【感想】イースターエッグ映画としては満点だけどホラー映画としては赤点な『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』【ネタバレ】
概要
あらすじ
うむむ……
これはぼくが、ゲームがリリースされた当時からのファンだから言うんだけど、この映画はクソだ。ファン映画としてズレてるし、ホラー作品としてなら目も当てられないクソだ。
……なので、ここではこの映画が如何に、そしてなぜクソなのかを説明する。かーーなーーりーーのネタバレを含むが、そんなものを気にして観るような素晴らしい映画では全くないので、気にせずに読んで欲しい。
不必要に思える意味深な設定
シリーズのファンなら分かると思うけれど、この作品群最大の魅力は不気味な設定にある。寧ろ、それが全てと言っても良い。インディーズゲームなだけあってゲーム性はとてもシンプルで、その裏に隠された意外なストーリーが人々の心を掴んだ。
映画化する上で、勿論それらの設定も踏襲されているが、正直に言って、使い方が下手すぎる。例えば、アニマトロニクスの中に子供の腐敗した遺体が未だ隠されている、という設定だが、明かすタイミングも、観客に衝撃を与える為の準備も、何もかもが最悪だ。
この手の設定には、明るい場面との対比が必要じゃないか? 観客には「子供と遊んでいたあの明るいシーンでも……」という驚き方を期待すべきであって「WOW!ロボットの中に隠されていたなんて!なんてクールな設定なんだ!」なんて反応をする訳が無い。舞台を廃墟にしたのが仇になったな。気味の悪さを視覚的に演出したかったのだろうが、夜間警備とのコントラストを考えると、営業中にすべきだった。
そして、あの黒幕の娘である警察官。あいつはなんだ? この、唯の話の盛り上げ役に、こんな素晴らしいステータスを与えて良かったのか? 主人公にこの役目を負わせ、中盤から終盤にかけて伏線を貼り、ラストシーンで確信を持たせる。こういう使い方もあるだろうに、なぜ使い潰すような真似をしたのか、甚だ疑問だね。
が、最も酷かったのはそこじゃあない。黒幕たるウィリアム・アフトンの扱い方だ。こいつは、原作では諸悪の根源として、FNaF3で満を持しての登場だった。それも、通常のプレイでは悟られないような方法でね。決してこの映画のような、どこかで見た殺人鬼では無い。
そう。映画版のアフトンには神秘性の欠けらも感じないんだ。例の警察官から唐突に元凶として名前を出され、お約束の如く唐突に登場する。デウス・エクス・マキナだ。ファンに対してであれば「ここで出るのか!」という反応が期待できるかもしれない。だが、それ以外にはどうだ? この、何のバックボーンも示されていない男に、ラスボスの威厳なんてものは感じないだろう。
映画化にあたってのお涙頂戴化
この映画最大の問題がこれだ。映画化にあたって、FNaF本来の評価点を無視して、まるでアサイラムが作ったようなハートフルストーリーへと改変してしまっている。
確かに、あのゲーム性でホラー映画を作るのは困難を極めただろう。だが、それならシチュエーションホラーとして振り切るべきだったんじゃ無いのか? 主人公の人間性に対するミスリードが素晴らしかったのは認めるが、それでも、あの家族関係の展開は要らなかったように思える。
個人的な望みを言えば、表のプロットは単純に、殆ど警備室のみで完結していて欲しかった。そこから、室内にある資料やら何やらで、段々と黒幕や主人公の正体(原作には"主人公の正体と目的が不明"という謎が存在する)、アニマトロニクスの詳細が判明する。そういう映画を望んでいた。Netflixで星3評価を受けていそうな、ありふれた人間ドラマなんてものを、FNaFで観たくはなかった。
FNaFファンとしても、映画ファンとしても、心からそう思う。
ホラー製作者としてのプライドを持って欲しかった
この映画には、イースターエッグは大量にあった。ガッカリしなかった、観てよかったと思っている自分がいることも確かだ。
けれど、この映画を観て、シリーズを追いかけるのは辞めることにしたよ。それ程に失望した。それは8年も待たされてこんな凡作を出されたからじゃない。ファンに媚びたからだ。
「徹底的にファンのための映画にする」とは原作者の言だが、餌をやって喜ばせるのと、作品の魅力で楽しませるのは違う。そもそも、それ以前の問題として、ホラー製作者としてのプライドを持っていて欲しかった。
FNaFは一大コミュニティを築き上げた、素晴らしいホラー作品なんじゃあ無かったのか?
ゲーム第一作目のような情熱を、この映画でも感じたかった。40点のハリウッドホラーを観るより、マイナス100点のインディーズホラーを観たかった。それがFNaFの魅力だろ?