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ほんの、一言なんだと思う。

今朝、「モラルハラスメントで離婚」、という新聞記事を読んだ。
昨今、たくさんの「ハラスメント」がある。

私は昔、自分の上司がとても嫌いだった。高学歴で、頭の回転が早い人ではあったが、人の気持ちを無視し、人を議論の土俵に上げては、正論を滔々と語り、完膚なきまでに叩きのめす彼の正義に、心底うんざりしていた。

なんとなくググってみたら、「クラッシャー上司」「ロジカルハラスメント」という言葉が見つかった。
本人は、仕事ができて優秀なのだが、完璧な仕事を部下にも求めてしまう。正論で部下を裁いて傷つけてしまう。そういう上司、またはその態度を表現する言葉らしい。
なるほど、自分の上司のことを、これほど正確に表現している言葉はないな、と思った。
ググって出てくるくらいなので、そういう上司の下で仕事をして、悩んでいる人は多いのだろう。

人が嫌だと感じているのに、執拗に攻撃したり、なにかを強要し続けた時、「ハラスメント」と認定されるらしい。
例えば、職場で休憩中に、良かれと思って配られるお菓子。
ダイエットをしていたり、アレルギーがあったりして食べられない人もいる。単純に食べたくない人だっている。そういう人に、お菓子を食べることを強要することは、「お菓子ハラスメント」になる。
最近は、なんでも「ハラスメント」という言葉で表現されてしまうんだな。

同じことをされても、するりと上手く交わす人がいる一方で、そうじゃない不器用な人たちがいる。その人たちが、心に溜め込んでしまった嫌な感情を、相手に主張するために名前をつけると、「ハラスメント」という言葉になるのだろう。
実際、それで死に追い込まれた人がいるので、易々と、「それは、受け取り方の問題だ」と片付けられる問題ではない。

実際、私も、上司の正論攻撃に苦しんだ時、「もう、あの人は、変わらないよ」「もっと上手く立ち回ったら」と、まぁ、あたしは上手くやってますから、とヘラヘラしていた会社の人事担当者には、不信感しか持たなかった。
自分でなんとかするしかないと、こつこつと、メールやチャットのスクショを集め、資料を作成し、外部の機関へハラスメント相談として、持っていこうと考えたこともある。

そうなると、もう、正義と正義のぶつかり合いだ。
相手を攻撃する時、アドレナリンが出て興奮する。
相手を叩きのめす時、自分の正しさに酔いしれている。
「私は、こうしたのに、あなたはそういう態度だ」
「俺は、そんなつもりはなかったんだ。そういうお前が歪んでいるんだ」
家族や、職場、クラブ活動。大切な人たち、仲間と呼び合う者同士のはずなのに、つまらないことで、いがみ合うことになる。
これじゃ、誰一人取り残されない社会も、多様性のある社会も、いじめのない社会も、到底、実現不可能だ。世界平和など永遠に訪れない。アーメン。

たった一言、「ごめんね」「悪いことしたな」の言葉が欲しいだけなのに。
多分、ほんの、たった一言で変わることは、たくさんあるのだと思う。
自分の正義を主張する前に。

「思いやり」のある世界。
そういう世界に住みたいな、と思う。それには、自分が思いやりのある人になるしかない。自分の気持ちをしっかりと言葉にして伝えて、相手の気持ちや状況を考えられる人、相手を尊重できる人。今すぐになることは無理でも、努力することはできる。

その努力を続けていくことが、自分も周りもハッピーにする気がする。国際的な組織で働くことよりもずっと、平和への近道な気がする。
だから、来年は、いや、今から頑張ろうと思う。

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ルル秋桜
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