観戦記者:八木⑮ #指す将順位戦6th A級2組 ずーさんvs面妖流さん戦観戦記
心の友と書いてみなさまはなんと読むでしょうか。
この二人の関係性はとても絶妙な位置にある。詳細を知りたい方は過去のずーとののののANNをご覧いただければと思う。面妖流さんも過去にゲスト出演していた。
本日は9月25日(土)21:00に行われた指す将順位戦A級2組の様子をお届けする。
将棋の話に集中しよう。この二人は上記番組の企画の中でフィッシャールールにて対局をしている。
この16:34あたりから対局の様子が中継されており、その結果はずーさんの悔しいものとなった。簡単書いておくと刀折れ矢尽き果て城は残るも戦意喪失という形である。ずーさんの四間飛車穴熊に対して面妖流さんの抑え込みが効いた形となった。
ここまでの記者の印象としては面妖流さんはバランスで全体を支えることにより、そのうすく力強くひろげられた膜に穴が開くと崩れるタイプであり、相手の敵陣が偏ることによりその膜はそこへ向けられる。一方のずーさんは、自身の堅陣を確保してのち思い切った大駒切りから相手へ迫る印象を受けている。また記者自身の経験としてはおぼろげながら面妖流さんには穴熊を組んではいけないし、ずーさんにはやすやすと穴熊を組ませてはいけない、ということである。これを実質矛盾という。(言わない)
対局者はこの観戦記にも登場しており、ここでは対局前の星取表を紹介すると、面妖流さんの2-5、ずーさんの3-4である。前期昇級組の二人は、なんと前期では対局がなく、本対局が指す将では初めてである。
ずーさんの先手、面妖流さんの後手で対局が始まる。相居飛車の戦いとなり、本局は角換わりに向かう。ずーさんの変化球と言っておきたいけれども、この前のフィッシャーの結果が何か影響があるのだろうか。記者は思いをはせた。こういうときにはずーさんは、なんとしてでも勝つという目標を掲げる。これを「なにか」というのだと記者は認識している。後手の面妖流さんはこういう時にも右四間を志向する。角換わりは彼の庭ともいえる。
先手はまずは動く。△4五歩などと抑えられる前に▲4六の銀を使っていきたい。後手ももちろん△4五歩として、▲3四歩△同銀として▲3七銀とする。
両者歩を持つ展開であるが、後手の陣形が面妖である。大きく「膜」を広げる準備なのだろうか。後手は自然に△6五歩として先手も自然に飛車先の歩を交換する▲2四歩。
控室では、角換わりは面妖流さんの手持ちのカードの一つなので、ずーさんはそれを超えるものを用意しているのではないか、など行く末を見守る。△同歩▲同飛車は流れ。そして△2三金がこれまた面妖である。
後手の陣形はいかにもスカスカであるように見えるけれども、△6一金がいつもの場所で面で将棋をするのが面妖流である(いまうまいこと言った!)▲飛車引きに△歩をがっちり打って先手の対応を眺める。先手は王様を安全な場所に逃がし後手はいつでも▲2二歩がありそうなので先に桂馬を前に繰り出していく。
先手としては飛車の小瓶の銀の頭にすぐさま歩を打てるため、△7三角→△3六歩が見えている。なので飛車の場所はあそこではなさそうだ。ちなみに▲7九玉の手の評判はあまりよろしくなかった。換えて▲3二歩とかは面白いかもしれない(某指摘)。
こういう対局であることから、控室はだいぶにぎわっていた。先手は上記の狙いをずらすため▲4八飛車として後手は少考の後に△7三角。それでもここを狙っていく。
先手は嫌がって▲3六歩と打つも、後手はここをこじあけに△3五歩。▲同歩△同銀▲3六歩に△4四銀。
飛車が動いたことに対応して銀の場所を移動することに成功した。先手としてはなかなか難しい。金を寄って▲6八金右とするも△2五歩がまたまた悩ましい手。
ここらへんで先手は時間がほとんどなくなってしまった。控室では▲2四歩が挙げられたが純粋に金を引かれ、△3二玉からあの歩をとりに行くのだということで意見が一致した。こういう時は王様を囲う、これがずーさんのルールである。▲8八玉。後手は2二の隙をなくすための△3二玉。そして次の先手の一手に記者は衝撃を感じた。
