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バッド・トリップのかなたに 

『バッド・トリップのかなたに』 HIROTO 著

フジテレビが世間を騒がせている。薬物疑惑のある中居君への女子アナ献上の隠ぺい工作がバレた上に、致命的な密室会見が火に油を注いだ。その裏では、ラッパーのMU-TONがひっそりと覚醒剤使用の容疑で逮捕された。MU-TONのX(旧Twitter)の投稿は、逮捕直前には支離滅裂だった。

薬物は「幸せの前借り、リボ払い」であることは容易に想像がつく。それでも人はなぜ、薬物に魅せられるのか。『バッド・トリップのかなたに』には、まさにその答えがある。ここには、実際に薬物にハマってしまった人のリアルな体験が記されている。

この本が初版されたのは2005年。背景となるのはゼロ(00)年代だ。まだTwitterもTelegramも普及しておらず、盛り場の街角にはイラン人の売人が立っていた。目を合わせると「アルよ」と声をかけられ、それがドラッグを手に入れる方法だった。そんな一昔前のアンダーグラウンドな世界が垣間見える。

HIROTOの体験談は、「過酷な実体験」と「陽気なノリ」のコントラストが際立ち、背筋がぞわぞわするほど「ドラッグ怖い」と感じさせる内容だ。

過酷な体験

・HIROTOはLSDを勧められ、服用する。しかし、それを勧めてきた男は実はゲイで、はじめからHIROTOを狙っていた。HIROTOは錯乱したまま、同性と初めてのSEXをしてしまう。
・最初はLSDだったが、いつしか覚醒剤を使用するようになったHIROTO。やがて覚醒剤を強くやりすぎ、強迫観念に襲われた末、ビルから飛び降りてしまう。その結果、下半身不随となり、車椅子の生活に…。

まるで「中居くん(被害者ver.)」と「窪塚洋介(BAD END ver.)」の両方を体験したかのようなHIROTO。しかし彼は、最後にこう締めくくる。

「おぉ神よ、いつかいいコトあるさ!」

HIROTOが終始、陽気であることが、本気で怖い。これが意識の変容に飛び込める人なのか、と思わずにはいられない。

「薬物を使用し、警察にも捕まらず、暴走行為で死ななかった者の多くはどこへ行くのか?」
その答えは、病院である。

Don't do DRUGS!
by HIROTO


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