は保存より早く治るというものです。

今回は耳鼻科領域の疾患についての復習でした。

愛知県春日井市
かすがい内科 咳と頭痛と生活習慣病
院長 山下 有己


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