ガタンゴトン、ガタンゴトン……プシューン。
通り過ぎる路面電車のその先に、ベルギー王立美術館はありました。開館5分前に到着しましたが、入り口には行列が――。
ベルギー王立美術館
王立美術館の始まりは200年以上前に遡ります。
1794年、フランス革命戦争の末にベルギーはフランスに占領されますが、その際に膨大な数の美術品を収奪されます。当時フランスはヨーロッパ諸国から略奪した多くの美術品をルーブル宮殿に所蔵していましたが、いよいよ入りきらなくなったため、1801年にナポレオンがフランスの支配下にあった15の地方都市(※)に美術館を設立し、割譲する政令を発布します。そして1803年、王立美術館はブリュッセル美術館として開館しました。
王立美術館はオールドマスターズ、世紀末、マグリットの3つの美術館から構成されていますが、今回はピーテル・ブリューゲルやピーテル・パウル・ルーベンスなどオールドマスターズの中から個人的に好きだった作品を中心にご紹介したいと思います。
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Dutch School
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Old Masters
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◆ピーテル・ブリューゲル
ピーテル・ブリューゲル(※)(1525/1530年頃-1569年)はネーデルランドのフランドル(現在のベルギー)に生まれたルネサンス期の画家・版画家で、アントワープとブリュッセルで活動しました。
ブリューゲルに関して現存する資料は少なく、人生についても詳しいことは分かっていませんが、彼の才能は長男・ピーテルや次男・ヤンをはじめ、その後150年に渡って子孫に受け継がれます。
ブリューゲルといえば、写実的な山岳風景画や農民の生活に焦点を当てた風俗画が有名です。また、初期フランドル派のヒエロニムス・ボスに影響を受けたことから奇怪かつ幻想的な作品も多数残しています。
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◆ピーテル・パウル・ルーベンス
ピーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640)はバロック美術を代表するフランドル派の画家です。
1600年~1608年までイタリアで修業し、アントワープに戻ってからは工房を構えて数々の大作を生み出した一方、当時フランドルを統治していた大公アルブレヒト7世と大公妃のスペイン王女・イザベルの宮廷画家も務めます。また、7か国語を駆使したルーベンスは画家としてだけでなく、外交官としても活躍しました。
美術史に多大な影響を与え続けるルーベンス。
彼の作品でまず驚くのはスケールの大きさです。強烈な明暗対比と豊かな色彩とも相まって、非常に力強くダイナミック。劇的な印象を与えます。
朱色の部屋に飾られた巨大な宗教画たちには、ただただ圧倒されました。
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◆ジャック=ルイ・ダヴィッド《マラーの死》
実は今回、王立美術館で最も観たいと思っていたのが《マラーの死》です。
《サン=ベルナール峠を越えるボナパルト》で有名なジャック=ルイ・ダヴィッドの作品で、1973年にフランス革命の指導者ジャン=ポール・マラーが暗殺された場面を描いています。当時のマラーは持病の皮膚病が悪化し、1日のほとんどの時間を入浴に充てていました。そこを面会に来たジロンド派支持者のシャルロット・コルデーによって襲われます。
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美術館を観終えての感想は――