陰暦における閏年~今年は2月が2回来る~
韓国ではお正月(설날)や秋夕(추석)などの名節を旧暦(太陰太陽暦のことで、しばしば陰暦(음력)と呼ばれる)で祝うため、ほとんどの手帳やカレンダーには陰暦が記載されています。
手元にある手帳に目を落とすと、3月22日には「윤2.1」という文字が。
윤(ユン)とは閏月の「閏(うるう)」を韓国語読みしたもので、閏月の2月1日という意味になります。ちなみに、昨日は陰暦で2月30日でした。
そう、今年の陰暦は2月が2度やって来るのです。
◆なぜ閏月があるのか
閏月(윤달)というとあまり馴染みのない言葉ですが、4年に1度やって来る閏年と同じように、数年に1度加えられる月だと思えば分かりやすいと思います。
そもそも、なぜ閏月があるのでしょうか。
現在世界各国で使用されているグレゴリオ暦に代表される太陽暦(以下「陽暦(양력)」)は、地球が太陽を1周する期間の365日を1年として、それを12か月に分けることで作られました。
一方、陰暦は月の満ち欠けを基準とした暦です。1か月は約29.53日で1年は354~355日となるため、1年の長さが陽暦よりも約11日短くなります。
このずれを補正するために設けているのが閏月で、閏月のある閏年は1年が13か月になります。
◆何月が閏月になるかは決まっていない
上記からも分かる通り、閏月は2~3年おきにやって来ます。期間はどれも29日ですが、どの月が閏月になるかは年によって異なります。
陽暦における閏年は2月29日の1日が増えるだけと考えると、陰暦の閏月はなかなかややこしそうです。
◆閏月を決める方法
それでは、どうやって閏月を決めているのでしょうか。
閏年や閏月を決める方法を置閏法(치윤법)または閏法(윤법)と言います。置閏法は時代よっても異なるそうですが、現行では二十四節気(이십사절기)を基準とした「無中置閏法(무중치윤법)」が採用されています。
無中置閏法とは、二十四節気の「中気」がない月を閏月とする置閏法です。
二十四節気は、地球を中心とした場合の太陽の見掛け上の通り道である「黄道」を24等分した季節の移り変わりを表す暦で、古代中国で作られました。1年を春夏秋冬の四季に分け、それぞれの季節をさらに6等分します。昨日3月21日は立春でしたが、これも二十四節気のひとつです。また、こうして分割された季節は交互に「節気」と「中気」に区分されます。
既出の通り陰暦の1か月は約29.53日なので、基本的には毎月節気と中気がひとつずつ配置されることになります。しかし2~3年に1度の割合で節気はあるが中気はない月が発生することがあり、この月が前の月の閏年となります。
例えば3月の節気と中気はそれぞれ清明と穀雨ですが、今年2023年の場合本来3月となるはずの月には「穀雨」が含まれていません。そのため前の月(今回の場合は2月)をもう一度置いて、その後に穀雨が配置された3月が来ることになるのです。
つまり陰暦における閏月とは、単に陽暦とのずれを修正するだけでなく、季節とのずれを正すための調整ともいえるのです。なかなか面白いですね。
◆神様からの監視を逃れる特別な月
閏月は「余分の月(여벌달)」「空月(공달)」または「おまけの月(덤달)」と呼ばれたりもします。
非常に興味深いのは、普段とは異なるタダでもらった月という意味から、閏月は「天と地の神様が人間に対する監視を休む期間」とされ「無礼な行動をしても神の罰を免れる」と言われているそうです。そのためこの期間に、普段は縁起が悪くて敬遠している行事(お墓の移動や親の死装束の準備など)をすると良いとされています。
とはいっても、ソウルで生活をしていて、実際にそのような風習を見聞きすることはほぼありません。ただ日本でも冠婚葬祭の日付には注意を払ったりしますし、それと同じような感覚なのかなと思ったりします。