No.13 雲 2023年9月
「白雲に心を乗せてゆくらくら秋の海原思ひわたらむ」怪談・奇談小説『 雨月物語』 の著者として有名な上田秋成(1734 18091809)が詠んだ歌です。江戸中期の歌とはとても思えないような、秋の澄み渡る情景と、作者の心象風景が見事にマッチした歌だと思いませんか?「ゆくらくら」とは、「ゆっくりゆっくり」の意です。日本人にとって「秋」の季節から連想する一番の光景と言えば、やはり青く広い空と、そこに浮かぶ白い雲ではないでしょうか?澄み渡る透徹さこそ、秋の新骨頂であり、それに繋がる様々なイメージを古来呼び起こしてきました。「スポーツの秋」「芸術の秋」「食欲の秋」、そして「読書の秋」「学問の秋」であります。なぜ「読書」や「学問」と結びつくのでしょうか?暑くて湿度が高い夏が過ぎ、気温も下がり、適度に風も吹き、みずみずしく透き通った秋という季節や空気感の中に身を置くと、気分も爽やかで落ち着き、集中力も沸き、深い空を仰ぐと、どこまでも真・善・美を追求したくなる様な心持にさせてくれます。また、紺碧の空と漂う雲は、我々の心に浮かぶ夢や思いを象徴し、更に人間を超えた存在
の尊さを想起させてくれます。秋という季節は、身が自ずから引き締まり、挑戦の心も沸くのです。
我がライフシフト大学でも、9 月16 日(土)に第9 期の入学式を迎えました。1 年に2 期、1 期が約5 ケ月のペースで入学~卒業が繰り返されますので、ちょうど開学以来4 年が経過し、5 年目に入ったわけです。第9 期も30 代から60 代まで年齢を超え、会社・職種・業種を超えた幅広い受講生が、これから自らのキャリアと自らのライフについて、おそらく生きてきた中で最も時間を割いて向き合うことになります。
それはとても楽しく刺激的な時間であります。ミドル シニア、即ち中高齢者
の皆さんに私が期待することを一言で表すとすると、年齢で括る「中高齢者」ではなく、「智勇幸齢者」(ちゆうこうれいしゃ)になって欲しいということです。
智恵と勇気を併せ持ち自らの幸福と、他人(ひと)の幸福の双方の実現のた
めに行動する、幸せに齢(よわい)を刻む人間を目指して欲しいと思います。