空の巣
果てしない空に
円盤みたいに浮かぶ巣があったなら
鳥たちは地上に降りずに休めるだろう
けど
水はないし
ミミズはいないし
木や大地にだって足をつけたいだろう
あなたたちの羽根を一本ずつ
私にくれませんか
そしたら
運びましょう
あなたたちに
そう
木の代わりに
私に止まってください
巣の中で
海を見下ろしながら
一緒に酒でも飲みますか
また
空を飛べるようになるまで
空を飛べるなんていいなと
人間は言うけど
空は渦巻く風のなかで
一瞬も気を抜けない
羽ばたくのをやめたら
落ちてしまうから
前を向いて飛び続ける
後ずさりできる人間はいいなぁ
うつむいて涙を流せる人間はいいなぁ
肩をたたきあえるから
飛んでる間は
ずっと一人で
羽がぶつからないよう
距離を保たなくちゃいけない
抱きしめたくてもできないんだ
星空を眺めながら頬を寄せ合える人間はいいなぁ
人間っていいなぁ
巣の上で鳥たちはそう言って
酔っ払って寝てしまった
羽って暖かいな
でも確かに
抱きしめるのには不向きだ
酔っ払って空を飛ぶ
ちどり羽で
風が顔にぶつかってくる
星が流れていく
羽ばたくのをやめてみようか
そう思った鳥が人間になったんだ
だから たまには 立ち止まってもいいさ
空の巣で鳥たちが眠る
その下で
人間たちはとぼとぼ暮らしてる
どっちつかずの私は
今日も
這いつくばって
ミミズを探し続ける
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