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【異説】すいかの名産地はどこか?

ねばねば健康野菜のオクラは、英語でもオクラ(okra)というそうです

オクラはアフリカ原産です

昔、アフリカから奴隷として連れてこられた人々が、オクラのタネを持ち込んで栽培し、今ではアメリカでも広く食べられるようになりました


スイカは???


すいかはスペイン人がアメリカに持ち込んだ説もありますが

オクラ同様、アフリカ原産なので、アフリカから来たものもあるでしょう

オクラ同様、プランテーションの片隅に植えて

農作業の合間に食べて水分補給してたのでしょう、たぶん

19世紀後半、奴隷解放後は、アフリカ系の人々の重要な換金作物にもなりました

そのことでヨーロッパ系の人々の反感を買い

「黒人とスイカのステレオタイプ」が生まれました


20世紀初め、「黒人とスイカのステレオタイプ」を題材にした歌がたくさん作られました

日本の「すいかの名産地」の原曲「Down where the watermelons grow」もその一つと思われます

1929年のミンストレル・ショー(黒人風刺ショー)で、「Down where the watermelons grow」が使われた音源が残っていてYouTubeで聴けます


さて、そんな歴史を踏まえると、すいかの名産地は結局どこなのでしょうか

すいかはアメリカのどこでたくさん栽培されていたのでしょうか

アメリカ合衆国の農業センサス(Census of Agriculture)によれば

1929年のすいか作付面積トップ5地域は…

1位 Atascosa(テキサス)10,186エーカー
2位 Brooks(ジョージア)7,286エーカー
3位 Colquitt(ジョージア)7,194エーカー
4位 Thomas(ジョージア)6,631エーカー
5位 Wilson(テキサス)5,151エーカー

1940-Ranking Agricultural Counties-VEGETABLES HARVESTED FOR SALE EXCLUDING IRISH AND SWEET POTATOES-1437-Table-45から抜粋・和訳

5位までは、テキサス州・ジョージア州に集中していて、上の5地域で1929年当時の全米すいか畑(290,879エーカー)の12%を占めています

が、10年たつと、

1939年のすいか作付面積トップ5地域は…

1位 Grady(オクラホマ)5,503エーカー
2位 Allendale(サウスカロライナ)4,739エーカー
3位 Dunklin(ミズーリ)4,083エーカー
4位 Atascosa(テキサス)4,052エーカー
5位 Imperial(カリフォルニア)3,943エーカー

同上

1929年から大きく入れ替わっていて、周辺地域への広がりが見て取れます

人の移動とともに、すいかも広がっていったと考えられます


Q. 結局すいかの名産地はアメリカのどこか?

A. もともとはアメリカ南部のテキサス州・ジョージア州辺りが中心だったようですが、その後、人の移動とともに、すいか生産地は周辺地域にも広がっていきました。極言すれば、すいか生産者がいるところが、すなわち、すいかの名産地なんじゃないでしょうか。


すいか売りの口上


たけや~さおだけ~♪の歌のように、すいか売りには口上があって、それには独特の節回しがあったそうです

その口上は、一説によれば…

“I got de watermelons and dey are de watermelons”; “Got ’em, got ’em, got’em nice; got ’em sweet; got ’em cheap.”

The Watermelon, Fabrikzeitung Nr. 369, June 2021

音源は残念ながら見つかりませんでした

ジャズの大御所ハービー・ハンコックさんが、1940年代のシカゴのすいか売りの口上からインスパイアされてつくった曲というのがあったので、ここからなんとなく想像できるかもしれません