エンタメ業界 アフター&withコロナの未来予想図#1 ~出版業界編~
こんにちは。IT×エンタメ企業で経営企画の仕事をしながら、マンガ原作者としても活動している鷹野浪流と言います。
4月から情報収集をしてアフター・withコロナの業界動向を考えてまして、その中で見えてきたことをシェアしていこうかと。
先に結論だけ書くと、
・出版社は雑誌からマンガ等のコンテンツプロデュースにリソースを集中せざるを得ないだろう
・マンガ雑誌に代わって新人発掘、育成、プロモートする方法が重要になってくる
という2点です。
既に進んでいたデジタルシフト
エンタメ業界全般でコロナによって何が起きたかをざっくり言ってしまうとデジタルシフトの急加速です。レンタル店ではなく配信で、ライブハウスではなくYoutubeで、そして本屋ではなく電子書籍で。こういった旧来から進んでいたデジタルシフトがStay Homeにより加速しました。
「だからコロナによって紙の本は死滅し、完全デジタルへ切り替わるのだ!」と言ってしまうのは早とちりかもしれません。
(hon.jpさんからお借りしました)
まず、そもそもマンガに関して言えば16⇒17で120%、17⇒18で115%、18⇒19で130%成長と、ここ数年非常に高い割合で電子の売上を伸ばしてきています。デジタルシフトは既に急加速していたと言えるんですよね。
この図をみていくと、出版市場規模としては右肩下がり(2019年は鬼滅大ヒットもあって微増)ですが、紙書籍+電子コミック+電子書籍の総数は少しずつ右肩上がりしています。一方、雑誌は電子を足しても右肩下がりですね。というより、紙の落ち込み分を電子雑誌で補填できていない。雑誌は電子でのマネタイズが難しいんですね。
開いてる書店は活況 既に書店減少は下げ止まり?
コロナに伴う休業でダメージを受けている書店ですが、そもそもここ20年書店は減り続けているんですね。最新のデータはありませんが、20年前から半減しているので、もう下げ止まっているのかも。
「エンタメ需要、学習参考書需要で本屋は人が増えている」「駅前書店はガラガラ」など色々な情報が散見されていますが、出版社から聞く話とも統合するに、「都心の駅前書店は厳しそうだが、全国的には現状維持」という読みを立てています。
もちろん、電子書店に関してはコロナでこれまでにない活況が続いているでしょう。まだ数字データが発表されていませんが、前年同月比150%~200%という高水準でユーザーを増やしている書店が多いのではと推測します。
まとめますと
・マンガなどIPコンテンツは既にデジタル対応を進めていて、紙の落ち込みを電子が補填できている
・雑誌は電子ビジネスが難しく苦戦している
・書店はそもそもずっと減少傾向にあり、エンタメ需要が増していることもあって、大ダメージは無さそう
・電子書店は大活況
この前提から、出版業界の未来予想図を立ててみます。
①出版社はマンガを中心としたコンテンツプロデュース会社へと強力にシフトしていき、メディア=雑誌としての役割はどんどん失われていく
少人数かつリモートで作ることができるマンガなどの出版コンテンツはデジタル化にも成功しており、今後も一定のスピードでデジタルの割合を増やしながら、紙も持ちこたえて成長していくと思います。
一方、雑誌は中々維持するのも難しい局面がやってくるのではないでしょうか。
(ガベージニュース様よりお借りしました)
雑誌は10年以上前から大幅な右肩下がりを続けているわけですが、落ち込みをデジタルでカバーできるマンガと異なり、雑誌は現状デジタルでは売上をカバーできそうにありません。
基本的に映像・音楽・出版問わずコンテンツビジネスがデジタル化される時は都度課金型⇒サブスクと移行します。映像・音楽は既にサブスクが主戦場に移ってますが、マンガ・書籍はサブスクを解禁せずに都度課金で踏みとどまってますね(ちなみにアダルトもFANZAの頑張りで都度課金を維持してますが、最近H-NEXTが強烈にサブスクへの移行を促してますね笑 この辺はまた追々)
雑誌に関しては既に月額読み放題が解禁されていて、多くの雑誌がAmazon Prime、dマガジン、楽天マガジンなどで読めますが、中々紙の売上をカバーする成長が見られません。
こうなってくると、出版社としてはデジタルシフトが可能な出版コンテンツにリソースを集中し、雑誌を縮小していくしかないでしょう。そもそもこの流れは今に始まったことじゃないとは思いますが、今後はよりはっきりと雑誌縮小の流れが具体化していくと思います。
②マンガ雑誌に代わる新たな新人発掘・育成・プロモート手段の確保が必要
①で「雑誌はきついけどマンガは大丈夫」と書きましたが、「マンガ雑誌」はキツイと読んでいます。では、マンガ雑誌が落ち込むと何が起きるのか。仮にジャンプが無くなっても、毎週という形ではなくなるかもしれませんがワンピースもチェンソーマンも読めますし、何ならハンターハンターが好きな人はほぼ単行本待ちですよね。でも、ジャンプが無いとタイムパラドクスゴーストライターやボーンコレクションが世に出ることはなかったかもしれない…または、少なくともジャンプに載っているよりは読者と出会いにくかったかもしれない。そう、マンガ雑誌の役割って新人発掘・育成・プロモートにあるんですね。
新人の作品を、既に人気のある有名な作品と抱き合わせで雑誌掲載することで、以下のような役割をマンガ雑誌は帯びていると考えています。
・新人の作品を多くの読者に見せる、プラットフォームとしての役割
・雑誌の売上を原資に、新人に原稿料を拠出するファイナンスの役割
・マンガ雑誌のブランドを冠することで『この漫画は面白い』と思わせるプロモーションの役割
逆に言うと、マンガ雑誌が無ければ新人は自分で生活の面倒を見て、自分で読者を確保し、自分で人気を獲得するしかなくなります。それができる人は現に今例えばTwitterマンガという形で実際に人気が出て、後から出版社で単行本化してますよね。
もちろんジャンプが無くなることはないでしょうし、何事も極論がいきなり訪れるとは思いません。が、今後こういった紙のマンガ雑誌が帯びていた役割が別の主体に転嫁されていく流れは間違いないでしょう。
具体的には以下のようなことが起きる・求められると思います。
・電子書籍サイトが出版社と組んでオリジナルレーベルを出し、原稿料を出すケースが増える
・出版社外の主体(Netflixや、サイバーエージェントなど)が原稿料を負担して作品を連載し、メディアミックスやマーチャン(グッズ化など)の権利をもらうケースが増加する
・出版社がジャンプ+、マンガワンなどの新作マンガ無料掲載アプリにより注力していく
・アルのようなマンガマーケティングサービスが重宝される
・原稿料を負担しなくてもいい兼業作家が重宝され、増える
・セルフプロデュースができ、自力でSNSなどで人気を獲得できる作家が求められる
以上です。
これまで出版社は漫画家に対し「あなたの生活の面倒もマンガ売るための努力も全部こっちでやりますから、安心して私たちに作品を預けてください。その分創作活動に集中してください」というオファーをしていたのが、これから漫画家は自分で生活の面倒をみて、自分で売っていくことが必要なケースが増えていくと共に、出版社もデジタル化の努力を続けていかないと作家を繋ぎ留められないでしょう、という話でした。
更に先の未来としてはマンガアプリの出版社を横断した統一化とマンガ読み放題の実現がもちろんあると思いますが、それはまだ10年は先じゃないかな…という予感です。
次はアニメ業界の未来予想図についてまとめようと思います。
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