No.28 切磋琢磨 2024年 12月
「切(せっ)するがごとく、磋(さ)するがごとく、琢(たく)するがごとく、磨(ま)するがごとく」(四書五経のうちの「詩経」の衛風・淇奥(きいく)篇より)即ち、それぞれ骨や角や石や玉を磨き上げる加工法の如く、学問や人徳を磨き上げること、転じて仲間同士が互いに励まし合い、磨き合い、向上することです。 ライフシフト大学が普通の大学と異なる点や一企業内における研修の場と異なるのはまさにこの点であり、利害関係も競争関係もなく、育った企業/組織文化や風土や価値観も異なる社会人ミドル/シニアの学生同士が、互いにリスペクトしつつ、互いにフィードバックやフィードフォワードを与え合う場であります。 フィードフォワードはあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、過去や現在にとらわれず将来に向けて行動を促すために、未来志向でメンバーの改善点や目標達成に向けたアイデアを話し合う取り組みです。 毎回の講義やプログラムの中に盛り込まれた越境体験型テーマ演習の中でグループワークの時間をふんだんに持つことにより、フィードフォワード的な意識と行動が現われてくるのです。 ということはこれらは足を引っ張り合ったり、切ったり・削ったり・(角を)矯めてしまうのとは真反対で、啓いたり、照らしたり、伸ばしたり、促したりするわけですから、私はここに造語として、彫刻型の『切磋琢磨』ではなく、壁画型の『啓照伸促』(けいしょうしんそく)を唱えたいと思います。 ボーダーや制約が無く、何度でも上塗りや書き換えのできる未来に向けての自分を造形していって欲しいと願っています。 そのような思いを込めた「啓照伸促」の場作りが我が課題です。
私は歴史研究、都市研究に興味がありますので、人間の成長性や多様性に関心があるのと同じくらい、時代時代の多様性の変遷や都市の多様性と発展性に興味を持っています。 街は生きており、文化を内在し、周辺と影響・補完し合いながら発展します。双子の研究が人間研究の恰好の素材であるように、とりわけツインシティへの好奇心は尽きません。 日本で言ったら、福岡(武士の町福岡と商人の町博多)、横浜(宿場町の神奈川と開港地である横浜)、米国で言うとミシシッピ川を挟んで双生児のように発展したセントポールとミネアポリス(MLBのミネソタ・ツインズの本拠地)などの街を歩き、探訪してきました。 今年の夏ハンガリーの首都であるブダペストを訪問する機会があり、ドナウ川西の城・王宮のあったブダと東の行政・商業地区のペストを見て回りました。 ブダペストは奥が深く、再訪問しなければいけないというのが結論です。 しかし、次に訪れた時にはもう多くの変貌があるでしょう。 人間以上に変化のスピードが速いのが実は都市なのです。 都市もまた切磋琢磨・啓照伸促を遂げていくのです。
※写真は、ブダペストのドナウ川に架かる鎖橋(ブダとペシュトを繋ぐ)筆者撮影