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直木賞の選評を読んで感じたこと【文藝春秋2024年9、10月特大号】

第171回直木賞の選評が公開されました。
「どんな経緯で決まったんだろうか?」と
楽しみにしていました。

受賞作の『ツミデミック』の
『ロマンス☆』という短編集が収録されています。
主人公が自分と近かったのもあり、
生々しいと思いながら読みました。 

選評を見て感じたことを書きます。


・『あいにくあんたのためじゃない』の評価

受賞作発表までに3作読み終わりました。
この時点で『あいにくあんたのためじゃない』が
受賞すると予想していました。

その理由は2つあります。
1つは今の時代を表現していること、
もう1つは、読者の共感を得られそうと
思ったからです。

実際蓋を開けてみたら、『ツミデミック』が受賞。
どちらも短編集で似ていると思っていましたが、
「こっちが受賞したか」と思ったくらいです。

各委員の選評を読んだら、
思いの外、手厳しい評価で驚きました。

「個性的」という評価が目立ちました。
中には「着地点が見えない。書きっぱなしはどうしたことか」と批判している委員もいました。

私自身は共感できたものの、
年齢性別など読者によっては
ついていけないだろうかと感じました。

・理解できる作品とできない作品

浅田次郎氏の選評が印象に残りました。

彼によると理解できる作品は
受賞作の『ツミデミック』と『われは熊楠』、
できない作品は、
『地雷グリコ』、『あいにくあんたのためじゃない』、
『令和元年の人生ゲーム』とのことです。

前者2作品を高く評価していました。

はっきり「理解できない」と主張する一方で
「自分自身が古臭いのか」とも言及します。

「理解できない」という一言で片付けず、
自分自身を振り返る姿勢に好感を持てました。

・感想

月並みの感想になりますが、
「プロの視点は違う」と感心しました。

私はこんな問いを投げかけながら読んでます。
「今(出版された時期)はどんな時代?」
「生きる知恵は?」と。

一方で審査をする選評委員では
話の展開、一人称か三人称なのか、
誰の視点で話が進んでいるのかなど、
私にはない視点で評価しています。
毎回「こんな視点はなかった」と勉強になります。

今回受賞した一穂ミチさんの作品の魅力は
登場人物の描写にあると
複数の選評委員が取り上げていました。

過去に2作読んだことがあります。
確かに登場人物を見て
「こんな人いそう」と思いました。

それが、あまりにも自然だったため、
指摘されるまで気づきませんでした。

本人のエッセイや三浦しをんさんとの対談も
収録されています。
興味深く読みました。

以上、ちえでした。
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