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抱えきれない現実。神様は夫に何を求めたのだろう...一生現役の理学療法士でいることがポリシーだった。
プロの理学療法士が脳出血を発症した。
現実なのだろうか。認めたくはなかった。
今まで夫が見てきたものそのものが、目の前で夫に降りかかっている。
たくさんの奇跡を起こしてきた。一生歩けないと宣告された人をたくさん救ってきた。神の手だった。
「触っていると手が感じるんだよ。あ、動き出すって。経験と感覚的なものだから教えられないんだよ」
毎晩たくさんの話を眠くなるまでしてきた。夫のことは何でも分かっていたし、何でもしてあげたいという気持ちもたくさん持っている。
少なからずリハビリのこともたくさん....たくさん聞いて、知っていることもたくさんある。
「お前は頭が悪いからな(笑)」
いつも言われていたけど、その通りだった。
本人がなってしまったらどうしたらいいかなど、考えも至らなかった。
もし私が倒れたら、すっかり治してもらっていたに違いない。知識のない私は経験のない手で、ただただ一生懸命さすることしかできませんでした。
それでも医学的に解明できない奇跡が起きて戻ってきてくれた夫。ここからまた手探りで新しい人生を2人で作っていきたい。
これから乗り越えていく大きな壁。
夫は自分の名前を....ドロリゲスと答えた。