映画レビュー:ヴァチカンのエクソシスト★★★★☆
・エンタメてんこ盛り
・実話がベース……だと……
・祈りはラテン語の方が強力
ごきげんいかがでしょうか、お嬢様修行中の私です。
今回は地元のシアターで映画「ヴァチカンのエクソシスト」を観ましたわ。
結論から申し上げますと、5点満点中、4点。
カトリック教会のローマ法皇に仕えた実在の主席祓魔師、ガブリエーレ・アモルト神父の著書『エクソシストは語る』を映画化したものです。
元祖エクソシストへのオマージュを取り入れた正統派ホラー映画と思いきや、ホラー・オカルト・ミステリー・歴史もの・バトル・バディものなどを満載した、エンタメ全振り作品でしたわ。
怖がりなくせにホラー好きな私、初見ではあまりの怖さにシートに縮こまって震えておりまして、「怖い」以外の感想が薄くなってしまいましたので、もう一回観に行きましたわ!(昼間に)
■あらすじ
カトリック教会の総本山、ヴァチカンのローマ法皇に仕える凄腕の祓魔師、アモルト神父。それゆえに信頼を寄せられ、また疎んじられてもいる彼は、スペインの廃修道院で少年に取り憑いた悪魔を祓うために法皇じきじきの命で派遣される。
案件の98%は精神疾患などであるとするアモルト神父であったが、そこで目にしたのはすさまじい邪悪と霊障の数々であった。地元の若い神父を引き連れ、祓魔に臨むアモルト神父。謎めいた強力な悪魔は狡猾にも彼らの罪の意識を利用して逆襲する。
──この修道院は、以前にも問題を起こしている──悪魔の力を少しでも弱めるため、わずかな手がかりを元に修道院の調査を開始したアモルト神父は、ヴァチカンの国章で封印された場所を発見する……
(※ここからはネタバレを含みます。ネタバレが嫌な方はブラウザバックなどでお戻りください。)
■良かった点
・色々なエンタメ要素てんこ盛り
ホラーをベースにして、オカルト、ミステリー、歴史もの、超常バトル、バディものの要素を詰めこんでそれぞれを破綻なく結びつけ、成立させているのが秀逸。特にバディものとしての側面がどんどん強くなっていき、祓うべき悪魔の残りが199体ということもあって、これは続編作る気満々なのでは?と思いました。
あまり詰めこみすぎるとバランスが損なわれ、何を見せたいのかわからない──ということにもなりかねませんけども、この映画は見ていてすっきり納得できますわ。
・若手神父の成長がうれしい
地元カスティーリャの若手聖職者、エスキベル・トマース神父。ごめんなさい、初見ではやられ役のモブだと思っておりました。悪魔に取り憑かれた少年に『司祭を呼んでこい』と言われて単身乗り込んでいった時は(ああ……これは惨殺死体になって発見されて絶望感をあおるパターン……)と思って目を覆っていたら、部屋に入った直後に『お前じゃない!!』と叩き出されたのを皮切りに、・最後の告解は8ヶ月前・悪魔の挑発にすぐ乗る・ラテン語が苦手・服で汚れを拭かれるなどといったヘタレムーブを連発。しかし自分の未熟さを恥じ、アモルト神父からもらったハンドブックで一生懸命勉強して、最終的にアモルト神父の救出に駆けつけるまでに成長しました。たったひとり、ラテン語の祈りで悪魔に立ち向かうシーンは思わず(がんばれ!トマース神父がんばれ!)と応援しましたわ!(≧▽≦)
・ラッセル・クロウのアモルト神父の魅力
横幅、厚み、顔面の迫力、どれをとっても頼もしいしかございませんわ。なんなら悪魔を物理的に地獄へ送り返しそう。なのにベスパみたいなスクーターで移動したり、懐から取り出した小瓶からウイスキーをラッパ飲みしたり、悪魔に『お前の悪夢は何だ?』と問われて『フランスのW杯優勝』と答えたり……とにかくお茶目。そうかと思えば枢機卿たちの圧迫面接みたいな公聴会で『文句があるなら私のボス(法皇)に言え!』と啖呵を切ったり、法皇とは主従の関係でありながら友情を育んでいたり、若手神父トマースを指南したりなどと、好きになる要素満載。私もすれ違ったときに『コッコー』と言われてみたいですわね〜(。♡‿♡。)
・謎解きミステリー
少年に取り憑いた悪魔の正体は何で、何が目的なのか。「この修道院は、以前にも問題を起こしている」とは。塗りつぶされた古い文書。ヴァチカンが封印して隠したものとは──。実に15世紀にまでさかのぼる、歴史の闇。
大好物ですわー!✧◝(⁰▿⁰)◜✧
まあ、(15世紀+スペイン+カトリック)✕隠蔽という方程式ならば、わかる人にはピンときますわね。それと、悪魔の正体=真名を突き止める過程も同時進行で行われるので二重にスリリング。分厚い金属の蓋で閉ざされた古井戸や修道院の地下に隠された地下墓地、拷問用の籠に入れられた謎のミイラ……恐ろしくも興味深いですわ!その末に悪魔の真名を見つけ出したときの興奮、その悪魔のビッグネームっぷりにまた興奮!
