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米中はなぜ対立するのか② マネーが倫理を破壊する
第一回からの続きです。
マネーが倫理を破壊する
21世紀に入り、米国発の金融危機を招いたことで、人々は新たな時代に直面せざるを得なくなりました。
マルクス主義経済学では、金融資本は帝国主義的な性質を持つ、としています。
「銀行ファシズム」や「金融ファシズム」と言えるような状況がつくりだされます。
2005年から約10年間にわたり、私たちは発展途上国の思想家たちと交流を続け、彼らに警告してきました。
金融資本主義では「儲けが正義」となります。
「悪をもって悪を制す」という状況に陥り、どちらがより悪質かを競うかのようなメカニズムが形成されます。
このしくみによって、人々の価値観や倫理観が変化し始めるのです。
人々は善行や徳を基準にして生きるのではなく、短期間で巨万の富を得た者たちを手本にし始めます。
それらの人物を「勝ち組」として美化し、立志伝が出回ります。
「努力すれば誰でも成功する」と謳いますが、実際に努力して成功する人がどれほどいるでしょうか?
こうして、困難な現実に直面して、投機や詐欺に手を染める人々があらわれます。
社会全体がそうした方向へと向かっていくのです。
中国の農村の例を紹介します。
村全体で偽造を行う「偽造村」、密輸を行う「密輸村」、詐欺を行う「詐欺村」が大量に発生しています。
少数の人々が病院を買収して、高額な検査や薬で患者からお金を取り、その利益を投資家の配当に回す事例もあらわれています。
本来、患者の命を救い、病を癒すべき病院が、収益だけを追求するようになれば、社会は倫理感を失って崩壊へと向かうのではないでしょうか。
これが、短期的な利益を追求する「金融ファシズム」が社会の倫理観を損ねるということです。
米中対立の本質は金融
皆さんに認識してほしいことがあります。
世界最大の発展途上国であり、産業生産量でも最大の中国が、金融資本に転換を始めました。
米・中の対立や衝突が生じているのは、このためなのです。
これが、私たちが21世紀に直面している現状の正体です。
皆さんはこの問題に注意を払って下さい。
そして、認識をタイムリーに更新していって下さい。
20世紀の教科書ですらもはや時代遅れです。
私たちが経済学を学ぶ際、最初に出てくるのはアダム・スミスです。
ウィリアム・ペティまでさかのぼることもあります。
これは一体いつの時代の話でしょうか?
21世紀に入り、フランスのトマ・ピケティが登場します。
彼は資本主義と金融資本を新たな視点で分析しています。
中国でも評判をよび、何度か中国にも招かれました。
しかし、中国が金融資本のグローバル競争に力を入れ始めると、ピケティの分析がほとんど忘れ去られてしまったのは、嘆かわしいことです。
第三回に続く