みんな大好き中二病の中国姓(複姓)
これまで書いた中国姓の記事を読むと分かると思う、日本と中国では中国姓に対するイメージは結構違う。しかし、日中で価値観を共有できる中二病の姓がある。それは「複姓」だ。
歴史上に実在する人物名や有名作品のキャラクター名などの具体的な例も挙げている。参考にして欲しい。性別の分かり辛い人物には性別も書いておいた。
ちなみに、今回紹介する複姓は稀姓ではあるものの現代でも存在している場合が多い。
漢民族の複姓
端木
(Duan1Mu4:ダンムー)タンボク
孔子の弟子、端木賜(子貢)が有名であり始祖と言われている。とても良く使われる複姓で、ジャンルを問わず、老若男女問わずよく使われる。
創作では『仙逆』の端木極、『秦時明月』の端木蓉(女性)などがいる。
上官
(Shang4Guan4:※日本人には発音できません)ジョウカン
歴史上では漢の上官桀、唐の上官婉児などが有名。上官婉児の影響なのか、女性キャラの割合が高い。女性向け小説に使われることが多いよう。
南宮
(Nan2Gong1:ナンゴン※ゴンのンは弱めに)ナンキュウ
歴史上では周の南宮适(括)、孔子の弟子の南宮适(括)(子容)、春秋の南宮長万が有名。創作では『凡人修仙伝』の南宮婉など。こちらも、女性キャラの割合が高い。
令狐
(Ling2Hu2:リンフー)レイコ
歴史上では唐の時代にそれなりに有名な人はいるけれども、たぶん現代中国の政治家一族の方が有名。創作では金庸の小説の主人公令狐冲の印象が強すぎるためか、他の作品では複姓のネタ切れにならないと出てこない。
百里
(Bai3Li3:バイリー)ヒャクリ
歴史上では秦(春秋)の百里奚が有名で始祖でもある。人気ゲームの古剣奇譚の主人公百里屠蘇が有名。そのためかやや男性キャラの割合が高い。
司空
(Si1Kong1:スーコン※ンは弱めに)シクウ
官職名が由来。唐の司空図が有名。創作では『少年歌行』&『少年白馬酔春風』の司空長風やその娘の司空千落など。男女両方に使われる。
司徒
(Si1Tu2:スートゥ)シト
官職名が由来。唐の時代に有名な人物はいる。創作では『仙逆』の司徒南(男性)など。男女両方に使われる。
淳于
(Chun2Yu2:※日本人には発音できません)ジュンウ
戦国の淳于髠が有名。三国志が好きな人なら淳于瓊も知っていると思う。ちょくちょく武侠や仙侠物で見かける。
澹台
(Tan2Tai2:タンタイ)タンダイ
孔子の弟子、澹台滅明が有名。あまりにも澹台滅明の名前が強すぎて梁羽生の小説でそのまま澹台滅明という名前の人物が登場している。澹台滅明に名前の強さで勝てる自信があるのなら使ってもいいんじゃないかな。(※関係なくよく使われています)
鐘離
(Zhong1Li2:※日本人には発音できません)ショウリ
秦末の鐘離眜や漢鐘離こと鐘離権が有名である。鐘離権は仙人として有名なので、やや仙人めいた人物に使われている。※原神の検索汚染のため、ちょっと調べきれなかった。
濮陽
(Pu2Yang2:プーヤン※ンは弱めに)ボクヨウ
地名が由来。武侠や仙侠物で割とよく見かける。男女両方に使われる。
たまに見かける複姓
・公冶(コウヤ) 孔子の弟子に公冶長という人がいる。
・公孫(コウソン) 三国志でお馴染み公孫瓚などがいる。
・中行(チュウコウ) 晋の六卿の一人の中行偃が始祖。有名な宦官(しかも奸臣)の中行説(エツと読む)がいるため、ちょっと漢代っぽくなるかもしれない。
・東方(トウホウ) 漢の東方朔が有名。金庸の作品で有名な東方不敗は東方姓なのかどうかは不明。たぶん号だと思う。
・申屠(シント) 漢の申屠嘉が有名。屠るは中二。
・諸葛(ショカツ) とても良くつかわれるのだけれども、どう頑張っても諸葛亮の関係者っぽくなる。
他にも、第五、公斂、士孫、司馬、太史、東郭、西門、皇甫、漆雕、聞人、軒轅などが使われているのを見たことがある。
有名だけどあまり使われない複姓
・欧陽(オウヨウ) 全く使われないわけではないんだけれども、複姓の中では一番人口が多く、金庸作品に登場する悪役欧陽鋒のイメージが強すぎるため、あまり使われない。
・夏侯(カコウ) 三国志っぽさが強すぎる。キャラクターではなく芸名やペンネームなどで見る。
漢民族以外の複姓
使われるのは少数民族のキャラとは限らない。当たり前だけれど、歴史物に登場する場合が多い。
・独孤(ドッコ) (Du2Gu1:ドゥグー)
匈奴&鮮卑の姓なんだけれども、ちょっと色々複雑な事情もある(漢民族で名乗っていた人がいる)。歴史上有名なのは独孤信や娘の独孤伽羅などで、創作では金庸の作品に登場する独孤求敗などが有名。
字面がとても強いので、とても好まれていて、民族や登場するジャンル関係なくよく使われていて、その中でも主役か重要キャラにしか使われない。あまり女性キャラには使われないかもしれない。(独孤姓のジジイの孫娘には使われていた)
・慕容(ボヨウ) よく使われる。歴史を舞台にした武侠ものに多い。現代にもそれなりにいるよう。
・納蘭(ノウラン) 中国語的に響きが良い(Na4Lan2:ナァラン)ため、ファンタジーなどで民族関係なく使われる。創作では『闘破蒼穹』の納蘭嫣然など。
・宇文(ウブン) 隋~初唐の歴史物っぽい雰囲気になる。
・拓跋(タクバツ) 歴史物に多い。
・完顔(カンガン) 歴史物に多い。漢民族でも名乗った例がある。
・耶律(ヤリツ) 歴史物に多い。
なお、耶律姓のほとんどが元の時代には漢姓である劉姓などに改姓しているそう。他の姓も改姓していることが多く、現代では稀姓だったり、存在していない場合もある。
雑にジャンル関係なくよく使われるのは独孤か納蘭だと思う。次に長老の姓などで慕容をよく見る。
どのように使われるのか
主要キャラの場合
複姓であること自体が強そうなので、名はシンプルでいい。中二っぽさを強調したい場合は名もカッコ良く中二っぽくすると良い。例としては『不死不滅』の主人公独孤敗天が挙げられる。中国でもすごい中二病の名前だと言われているぞ。中二っぽい名前については「みんな大好き中二病の中国名」で解説する。
サブキャラ&モブキャラ
サブキャラや名有りモブなどは、名は男性ならば山や雲などのシンプル系にするか、無敵や覇天みたいなちょっと頭の悪そうな大仰な名前にするとよい。
名を考えるのが面倒ならば、長老や将軍などの地位を姓の後に付けてごまかそう。
女性はメインキャラ以外で使うのはやめた方がいい。
その他
夏侯姓のところで少し触れたように、ペンネームや芸名として使われていることも多い。基本的にちょっと昔の武侠作家のように本名とは関係のない複姓をペンネームとする人が多いのだけれども、たまに本名と関係のある曹姓の人が夏侯姓の芸名を名乗ることもある。