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aniwatanabe
カサンドラが自らの力で幸せをつかむまで〜ASD夫との10950日③
『失礼な人』
「福岡の街とか店、よく知らないんだよね。案内してよ。」
待ち合わせ場所に現れた彼は、よれたポロシャツを着て、古いチノパンを履いていた。
身なりに無頓着な人なんだな、飾らない人なんだと「その時は※」思った。
大学の友達とよく訪れていた喫茶店に2人で入った。
彼は終始ハイテンションで、自身が大阪出身であること、今は出向で福岡に来ていること、T大とK大を受けたけれど受験の宿で食べたクラムチャウダーに当たってT大は落ちたことなどを、饒舌に語っていた。
聞けば、京都に入社式で知り合ったばかりの相思相愛の女の子がいるのだと言う。
その子はわがままで華やかで、私とは全くタイプが違うのだけど、そこが可愛いのだと言う。
じゃあこの時間は何と思いながら私は適当に受け答えをし、自慢話と他の女の子の話に飽きてきたころ、
「もしかして、話続かない?君は賢いと思ったけど、僕とは釣り合わないかな。」
もう限界と思い店を出ようとすると、一緒についてきて後ろに立っている。
「払ってくれるの。ラッキー!」
2回目はないだろう、と店を後にした。
※ASDの特徴として、度を超えた愛着とこだわりが挙げられている。この服はこの後、普段はもちろん、顔合わせ、実家訪問、結婚式当日と私が捨てるまで着続けるのである。