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2020年6月の記事一覧

2歳語辞典

3歳になった息子へ おめでとう。とてもうれしい。そして、とてもさみしい。いつか忘れてしまわないように。2歳のきみがよく使っていた不思議な言葉たちをここにまとめておく。 父より 01. 「ぞおーう」 きみはゾウの鳴き真似をするときに「ぱおーん!」ではなく「ぞおーう!」と叫んだ。すこし自己顕示欲が強すぎるゾウなのかもしれない。 02. 「ごみだこ」 きみはゴミ箱を「ごみだこ」と呼んだ。そのたびにゴミ箱が部屋のすみっこで「タコじゃないんですけど」と口をタコのようにとがらせて

チューニングして聴こえるもの

どういうご縁か、アメリカのユタ州という、ほとんどの日本人には全く知名度のないところに住んで15年を越えてしまった。住めば都、とはいうが、今では一時帰国を終えてこの土地に足を降ろすとホッとしたりするほどだ。沢山の日本とは違う魅力もある。 でも私がここを愛する理由は国立公園(NP)に代表される大陸の自然かもしれないと思っている。その存在感は圧倒的だ。これまで訪れた沢山の場所、その何処(いずこ)でも大陸の大地、その大地に表情を与える水、それらに育まれた緑と大空が織りなす大パノラマ

これからもずっと、変わらない夢がある

晴れた日は散歩をする。 この日は、公共料金や家賃を払いに行くついでに駅前まで歩いて お気に入りのカフェの前を通った。 しばらく店内営業をお休みしていて、 テイクアウトのみの営業なので、いつもスタッフの誰かが外に立っている。 今日も見慣れた顔を見つけて、ほっとしながら、 わたしは、吸い込まれるように声をかけた。 頼んだ商品を待っているあいだ、他愛もない話をする。 今日は見知った顔の他に、もうひとり出てきて 「うちの若い子!会ったことありましたっけ?」と尋ねられた。 人の顔を

「エモい」にはついていけないけれど。

高校卒業後からずっと文通をしている友だちとオンライン飲み会をしていたところ、最近はやりの形容詞「エモい」をめぐって盛り上がった。「エモーショナル」を形容詞化した、感情が動いた時に使う言葉らしい。 だからこの言葉をもってすれば、「泣ける文章」「懐かしい写真」「共感を呼ぶ歌詞」、このすべてが「エモい」の一言で片づく、らしい。「らしい」というのは私がすでにその言葉を使うには違和感を覚えるほど自分の用いる語彙が凝り固まってしまっているからで、私自身は使ったことがないからだ。 感情が動

空を飛んだ味噌

大学生の頃、研修でドイツへ行く機会があった。一週間のその研修は、現地の病院や老人ホームを見て回る、というもので、観光できる自由時間も多く組み込まれていた。大学生にもなると自由時間の過ごし方は私たちに一任されていて、集合時間に間に合いさえすればどこへ行っても構わない、と言われていた。 現地でどうしても会いたい友達がいた。彼女はドイツに留学中で、ホームステイをしながら戦時中のドイツの歴史を学んでいる。スケジュールが固まってすぐに、メールをした。 「今度研修でドイツに行くよ!時