・戦死者数ゼロ
祓魔の過程で味方の死者が出ません!安心ですわー!(過去の回想では事故死、自殺シーンあり)(ミイラ/白骨死体あり)(ぶたさんと小鳥は犠牲になります)
・構成がスムーズ
私的に大事なところ。「何が理由で、どういう過程をたどったから、こういう結果になった」というところをしっかり描いてくれています。たとえば冒頭のぶたさんヘッドショット祓魔は「案件の98%は精神疾患か心理的な要因」ということにつながり、同時に枢機卿圧迫面接公聴会にもつながり、封印が破られた理由、工事関係者が引き上げてしまった理由、少年に取り憑いた理由、どれもスムーズに流れて行きます。いきなり脈絡もなく、というシーンがひとつだけありましたけど、でもまあ話の大筋には関係ないのでそこはどうでもいいですわ(・∀・)
■気になった点
・サリバン枢機卿の退場シーン
上記のどうでもいいところ。序盤の圧迫公聴会でアモルト神父を詰問していた年若い枢機卿が謎の退場の仕方をしました。すごく適当(笑)。
・スパイダーウォークがわざとらしい
元祖エクソシストへのオマージュが随所に見られる本作。スパイダーウォークもそのひとつなのですけども、いかにも(今からスパイダーウォークするよ!)みたいな予備動作をするので、ジャンプの予備動作に入ったフィギュアスケーターを見ているような気分になりますわね……
・アモルト神父の心の傷
作中で悪魔につけこまれる原因となったアモルト神父のトラウマ。救えたはずの人を救えなかったという自責の念なのですけれども、これはカトリック教会全体の腐敗と隠蔽体質が招いた面が大きく、その問題はその後どうなったんだいというもやもやが残る事件でした。物理的にこの神父には勝てそうもないので、わかりやすい弱点として設定したのでしょうか。
・あの件を悪魔のせいにしてしまっている
キリスト教史でも悪名高いスペインの「異端審問」。おそらく勘のいい方なら序盤の「スペイン カスティーリャ地方」という表示を見ただけでピンときたかもしれませんわね。この人間の欲と残虐性という業を、それこそ原罪レベルの業がもたらしたあのおぞましい史実を、「悪魔に取り憑かれた修道僧が、神の名のもとに行った大虐殺」という筋立てにしてしまっているのです。「原爆投下は悪魔に取り憑かれたアメリカ大統領のせい」と言っているようなもので、それまで怖くて縮こまっていた私もここでちょっと我に返り、(は?)(ちょっとお待ちなさい)とツッこんでしまいましたわ。まあ物語としてのインパクトはありますし、悪魔の強力さ・つけこまれた際の恐ろしさを表現する手段としては、ありと言えばありなのですけど……いわゆる禁じ手だと思いますわ。
■総評
ホラー映画にオカルト・バディもの・謎解きミステリー・歴史もの・超常バトルなどを全部乗せして、しかも味の調和がとれている逸品。ホラー全振りではないのでホラー作品としては物足りなく思う方もいらっしゃるかもしれませんけれども、少なくとも私はシートに縮こまるくらい怖かったです。特にバディものの側面が強く出ていたので、師匠と弟子・凸凹コンビなどのバディもの好きの人には刺さると思いますわ。師匠と弟子の祈りダブル詠唱は燃えますわよ!声出しの応援上映とかがございましたら、私もラテン語の祈りを覚えて参加したく存じます!
マイナス点は、異端審問の歴史をカトリック側に都合の良いように扱っていること。もっと業を……人間の業をのぞかせてくださいませ……
というわけで星よっつ!ですわ!
見どころはアモルト神父の絶対的頼もしさ!お茶目さ!トマース神父の成長ぶり!アモルト神父の告解を聴いて涙を流すシーンで(あっ……この方いい人ですわ……推せる)と思ってからトマース神父をがぜん応援したくなりました!もちろんホラー描写もばっちり!「自分を赦す」「悪魔の存在を否定するとき、悪魔は最も喜ぶ」など、現代にも通じるテーマを読み解くこともできます!
あと小ネタになりますが、ジョジョラ―ならば序盤でアモルト神父が『ベネ』『カピートォ』と言っているのを聞き取れるはずですわ!
『父と子と聖霊の御名において!神の御前に膝まづけ!!』
映画評価基準……
★★★★★:何度でも観たい
★★★★☆:ぜひ観たい
★★★☆☆:観ても損なし
★★☆☆☆:一度観ればいい
★☆☆☆☆:観なくてもいい
☆☆☆☆☆:お金を捨てたいなら
前回のレビュー
これまでのレビュー
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
それでは、ごきげんよう。