このとき、画面上では見えないはずの面妖流さんの歩的な(不敵な)笑みを感じた。これは、これはあかん、それは記者の直感であった。後手は△3四金。ここから先、先手は穴熊に組む。あと2手。あとプラスして2手がある。
△4二飛車。△4一飛車。ちなみに、控室でも穴熊の評判は良くなかった。控室では馬を作るために後手の角の頭を狙っていく方針であろうかなどコメントがでており、先手の手は▲7六歩に伸びる。
後手の方針が決まっている場合の1分間は本当に短い。取ってくれるならば▲7四角から▲8三角成まではいけるだろう。ただ、後手はそういうことわかっている。ホットケーキである。△2一飛車。秒読みになったずーさんに無理攻めをさせて受けきる展開にしたいというのは識者の評。重い攻めを受け止めるここともの友情。これは、いや、すまん。
あの飛車先をついていけば入玉が見えるだろう。これは焦る60分くらいあっても考えがまとまらない。先手は▲2八飛車。△2六歩には▲同飛車と取れる。後手は落ち着いて△7五歩。角を打っても今度はほっておける。
先手の気持ちになって何か手はないのか、控室は探し始める。まずは▲7四角。単純に△7二金とされ▲5二角成とするも△4三銀と引かれて退散するほかない。これはいけない。
さて先手の選んだ手は。▲1五歩。なるほどの手であるが。
△同歩▲1三歩△同香▲1二角の狙いじゃないか、ということであるけれども冷静に△2四飛車と浮かれるのではないかと控室では話されていた筋である。
追い詰められていたとはいえこれはひどそう。ただ先手は途中で手を変えた。△1三同香までは想定通りでそこで▲7四角である。ただ上述の通り△4三銀引きに▲7四角成として後手は△1六歩である。
1六歩→1七歩成が一番リスクが少ない手とはこれまた別の識者の評。先手は歩以外の駒をとれる見込みがないのが悩みであるところ。先手の飛車は再度▲4八へ。こうなると今度は△2六歩。結果的にはどうであれ、この手が局中で一番後手が緩んだ瞬間だったかもしれない。先手は意を決して▲4六歩に命運をかける。
攻めの先手、受けの後手の構図はこうして築かれた。後手は堂々と△2七歩成。これでよければ話が早い。▲4五歩△同銀に▲7三馬△同金を入れておいて▲4六銀とぶつける。
我々はもちろんこの後に起こる悲劇などわかる由などなかった。後手はこの局面で3分近く残しており、まだ考える余地があるというのは時間のコントロールがうまくいっているところか。△3八ととしてもちろん先手は進むのみである。▲4五銀。△同桂馬。
ここで、「あ、▲1二角が出現しているのではないか!」と気が付けたあなたは控室と同等である。ここで飛車を切ってしまい▲1二角で今度こそ両取りがかかる、飛車を浮いても▲3五桂馬などの継続手がある!ということである。我々は思考の濁流に1分以内で流されていく。
2枚飛車厳しそうですね。
記者はわが目を疑った。その時の記者は一時期よりはずーさんが持ち直していると思っているとそう信じて疑っていないからである。
さて運命の時は訪れ我々は濁流の終りにたどりつく。
この局面で金が取れないなんてそういう未来が待ち受けているなんて我々、いや、私は思わなかった。
金をとると、△4九飛車が詰めろ馬取りである。
先手は金をとれず、▲3五桂馬と最後の抵抗を見せる。ただ、まず△4九飛車と詰めろをかけ、▲7九歩の底歩に、冷静に桂馬を外す。△3五金。
これは▲同金とするよりないが、ここで後手の次の一手がらしい手である。10秒でわかれば面妖流である。
△2三銀。
以下、3四銀と粘りに行くも、△同銀右▲同歩△1二銀として、▲3三銀に△4三玉として先手の投了となった。
投了図以下、後手玉は詰まない。先手は堅陣ではあるけれども刀折れ矢尽き果て城は残るも戦意喪失という形である。投了もやむなしである。この負けは経験的にもとてもつらい。今振り返ってみても対局観戦後の余韻は残っている。
余談ではあるが、下記のリンクをご覧いただこう。
とりあえずこういうときもあるのが将棋である。(了)
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